“ロゼ、お前は俺に似ているな―――――”
その言葉には続きがあった
だけど、今となってはその後に父が何と言っていたのか、思い出せない
「クロウ・ボルフィード。期待の新人だ。ロゼ、君の“兄弟”なんだそうだね。」
愕然としたのは記憶にまだ新しい。実質的にはもうかなり前の話だけど。
その日、ソルジャーを育てる指導教官がそう言って連れて来たのは、タークスの養成施設に預けていた筈の妹だった。力を望む幼い彼女を普通の家庭で育てることは難しい。何よりもその意志を汲んでやりたいという気持ちがあった。だがソルジャーは他の兵士に比べて圧倒的に前線に立つ確率が高い。活躍出来れば名声、実力双方が手に入ることは間違いなかったが、その分高い死亡率が付き纏う。だからタークスの施設へと彼女を入れた―――――筈だったのに。
眼前の妹は以前同様、あどけなさの残る幼体のままではあったが、その身を包んでいる衣服がソルジャーのクラス3rdのそれだった。
「ほう、ロゼの“兄弟”か。」
「髪色が違うから、パッと見似てないな。」
同じ1st同士で固まっていた為、ジェネシスやアンジールの注意も自然とそこへ向かう。セフィロスに関してはちらとその姿を確認しただけで、さほど興味はなさそうな様子だった。
「―――――で、何でクロウがソルジャーなんです?この子は別施設に入れていた筈ですが・・・。」
「異動希望が出てな。仕方ないから、ソルジャー登用時の能力測定で基準値を満たしていたら希望を通してやると指示が出たんだ。驚いたよ、そこいらにいる訓練兵なんて目じゃない数値だ。これなら即ソルジャーで通用すると、いきなり3rdスタートになったんだよ。まあ、君の“兄弟”なら頷ける結果だがね。」
「ほう、凄いじゃないか。流石はお前の“兄弟”だな、ロゼ。」
教官は至極嬉しそうにそう語った。今この場にいる1stは誰しもが皆驚く速さで昇進を遂げているが、クロウの年齢でソルジャーに登用された人間は過去に例を見ないという。このまま順調に鍛えていけば、1st昇格の史上最年少記録も夢ではないと。アンジールは教官の言葉に素直に感嘆していたが、嬉しい筈の報告はどこか遠い話のようで、自分だけが違う場所にいるような錯覚に見舞われた。
「ヴェルドを出せ!!話が違う!!」
タークスの方へとかけてみても主任であるヴェルドとは一向に話が出来ず。代わりにとツォンが事細かに事情を説明したが、それでも到底納得行く筈がなかった。起こってしまったことは今更どうにも出来ないが、事前に報告もなしでいきなり転属を認めるなどおかしすぎる。ヴェルドが電話に出ないことを考えると、ハイデッカーが動いているのは明らかだった。上層部が実験紛いにクロウの兵器としての性能を試している。そう思うだけで腸が煮えくり返る思いだった。
そしてそのストレスは派遣先の戦場にて爆発し、新しい力となって発現する。
「―――――すっげえ。・・・何あれ、・・・・・・氷、山・・・?」
光景に同行していた兵士の殆どが固まってしまった。パラゴラという武装集団が数十名、神羅兵向かって突撃してきていた筈だった。しかし瞬きほどの時間、ほんの一瞬で、その姿は突如として目の前に現れた氷山の如き氷塊の中に消える。双眼鏡で確認すると、氷の中に人の形を幾つも視認することが出来る。彼らの表情は今にも襲い掛かってきそうな形相で、地を駆けていた時の様子と寸分も違わない。おそらく何が起こったのかさえ分からずにああなってしまったのだろう。
「うひゃー、やっぱ1stにもなるとすげーな・・・。」
「にしてもあんな威力のブリザガ見たことねぇよ。シヴァ並だぜ、ありゃ・・・。」
意識的にしたことではなかった・・・
普段はレイブレードを使って戦っていたし、今回もその大刀を発現させようとした
だけど出てきたのは剣ではなく巨大な氷塊だった
それも、平地を一瞬にして雪景色へと変えてしまうような、そんな馬鹿げたレベルの
でも不思議と驚きはしなかった
それは以前、こうなることを父から聞かされていたから・・・
“いつになるか分からないが、レイブレード以外の力が発現するようになる”
“『属性付与』って言ってな、召喚獣クラスの魔法が使えるようになるんだ”
“―――とは言っても、一人に一属性。何に秀でるかは発現するまで分からない”
おそらくこれのことだろう・・・
自分は『氷』魔法に特化した力が使える、ということだ
威力重視で、本当は『火』か『雷』の能力が望ましかったが、これはこれで、良い
「・・・―――――ごめんね。でも、一瞬だっただろう?痛みがないのがせめてもの救いだと思ってよ・・・。」
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