幾分かマシになったとは言え、世間からの信頼が完全回復したわけではない。殊クロウに至っては謝罪の文言がなかっただけに、未だ厳しい評価を下す人間もそれなりの数を占めていた。無論、神羅側も事態は把握している為にそれ相応の対処で彼女の処遇を決めるとのことではあったが、(結論から言えば力を抑える方向の)ドーピングを施していたにも関わらず、彼女が過去に挙げた実績は歴代の1stの活躍と比較しても光るものがある。上役による処分への審議は二週間にも及び、尚且つ下された内容はとても“処分”と表するには至らないものであった。
「むしろ感謝して欲しいものだね。君の実力、実績を大きく推し出した結果なのだから。」
ラザードはそう言って椅子の背もたれに大きく背中を預けた。ジェネシスの件以降、度々起こる騒動は決まって彼の管轄内の出来事である。加えて今回はプレジデントやルーファウス含めた上役を交えての会議が長く続いた。疲れが溜まっているのも仕方のないことではある。が、その様子を目の前にしている当の本人は至極不服そうな表情で光景を見下ろしていた。
「出来ると思うのか。」
「出来る出来ないの話ではないんだよ。それが会議で下された決断なのだから君はそれを全うしなければならない。信頼回復はまず身内からということだ。」
「―――で、当分の任務俺とペアってわけ?」
「喋りかけるな駄犬。足引っ張れば殺す。」
ヘリへの道中、不満の意たっぷりの顔つきでビル内を早足で進むクロウに対し、駄犬と罵られた少年―――――ザックスは、それでもしたり顔のままその横を歩いていた。
そう、クロウに下された処分とは、新人1stの実践教育。そして訓練兵の実技指導といった簡素なものであった。ちなみにどちらも無期限である。
本来このような教育はそれ専門の兵士が監督役として就くわけであるが、アンジールのように性格や実力共に適任と判断された1stが買って出る場合もある。とは言いつつも、1stクラスが指導にあたることなど滅多になく、例え希望があったとしても、1st昇格後の実績が認められなければ指導には入ることが認められない。そういった面を思えば、今回の処遇は寧ろ彼女の功績を重視した大抜擢と言っても過言ではないのであろうが、ツォンから聞いた1stのメンバーの評判や、神羅襲撃時等、実際に自分が目の当たりにしたクロウの性格を考えれば、教育係なんてものは彼女が最も苦手とする分野であろうことは容易に想像出来た。
「無期限なんだろ?その態度何とかしてくんなきゃ永遠にペアで行動させられるかもだぞ?」
「・・・・・・・・・。」
反応がないのでちらと横目を流して隣の少女を見遣る。眉間にこれでもかという程皺を寄せ、薄く開いた唇から確認出来る犬歯のせいでその様はまさに悪鬼羅刹だ。
「おー、こわッ!」
「・・・・・・・・・。」
先程から何を呟いてもスルー状態が続くので、ザックスは逆に開き直りを見せた。外見が変わっただけで中身はあの生意気な子どもと同じなのだ。勿論、幾分か成長した外見は、似ても似つかないと思っていたロゼのそれを思わせるように、良い方向に変わっている。幾分か、というよりも随分女らしくなったことは認める。そんな考えが頭の中をよぎった瞬間、ザックスの興味がそちらへと転換された。
「―――なぁ、それで何歳なわけ?あの子どもの姿って、何年分くらい若返ってんの?7〜8歳くらい?」
16歳で180p近くあるザックスからしてみれば、隣を歩くクロウはだいぶ小さく見えた。頭一つ分とはいかないまでも、15pは差があるように感じる。この間スラムの教会で出会った少女―――――エアリスと似たような身長だ。しかし、長く1stにいる為付いた貫禄か、雰囲気は彼女のそれとはとても似つかない。以前にも感じたが、外見と中身の年齢が一致していないように感じるのである。
「見た感じ・・・、18〜9歳ってところかn―――――」
「15だ。」
反射的に返したのであろうか。どうせ返事はないだろうと一人言葉を並べていたザックスが言い終えるか終えないかのところでクロウが口を開いた。15だ。確かに彼女はそう言った。
「え、うっそ!!俺の方が年上!?」
廊下を抜けて、飛行場への扉を開けるなり差し込む眩しい夕日。視界いっぱいに広がる明るさを前に瞼を閉じるどころか逆に大きくその目を見開いて。ザックスはここ最近で一番驚いたと付け加えた。本当にそうなのだろう、離陸準備を行っているヘリを中心に巻き起こる強風を全身に受けながらも、そんなことは意識の外だと言わんばかりに猛烈にクロウに詰め寄っては興味津々な様子でその風貌を凝視している。
「なんだぁ!態度がでっかいからてっきり年上だと思ってたけど!じゃあ人生経験は俺の方が先輩だな!!」
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