男の手を取り飛空艇に乗り込んだものの、乗員たった2人にこの船はいささか大きすぎる気がする。ハンドルを握り船を操縦する親友の姿を傍目に、英雄はふとそんなことを考えた。別段VIP待遇の空の旅に出るわけでもないのだ。ましてや発進は神羅所有の飛行場だというのだから、人目につくわけにはいかない筈なのに、何を思ってか友が誇る科学技師は小さな小型艇ではなく最新の大型艇を貸し与えてくれた。
「良し。船も軌道に乗ったし、自動操縦にも切り替えたからこれで俺ものんびり出来る!」
そう言って自身の元へと駆けてきたのはこの船旅へと招待した張本人―――――ロゼ。彼は至って平静な様子で船室前方180度に大きく設けられた窓から一望できる景色を見渡した。
船が離陸してからおよそ半時間。この大きな白い巨体はミッドガルから北西の方向へと進んでいた。もうすぐ行けばボーンビレッジの上空に差し掛かるだろう。自動操縦へと切り替えたと言うことは、これから向かうのはそれよりも先ということになるが―――。アイシクルロッジをも越えてしまうと大陸にはもはや大空洞以外目ぼしい場所はなかったように思われる。クロウの居場所に心当たりがあると言っていたが、一体どこに向かっているというのか。
「ロゼ、これから向かう先は一体―――・・・。」
「ん?あぁ、そう言えば行き先まだ伝えてなかったね。『ユニゾンレイヴ』だよ。」
「“神の都市”か―――!」
「そう。結構かかるから、寝るなり何なりしてくれて良いよ。北の大陸を越えて更に先にある都市だからね。」
ユニゾンレイヴ―――通称『神の都市』と呼ばれているその場所は、およそ位置的に固まっている大陸からかなり北西へとかけ離れた場所に、孤立したかのように存在する一つの大陸に存在するとされる伝説の都市だった。伝説やら神やらと神聖めいた呼び名が付けられているのは、大陸自体が未開の土地として有名であるからだ。神羅やウータイといった大組織が過去に侵入を試みたことはあったが、大陸へ入った人間が帰ってきたという情報は一切なかったらしい。それでも明らかに人工的な都市のいくつかが上空からの撮影により確認され、建造物などの異様な白さから見出される畏怖にも似た神々しさは、その存在を『愚かな人間の侵入を断罪する神々の住まう都市』として有名にさせた。ユニゾンレイヴという名もどこに起源を発しているかは定かではないが、神々の住まう都市に相応しい神秘さを踏まえ『ユニゾン(調和)』、人間の侵入を断じて許さない様より『レイヴ(荒れ狂う)』といった言葉を当てはめたものだというのが今や通説となっている。
「―――そんな場所に何故クロウが?」
「言わなかったっけ、里帰りだって。」
「お前たちはあの大陸から来たというのか―――!?」
「エイリアンが来たみたいな言い方するなよぉ。君たち他大陸の人間が故郷のことを一線引いた存在みたいに扱ってるのは知ってるけどさ。住んでたのは神でも何でもない、ちょっと特殊なだけの、同じ人間さ。」
思いのほか英雄の反応が大きかったの対し、ロゼは困ったように眉を寄せていわゆるジト目で彼の方に視線を送る。
「―――特殊な一族だけが住んでる大陸だったんだ。今はもう無人だけどね。その昔に神羅兵やウータイ兵が乗り込んできたときは、俺の父さんやその先代が侵入を阻止してたんだよ。」
今来られたらひとたまりもないけどね。ロゼはそう言って苦笑した。
「それでも迎撃用のシステムはまだ作動してるし、昔のこともあってか組織は乗り込んでくることがなくてね。里帰りした時に依然と状態が変わらないのを確認してたから、何かから隠れたり一人になりたい時にはここしかないと思ったわけ。」
「それで今回・・・。」
「そう。行くのに結構かかる場所だから、一週間クラスで姿が見えないとなれば多分そうだろうって。仮にも1stなわけだし、どこか違う場所へ行くにしろ何かしらの目撃情報が入るでしょ。それもないんじゃね。」
「なるほど。珍しく動揺もしていなかったから何かあるとは思っていたが―――そこは流石兄と言うべきか。それで?何故そんな辺境地に?」
質問にロゼは口を噤んだ。セフィロスの言う通り、クロウの失踪を知っても自分が動揺せずにいられたのはすぐさま故郷の存在が浮かんだからだ。それというのも、ここ最近のうちに自分たちのルーツを見直さなければならない必要性を感じ、頭の中にその存在が浮き沈みしていたせいだ。
あの日―――――神羅襲撃の前、ミッドガルに攻めてきたジェネシスコピーの討伐に駆り出された時、偶然街で会ったシスネとザックスから、クロウが何者かを追跡してこの先の廃品集積所の方へと向かったのを聞いた。その後小一時間もしないうちにクロウ本人から電話がかかってきたので、無事を
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME