魔晄炉へ向かったザックスがツォン達に合流を果たして程なくした頃。村人や資料館を当たってもそれらしき情報が一切手に入らず、一向に進展が望めない状況の中、ツォンがザックスに対し閉口していた口を開いた。明らかにジェネシスとの関係性が認められないこの山村に長居する理由はほぼ無くなったというのに、ロゼがいつまで経っても戻ってこない。
「―――――陣を敷くには時間が掛かり過ぎている。ザックス、悪いがもう一度魔晄炉へ向かってくれ。」
「分かった!」
言葉に頷いた後、ザックスは持ち前の足の速さであっという間に一行の視界から見えなくなった。残りの兵士を引き続き聞き込み調査に当たらせながら、ツォンの頭にはここ最近拭えないでいたある疑惑が浮上していた。
前の任務でも似たようなことが起こった。ロゼを軸に編成された小隊の帰還が遅れた案件だ。セフィロスではなくロゼを送ったのは彼の能力を買ってのことだと言うのに、思いの外戦場を治めるのに手こずっていた、と同伴していたタークスは言っていた。ホランダーの研究の成果が日に日に出てきているのはコピーのレベルを見る限り一目瞭然ではある。が、それを計算に入れたとしても尚圧倒出来るだけの実力を持つあの男がいながら、任務は困難を極めた。帰還後提出されたレポートの一端を見たが、彼が得意の魔法を使わずに戦っていたことも引っ掛かる。おまけに任務中そのロゼと連絡が付かなくなった時間が存在するというのも怪しむべき点である。
「何かあると踏んだ方が良さそうだな。」
怪しくなる風向き。広大な青を覆う巨大な灰色は、彼の不安の色を映し出すかのように大きく広がっていった。
ザックスが魔晄炉へと戻った時には空には一面の雨雲が掛かっていた。今にも振り出しそうな様子になど気付かないように、彼はその足を魔晄炉入口の階段へとかけた。
閑散とする施設内にこだまする足音。初めて来た時と同様に自身の足音以外は機器の作動音以外聞こえない。どうにも静かな空間を、あの研究室へと向かうべくがむしゃらに進んでいく。そうして辿り着いたその場所は、数多くのレポートが散りばめられていた。
「ロゼ!!」
異様な光景に探し人の名前を叫んでみる。床に散乱したレポート以外、研究室に変化はない。しかし、そこにいる筈の人物の姿もまた、見当たらなかった。
「ロゼ!!ロゼっ!?」
徐々に不安が蝕んでいき、居ても立っても居られなくなったザックスは声を張り上げる。と、突如聞こえた金属音。その男は、研究室へと続く階段の中腹で、きょとんとした様子で自分の名を必死で叫ぶ少年の姿を見詰めていた。
「・・・何叫んでんの?」
「ああっ、ロゼっ!!」
片手には一枚のレポート。こことは違うどこかで作業をしていたのか、ロゼはザックスの様子とはかけ離れいたく平然とした様子で研究室へと戻ってきた。ザックスは、ツォン達と共に調べた結果ジェネシスとの関連は見当たらなかったこと、なかなか戻ってこないので様子を見に来たことなど、事の経緯を説明した。
「成程ね。やっぱり無関係、か。」
「ぽいな!で、ロゼは何してたんだ?」
「直接的な関連はなかったんだけどもね。どうも面白そうな研究をしてた場所みたいだから、それについて調べ物をね。」
「面白そうな研究?」
反芻したザックスにロゼは手に持っていたレポートを見せた。そこにはモンスターの細胞に関する研究、と題打たれている。
「モンスターの細胞移植の結果だと思ってね。そうでもしなきゃ人に翼は生えないから。」
レポートを見るロゼの目は今までに見たどの表情よりも冷めていた。いや、微かな怒気を含むそれはまるで睨み付けているかのようにも取れる。自分が最近までよく目にしていたかの女ソルジャーのそれと同質のものだ。おそらくアンジールのことを指しているのだろうその言葉は暗にホランダーに対する揶揄を潜ませていた。
「本当に・・・、どんどんとんでもない方向へと話が進んでいくね・・・。」
うんざりするほどに―――――とロゼは後から続けたが、あまりの小さい呟きにその声がザックスに聞こえることはなかった。
ほどなくしてザックスがロゼを連れて戻ってきた。二人の様子は以前と変わりなく至って平静なものだった為、ツォンは敢えてロゼに対し何も聞かなかった。
帰還する道中ザックスが話してくれた施設内でのロゼの行動に不可解な点はなかった上、細胞移植の研究に彼が注目する理由にも納得がいく。温厚な性格故に思うところもあるのだろう。そう言い聞かせることは出来る。が、ここ最近の彼の様子が普段のそれとは違い異質さを帯びているのもまた事実。
ツォンはその帰路の中、ロゼと言葉を交わすことはなかった。
帰還後、ザックスは上への報告書をまとめ、すぐ自室へと戻
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