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第十二話 「邂逅」




 神羅を背負って立つソルジャークラス1stの昔話は、それこそ彼らも自分と同じ感情を持つ一人の人間なのだということを実感させた。中でも英雄の称号を手にするこの男の印象は、威厳ある近寄りがたい絶対的な存在といった堅いものであった為、その口から自分と親しい1stの慣れ親しんだ姿が語られることは、ザックスのこのセフィロスという男への印象を更に和らげるものとなった。
 それでも、いやだからこそか。自分たちに襲い掛かってきたモンスターの鼻先にかつての友の顔が付いているという事実は、かの男が自分たちとは敵対した側に付いてしまったことを嫌でも身に沁みさせた。何故アンジールは向こうに付いていってしまったのか。セフィロスの口から出た“ホランダー”という科学者のことも気になる。
 二人は引き続き伍番魔晄炉の捜査に当たった。





 施設を調べるうちに、何となくだがジェネシスとアンジールの繋がりが見えてきた。事は単なる幼馴染という関係から起こったものではなく、どうやらG系ソルジャーなるものが大きく関係しているようだった。

「『プロジェクト・G』によって生み出されたのがジェネシスだ。」

「プロジェクト・G―――――。」

プロジェクト・ジェネシス。そうセフィロスが呟く。聡明な男は散りばめられた研究資料や数々の断片的なレポート、そして自身の思い出を軸に事の概要を掴みつつあった。彼の口から紡がれる言葉には確証にも似た何かが含まれており、それは度重なる任務での経験しか軸がないザックスをも納得させるだけの論拠があるように聞こえた。
 しかし、ここで彼の口を止めたのは背後から聞こえた金属音、そして聞こえるはずのない人物の声であった。

「セ、セフィロス!?」

 振り返った先にいたのはラフな服装の上から汚れた白衣を羽織った少々肥満体系の男。無精髭をそのままに、清潔感からは程遠い外見のその男は、明らかに懐疑の目を持って目の前に佇む銀髪の巨躯を見詰めている。ザックスにとっては馴染み無い顔でも、もう一人―――英雄にとってはそうではないらしい。互いが互いを注視しながら歩み寄る中、セフィロスは威嚇にも似た態度で男を睨み付ける。
 そんな中だった。両者の距離が僅か3メートルと数える間もない程にまで縮まったとき、『それ』は弱者を守るように、或いはかつての友に立ちはだかるように舞い降りたのだった。
 今度はザックスでもその存在は認識できる。グリーフィングルームのモニターに映し出された姿と何一つ変わらない『赤』は、手にしていた愛刀の切っ先を英雄の喉元へ向けて容赦なく突き出した。

「―――ジェネシス・・。」

「ホランダーは渡さない。」

 その言葉を合図にホランダーが一目散に逃げだすのを視界の端で捉えると、セフィロスは後ろで光景に目を奪われていた新米1stに向かってその跡を追うように指示を出した。声にすかさず反応したザックスは階段付近でうろちょろしている科学者向かって自慢の足を走らせる。あっさり追わせたところを見ると、どうやらジェネシスはザックスよりも自分の方を余程優先したいらしい。あっという間に二人きりになった空間の中、先に口火を切ったのはセフィロスの方だった。

「―――クロウがいなくて良かったのか、それとも悪かったのか。」

「俺たちにとってはこの方が好都合だった。だからコイツに足止めしてもらったのさ。」

「―――そのとーり。」

「――――――!?」

 ジェネシスの声に呼応する形で聞きなれない声が空間にこだました。瞬間、背後に魔法陣が現れ、その中から何かがずるりと抜け出る。現れたのは見知った友を黒く染めたような容貌の少年。真紅の眼と喉元から聞こえる笑い声からは常識を酷く逸脱した印象を与える。

「初めまして、セフィロス。噂通り完璧超人!って感じだねぇ、いずれアンタとも戦ってみたいなぁ〜!」

効果音を付けるならウキウキとかワクワクとかそんな感じか。まるでおやつを目の前に頬を上気させる子どものような仕草は、先程までいた通称仔犬と似たような幼さを感じさせる。が、ジェネシスは先程この少年にクロウの足止めを頼んだと言っていた。何をしたかは知らないが、1stの中では最も好戦的なクロウがこんな得体の知れない敵を前にしておとなしくしているとは思えない。付け加え、直接対戦した経験は少ないにしろ、クロウが1stの一人として数えられる理由はセフィロス自身分かっているつもりだ。傷一つ見当たらず、しかも飄々とした態度から推察するに、この少年の実力はかの子どもソルジャーを余裕で下すレベルなのだということが窺い知れよう。

「お前は大人しく見ていろ。セフィロスとは俺がやる。」

「何だよ、出番なしかよ。なら何で呼んだんだよ、折角いいところだったのにさぁ〜?」

ぶつぶつ不平を垂れ
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