「戦うってどういうことだよ!?」
「言葉の通りだ。」
突如として告げられた宣戦布告―――――もとい死刑宣告。いや、実際のところ、ザックスはクロウが戦っている様を見たことはない為、その実力を正直測りかねている状態ではあった。しかしそれでも尚彼の根底にあるこの何とも言えない敗北感は、以前市街へ繰り出した時に垣間見た彼女の身体能力の高さに原因がある。あれから自身も鍛錬を積んではいるが、ストイックと噂されるクロウのことだ、簡単にはその差を埋めさせてはくれないだろう。
「・・・で、何でセフィロスにロゼ?」
「効率を考えた結果だ。トップ2なら色々と足りないものを教えてくれるだろう。」
「・・・じゃあ何で科学部門?」
「この体になってからの身体データの計測を頼まれている。ついでにお前の分のデータも取ると言っていた。」
いつもより饒舌である。凡その見当はつくが、それでもここ最近ああもスルーし続けた相手によくもまあここまで態度を一変させることが出来るもんだ、とザックスは内心感心した。ちなみに彼は気付いていないであろうが、無論良い意味ではない。アドバイスがどうのと言ってはいたが、おそらく自分の為の訓練でもあろう。強くなることに一途なのは周囲の反応を思えば納得出来ることではあったが、こうも純粋になるものか。そういったところは矢張りソルジャー。根本は同じなのだと思わせられる。いつも眉間に深く刻まれている皺が今日に限ってないことも、以上の印象を与えるのに大きな役割を果たしていた。
対して、どちらかと言えば本日はこちらの方が機嫌が悪い。普段から表情にあまり変化は見られないのだが、何故か今日の彼の眉間にはクロウのそれが転居を決め込んだかのように深い深い皺が刻まれている。ロゼはそんなセフィロスを横目で見て顔を引き攣らせているし、三人が三人とも異様だった。
そんな異様さを前にたじろぐザックスを置いて、クロウはさっさと科学部門の部屋へと入っていく。靡く彼女の長い金髪―――――そこから意識がその後ろ姿へと移りふと気付いたが、驚くほど軽装である。普通2nd以下のクラスは自分と似たような感じで背に剣を背負っており、1stはそんな型に嵌まらないとはいえ、誰しもが自身の得物を所持している筈なのだが。初対面の時やこれまでの任務の時は自分が動くばかりで気付かなかったが、クロウに至っては武器の一つも所持していないではないか。これで戦えるというのか。
無言のままにその後に続き、科学部門管轄の演習場へと場所を移す。宝条を含む数人の研究員と銀髪の英傑二人は特殊ガラスで仕切られた演習場の外へ。残る二人はそれらに囲まれる形で演習場内にて向かい合う。
「・・・セフィロス機嫌悪すぎ。後輩の頼みなんだし、私情は後回しにしてあげたら?」
中で向き合う双方の姿を見詰めながらそう口を開いたロゼの言葉を頭の片隅に残し、セフィロスもその注意を後輩連中へと向ける。どうにも無表情を貼り付かせている痩躯の男が気になるが、奴が何もしてこない以上、こちらも気を張るだけ疲れる。研究データなどここにいる誰もが取られている。付け加え今この場には最高戦力が四人も揃っているのだ、無理矢理な実験はよもや行われまい。奴も必要以上の接触は避けてくるだろう。
「お、始まるかな。」
そんな言葉が意識を眼前へと引き戻す。ちょうどクロウが掌に白い大刀を出現させた瞬間だった。しかし、その直後ザックスが何やら困惑顔でクロウ相手に話しかけている。防弾ガラスの強度を凌ぐ特殊な防壁により室内の音声は完全シャットダウンだ。何の話をしているのか、その行動が何故起こるのか。口の動きに細心の注意を払う他、これらの脈絡をすくう術は無い。少年の言葉をクロウは無言のままに聞いている様子だったが、すぐさま大刀を短剣へと換装させると、ロゼ同様に一つに束ねていたそれを微塵の迷いもなく切ってしまった。彼女の左手に握られた金の川は、同時に発現した炎の中へと消え行ってしまう。光景にザックスは余計に慌てふためくが、クロウは言外に彼の言葉を遮ると先程の大刀を握り締め、構えた。
「これで文句あるまい。お前が戦いやすいように髪を前みたいにしてやったんだ、不甲斐無い結果は認めない。」
そこからは呆気ない展開だった。どちらもそれなりの大剣の使い手だというのにも関わらず、斬撃速度に異様なまでの差が認められ、結果ザックスは防戦に回る他なく。クロウの一方的な展開になってしまった。いや、対峙した本人や実力ある英傑共にはスピード以外の決定的な敗因も理解出来たであろう。未だザックスの手に残る痺れのあと。あの華奢な体のどこにそんな力があるのかと疑ってしまう。自身のそれよりも一回りも二回りも大きい剣―――――大きさだけならアンジールのバスターソードに匹
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