天才と気違いは紙一重と言うように、平和と抗争も紙一重の関係にあるように思う。ウータイとの戦争終結後の平穏、それを崩した1st脱走事件。解決したわけではないが、この大きな事件の後にも幾ばくかの平穏無事な日常があった。それを壊したのは―――――・・・。
・・・―――――そう、クロウ・ボルフィード。
「どういうことか説明してくださいッ!!本人にインタビューを!!」
「会見は開かれないのか?!情報機関は何をやっている!!」
「それよりも神羅だ!!本人を出せ!!」
「ファンクラブの方には?何か説明はないのか?」
「わぁああああああああああ!!クロウ様ぁあッ!!」
―――――今、ミッドガルは荒れに荒れていた。それもこれも、今までそれと信じていた子どもの姿が実は嘘で、本当は15歳の少女だというのだから・・・。
事が明るみになったのはクロウ失踪から約十日あまりが経過した時分だった。騒ぎはまず神羅本社で起こった。
「誰?あの子、すっげぇ美人・・・。」
「セフィロスさんとロゼさんが一緒ってことは新しいソルジャー?」
「え、女ソルジャー?」
「クロウの件も片付いてないのに新人導入するってことは、駄目な可能性が高いんじゃねーの?」
「ああ、成程。いくらトップ2がいるからって、脱走した1stの戦力相当高いもんな。」
「にしてもどっから補充したんだ?あんな子、神羅兵にいたっけ?」
英雄と女王に連れられる形で廊下を歩く凛とした姿はこのむさ苦しい組織の中でも一際目立っていた。少女は長い金色の髪を後ろで一つに束ね、その身には黒い革のノースリーブ型のハイネックを着用し、上下ともほぼ黒一色。先導する二人の1stと同様にスタイリッシュ且つ厳格な印象が見る者を彷彿とさせた。
兵士たちの視線は少女に釘付けになった。無論その卓越した容貌のせいもあるが、一番の理由はソルジャー補充で招集された人間である可能性があったからだ。先程どの兵士かが声を潜めて呟いていたが、1stクラスに補充をかけるということは現状在籍している戦力が脱走した戦力と均衡もしくはそれに劣っていることを暗に示している。ジェネシス、アンジールだけならその他四名の1stの総戦力の方が勝っていたが、この状況を見る限りそこにかの子どもソルジャーが加わった可能性が浮上してきたのだ。故にこの女戦士の加入は神羅に希望をもたらすと同時に拭いきれない不安をももたらしていることになる。
「ま、こうなるとは思っていたけどねぇ。」
横目を配らせながら口々に持ち上がる兵士たちの憶測を耳に入れ、ロゼは後ろを歩く少女を見遣った。その視線は何を言われようともまるで意に介していないようにただ真っ直ぐ前だけを見詰めていた為、振り返った際にその双眸と自分の目が合ってしまった時には寧ろ此方が驚かされた。
「―――どうせ知れる事だ。」
「そうだね。でもまさかこんな憶測が生まれようとは。ちゃんと社長や皆に謝罪するんだよ、クロウ?」
「・・・・・・・・・・・・。」
引き締まっていた表情、社内に漂っていた不安の色が―――――・・・
・・・――――― 一変した。
それからというもの、兎角騒ぎを押さえるのに大変だったことは言うまでもない。元よりいわくつきの存在であったが為に引き起こす騒動の規模もある意味英雄クラスである。性別の件や年齢の件、最年少記録の件等、様々な用件での疑惑浮上に付け加え、帰還前の脱走に関する問題もまだ回答を得てはいない。帰還後直ぐにプレジデント神羅の元へと直行した彼女に、これらの言及が投げかけられたのは容易に想像出来る事である。社長室での彼女の返答がどういったものであったか、それは世間の知り得ないところであるが、この変貌は隠そうとして隠しきれるものでもない。以上の判断から、神羅はその翌日に事を露見、そうして現状に至るわけである。
偽証への謝罪、真相の告発。彼女に求められる世間からの要求は妥当なものであり、ここ最近に起こした不謹慎な行動のせいでその評価はダダ下がりの傾向にある。無論、これも至極妥当な反応であろう。しかし募る不信感に何を思ったのか、神羅側からは渦中の人物を表に出す動きが皆目見えず、遂には本社のエントランス直前まで市民が押し寄せる事態にまで発展した。
事に焦燥感を募らせるのは何も一般市民だけではない。日に日に数を増す群衆のせいで市街地へ出ることすら一つの任務であるかのようにハードルが上がる。市民とすれ違う度に胸倉を掴まれ事情の説明だの何だのを要求される。神羅兵やその他ソルジャーも騒動にはほとほと困り果てていた。
そんな日常が日々経過していく。各々が胸中に何かを抱く中、待望の日は訪れた。
社内の一室。記者達の出入りを一切禁じた一
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