その後ロゼはものの数分のうちにプレートの上へと続く道のりに発ってしまった。クロウもエアリスに何か用があったのだろうが、彼女も何かを察したのか二人を一瞥すると不満そうな表情のまま兄の後ろ姿を追って行ってしまう。そんな兄妹の背中を見送った後、ザックスとエアリスは何とはなしにスラムの街へと歩を進めるのだった。
兄妹に会ったからか、エアリスからは色々な思い出話が飛び出した。以前に話していた知り合いのソルジャーというのがクロウのことを言っていたのだということも収穫の一つだ。とは言っても、この緑眼の語る金髪少女の幼少期は今の本人像と比べるととてもじゃないが想像出来ない程穏やかなものであった為、どうにもイメージが湧かず話に現実味を感じることは出来なかったが。
神羅に戻りエントランスを抜けると、すぐ傍の訓練場で兵士の技術指導にあたるクロウの姿を確認する。アンジールの場合、後輩指導にあたる時は厳しい面持ちを貼り付かせていたが、クロウはまるで興味ないといった風に無表情この上ない顔だった。普段の様子を思えば激怒していてもおかしくはなさそうであるが、他人事だと割り切っているのか兎角関心がなさそうだ。そのくせ指導は厳しいのだろう、兵士の何人もが床に突っ伏したり壁にもたれかかったりしている。成程呆れを通り越しての無表情なのである。しかし、そんな中に頼りなくはあるが立ち上がろうという姿勢を見せ付ける兵士もいた。その瞬間だ。クロウの目に僅かながら光が差したように見えたのは。
「―――――君が任務行かないからまた俺が駆り出される羽目になるんだよ、分かってる?」
「ウータイの件でチャラだろう。」
「ザックスに押し付けたんだよ、君じゃない。」
資料室の扉を開けて入ってきたのは久方振りに見るもう一人の英傑。ここ最近籠りっきりだった所為か帰還したという情報すら耳にしていなかった為、多少なりの驚きはあったが、変わらない姿を確認するとそれも一瞬のうちに消え去ってしまう。
再びファイルに記載されているデータへと視線を落としてしまったセフィロスのことなど気にも留めず、ロゼはまた別の資料棚の方へと足を運ぶ。セフィロスが躍起になって調べている『プロジェクト・G』や『G系ソルジャー』、昔の『科学部門』に関する資料とは全く別の棚へ。数ある資料の中彼が手に取った一冊の本には、“ナノ”と題打たれていた。
暫くしてザックスに再び指令が下された。内容は、魔晄炉周辺及びジェネシスの動向の調査というもの。モンスター討伐に比べ重要度が格段と増すその任務に、今回はペアであるクロウ、ではなくその兄―――――ロゼと向かえというものだった。共に任務にあたるのは今回が初である為に、ほんの少しの緊張を伴って現場へと向かったザックスだが、下向先のあまりの簡素さに唖然とする。
「なんっもない!」
ジェネシス絡みということで、敵のアジトやら何やらと想像していた為に、魔晄炉以外特別大きな施設が見当たらない質素極まりない村々の様子を見ては、イメージとのギャップに苛まれている。そんな子犬の様子を見てツォンは頭を抱えたが、その後に続いてヘリを降りたロゼは矢張りいつものように笑っていた。
「魔晄炉があるとこは大抵田舎なんだよ。それ以外は基本何もない。隠れるには最適だろうね。」
ツォンから双眼鏡を受け取り山村の様子を見詰めながらロゼは言った。ここから直線距離にして凡そ五キロ先にある村は至って普通の様子だ。モンスターやコピーに襲われているような形跡もなさそうだが、ツォン達は何を警戒してか村を囲む山々の一角にヘリを着陸させ、そこから下山し目的地へ向かうという方法を選択した。仮にここにジェネシスらがいた場合、確実に確保出来るよう慎重に行動するつもりのようだ。
そうして今回の作戦に同行したメンバーで、魔晄炉の調査を行う者とジェネシスに関しての調査を行う者の二手に分かれることとなり、魔晄炉の方へはクラス1stの二人が、ジェネシスの方へはタークスと残る神羅兵が向かうことになった。ロゼとザックスは作戦の打ち合わせを一通り済ませると、一足先に村の魔晄炉へと足を運んだ。
道中はコピーに遭遇することはなかったが、山陰に潜んでいたであろうモンスターには嫌という程出くわした。ザックスがロングソードを構えようと柄に手を掛けた瞬間、モンスターが氷漬けになる。ほんの瞬き程の一瞬で敵が全滅する様を見せ付けられた折には、カンセルの言葉が待ってましたと言わんばかりに脳内再生された。一瞬とはあながち嘘でもないらしい。敵の規模によって氷の威力の調節が可能だと本人は語っていたが、道中何度も何度も一瞬で凍らされる敵の姿を見てしまうと、次第に相手に対して同情の意が湧いてくる。何であれ一瞬なのだ。果たして彼らは負けた
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