「言っとくが手当は自分でしろよ。そこまでの面倒は見んからな。」
クロウとの対人訓練を始めて早3日。今日も今日とて見るも無残に敗北したザックスは、立腹してトレーニングルームを出ていった少女の後ろ姿を無言で見送る。前回ロゼに言われた通り、初日の訓練以降、クロウは律義にも兄の言いつけを守り二刀で相手をしてくれている―――――が、大刀一本の時ですら攻撃を受け止めるので精一杯だったのに、それが更に加速するとなれば当然防ぎきれない攻撃が増していく。ここ数日で何となくクロウの戦闘スタイルは掴めてきたが、まだ自分の体が思うようには動かない為、彼女に一撃入れるなんて話は当分先のことになりそうだった。
「1stは伊達じゃない、か・・・。」
「―――――どーした?悩める子犬ちゃんよッ!!」
トレーニングルームを出てすぐの所にある休憩スペースでもの思いに耽っていたら、どこからともなく聞き慣れた声が飛んできた。ここ最近は色々な騒動のせいで会っていなかった所為か、耳に馴染んだこの男の声ですら随分懐かしく感じる。
「・・・カンセル!」
「よっ!ザックス!」
あれから話し出すと止まらなくなり、休憩を兼ねて二人で久し振りに社外へ昼食を取りに行った。男二人でランチなんて色気も何もないが、1st連中の所為で嫌というほど実感させられる実力面での置いてけぼり感を払拭するには良い機会だ。かの少女の暴言によるストレスも、この陽気な男の雰囲気に当てられてどこかへ飛んでいくだろう。
そのまま何とはなしにイタリアンを食べようということになり、カンセルに案内されるまま店内へと入った。真面目に何で相手がこの男なのだろうと疑問に思えてくるような内装の、所謂お洒落な雰囲気の店内は、どちらかと言えば男女仲良好なカップルで訪れる方が合っている。
「―――でも実際羨ましいよ、お前が。アンジールさんだけじゃなくて色んな1stに面倒見て貰えてさ。社内じゃ結構色々言われてるぜ?“美人とペアとか羨ましい”とか・・・。」
「まー、恵まれてるっちゃ恵まれてるけど・・・。でも訓練はきっついんだぞ?今日なんて二十二か所も傷負っちまって・・・。」
「実力に差があるのは仕方ねーよ。会見の後色んな実績見直したらしいけど、史上最年少で1stになったって記録は本物だったんだもんな。五年もあのクラスにいりゃあな、見てきた世界も違う筈だぜ。」
そう言ってカンセルは自身の注文したパスタを完食した。口に付いたパスタソースを紙で丁寧に拭いながら、視線は所々にあるザックスの傷へと向ける。
「・・・焦らなくて良いんじゃねぇの、お前は。実践行きたいのは分かるけどさ、1st相手に毎日訓練するのって、多分そんじょそこらのミッションよりすげぇことだと思うぜ?」
「そうかもな。でもさ、目の前の相手が俺じゃ役不足だって顔してるとさ、何かもどかしいんだよなぁ。今だって多分セフィロスと訓練してるんだろーし。」
「へー。あ、そうか。昨日からロゼさん任務行ってるもんな。相手は英雄しかいない、と・・・。厳しいねぇ!」
そう。カンセルの言う通り、ロゼは昨日から任務に就いていて、今クロウが鬱憤を晴らす相手は実力的にセフィロスしかいない。何でもロゼが向かった先はこれまた大きな戦場で、彼の投入により戦況が大きくこちらに傾くと予想されている重要なものだと聞いた。ジェネシスの件で寝込んでいた人間と同一人物とは思えない活躍ぶりである。そんな重要な任務なら英雄と称されるセフィロスに声がかかってもおかしくはない筈であるが、曰くロゼが出向けば戦場は一瞬にして終戦を迎えるらしい。カンセルは一度ロゼと同行して戦地へと赴いた経験がある為に、この手の話をするとそれはまあ事細かに説明してくれたものだ。
『―――――はえー話、こういった事態には“女王”の方が優秀なのさ。神羅としても、1stなんてどデカい勢力に長い間留守にされても困るしな。出向けば一瞬にして勝利を手にして帰ってくるって点では、ロゼさんも間違いなく“英雄”と称されていい人だよ。二番手なんて言われちゃいるが、二人の戦った記録なんてもう何年も前のモンだろ?今じゃどうなのか分かんねーぞ、ホント。』
別れ際にカンセルはそう言っていた。確かに、仲が良い印象は強いが、魔晄炉でセフィロスから聞いた思い出話の中でも、ロゼはセフィロスとは戦っていなかった。友達のことで寝込むような性格だから、争いごとは避けているのか。兎にも角にも、上二人よりも先ずはその妹を見返さなければならない。今の自分からすれば、その存在は遙か遠い話だ―――――・・・。
「―――――日に日にセンスが光ってくるな、お前は。だが、まだまだだ。」
任務に行っていないのを良いことに、ここ数日、昼過ぎにな
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