15、6の学生の夏休みといえば、そのたいていが前半は遊びまくって残った後半に溜めてた宿題やら課題やらを済ますのが一般的だ。そう、俺たちの夏休みもそんな感じ。前半、というよりはもうほとんどを遊ぶことに費やしたけど、毎年そんな感じだからもう慣れたと言えば慣れた。毎年同じ。つるむ友達も、街の人たちの顔ぶれも、みんな変わらない。
―――――そう思ってた・・・。
「ロクサス―――――ッ!!」
ベッドの横にある窓から身を乗り出すように下を見下ろすと、そこにいるのはいつもと変わらないみんなの顔。ハイネにピンツ、オレット―――――俺の友達。
「今行く!」
急いで支度を済ませて下へ降りると、真っ先に飛んでくるのはお調子者、ハイネのクレーム。
「おっそいぞ!!」
「ごめん、ぼーっとしてた。」
「ハァア!?」
ハイネはちょっと怒りっぽいけど、本当は心優しいいい奴だ。他の二人、ピンツとオレット―――――特にピンツはオカルトや噂が大好きっていうちょっと変わったところがあるけど、面白いし優しいし。オレットは普通の女の子。それが俺の友達。
「まあいい!みんな揃った事だし、取り敢えずシーソルトアイス買いに行くぞ!」
そんな俺たちの日常は、四人だけの秘密の場所に行ったり、アイスを食べたり、そんなごく普通の事だけど、その普通さが本当に楽しい。たまに、というよりはしょっちゅうだけど、サイファー一行と争いが絶えないのは勘弁してほしいんだけど。
アイスを買いに先頭を走ってたハイネの足が店先でいきなり止まった。どうやら先客がいたらしい。
「シーソルトアイス一本―――・・・。」
視線を向けると、肩より少し長めの金色の髪に、透き通るような青い目をした女の子がそこにいた。年は多分、そんなに俺たちと変わらない。少女は店のおばちゃんからアイスを受け取ると、視線に気づいたのかこちらを振り返り、にこっと笑って見せた。そうして去って行った少女の後にアイスを四本買う時、どうやら少女の事が気になっていたらしく、ハイネがおばちゃんに彼女の事について尋ねた。
「おばちゃん、さっきの子誰?」
「あれ?ハイネ気になってたの?」
「う・・・うるさいッ!」
ピンツが面白がってハイネをからかう。からかわれて頬が赤くなっているところから察するに、もしかしたらハイネはさっきの少女に惚れてしまったのかもしれない。
「・・・で、誰なの?」
「あぁ、クローネの事かい?つい最近この街にやってきた子だよ。アンタら今夏休みだから、知らないのも無理ないねぇ。」
「―――転校生かな?」
結局分かったのはそれだけで、その他の事は一切不明。おばちゃん曰くだけど、結構な頻度でアイスを買いに来るらしいから、店付近をうろちょろしてればまた会えるという。
「可愛い子だったね、ハイネ。」
「だぁ―――――ッ!!もううるさいッ!」
今度はオレットがからかった。言葉を聞いた途端にハイネは全速力で逃亡する。行き先は分かってる―――――俺たちがいつも立ち寄る秘密の場所―――――『いつもの場所』と呼ばれる、路地裏にある空き地だ。
「待ってよ、ハイネっ!」
つられて走り出す俺たちの背中をを、街のシンボルともいえる夕焼けが赤く染める。
残された夏休みはあと8日。
溜まった宿題にも、そろそろ手をつけなければならなくなってきたこの時期。
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