飛空艇が大陸に降り立ったのはそこから間もなくの事だった。
成程『神の都市』と呼ばれ人類未踏の地という印象は尤も。先刻船内でロゼが発した発言の中に「迎撃システム」といったワードがあったように思うが、体感してみると確かにあれを無傷で潜り抜けるのは至難の業だと言えよう。あまりにも多種多様な魔法陣があれよあれよと瞬く間に展開していっては、信じられない破壊力をもって容赦なく飛空艇に襲い掛かって来るのだ。ヘリや小型機でさえ危ないというのに、大型の飛空艇などどうぞ攻撃してくださいと言わんばかりの大きさがある。最早格好の的であろう。
自分たちが上陸するのにもかなりの数の攻撃が飛んできたが、船を一旦オートに切り替えた後、すぐさまにロゼが何かしらの魔法を発動させ迎撃システムを停止させた。曰く『アルカナ』と呼ばれるその魔法はロゼ達大陸に住む特定の人種しか使えない固有のものらしく、彼らの同伴なしでの上陸はまず不可能だという。ロゼが魔法を使う場面は戦地に出向けばよく目にする光景だったが、得意のブリザガ以外の魔法を使うのはかなり珍しい。
「―――さて、到着しましたよ。お客さん。」
話ではユニゾンレイヴは大陸全土に散らばる都市の中でも最大級のもので、都市起点部には大きな目立つ城が聳え立っているとの事だった。上空から見渡せたそれは巨大な扇状に広がった都市で、これも成程、神羅本社に負けず劣らずの荘厳な城が都市を監視でもするかのように聳え立っていた。そんな巨大な城の城門跡地の手前にグレーの中型飛空艇が一機停泊している。おそらくはクロウ自身が乗ってきたものであろう。
「俺はこれから城へ行くけど、君はどうする?すごく食い付いてたし、観光してても構わないけど。何もないけど、遺跡探索だと思えばそれなりに面白いかもしれないしね。」
飛空艇を中型機のすぐ横に泊め、先に地に足を踏み入れたセフィロスをその眼に捉えながらも別段急ぐ気配も見せず悠長に階段を下りながら、ロゼはそう言葉を発した。頭上から降ってきたその声にセフィロスは少々黙り込むが、暫く考え込んだ後、未だ階段中腹で城の前方に広がる街を澄んだブルーで見詰めている白銀の美青年を振り返ると、首を横に振りながら、
「―――いや、観光が目的じゃないからな。」
と一言言ってのけた。言葉に青年は少し驚いたような表情を見せた後、緩やかに微笑む。真夜中発の旅路だったからか、未だ天に煌々と存在を主張し続けている大きな光は、眼前に佇む白銀を遙かな高みから輝くように照らしていた。後光、とでもいうのか。彼の色素の薄い長髪や肌は後方からの光による逆光で更に薄く、消え入るような儚さを―――――そして同時に、そんな中であるからこそ一際深みを見せたコバルトブルーは自身を飲み込む光でさえも飲み干してしまいそうな力強さを携えている。不思議な光景だ。この大陸の人間だと聞かされたときは少なからず驚いたものだったが、今のこの光景を見ると違和感は払拭され、この男が間違いなくこの都市の住人なのだという確信にも似た思いが湧いてくるのだ。
「―――本当に女顔だな、お前は。その笑い方、直した方が良いんじゃないのか?」
「・・・君は俺に喧嘩を吹っかけてきているのかな?切り刻むよ?」
―――親しい間柄でよくやったおふざけも交えつつ。使っている様は一度も見たことがないが常に腰に下げている剣に手をかけて、その後呆れたように溜息一つ吐きながら大きく肩をすぼめたロゼは、さっさと階段から降りてくると右方で仁王立ちする巨大な“白”に視線を向けた。
「・・・まあ良いさ。物怖じしない勇敢な英雄様にはこれから頑張ってもらうとしよう。」
見る者を恍惚とさせる先程までの微笑はどこへやら。急に神妙な面持ちでそう呟いたロゼの言葉は、前方から突如吹き荒れた風の音によりかき消されてしまう。隣に並び立つこの男が何をもってそのような表情をするのか―――――今のセフィロスには知る由もなかった。
風は城の中から吹き込めているようだった。神聖な景観に似つかわしくない、荒々しく吹き荒れる暴風にも似たそれは微かな魔力を帯びている。かろうじて目視できる紫色を纏ったそれは、かつて対戦したことのある見知った相手のそれと同質のもので、しかしそれでいて以前の相手からは感じ取れなかった憎悪に満ち溢れていた。
誰も住んでいないという城内は外観の城とは正反対の暗い雰囲気に包まれ、更に異質な魔力のこもった風が行く手を阻むように吹き荒れ、向かってくるのであるから、事は探し人を連れ戻すという単純なものだけでは済みそうにない事が容易に想像出来る。
悠長に城の中を見物、というわけにもいかない雰囲気の中歩を進める二人の長身の男はどちらが先立って歩くでもなく、ただ風の吹き荒れる中心を目指してひたす
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