「―――――もう10年になるのか。彼らがここに来てから・・・。」
自身の机の上にばら撒かれた社員登録用紙に視線を向けながら、眼鏡と独特のスーツが印象的な男―――――ここ神羅の戦闘部隊、ソルジャーの統括であるラザードはふと無意識に言葉を漏らす。
資料に写っているのは金色の髪と白銀の髪のまだあどけなさの残る子供達。
「彼らがここへの入社を申し込んで来た時には驚いたなあ。上の子はともかく下の子供なんてまだ5歳だって言うんだから・・・。」
そう言ってくすくすと彼は笑うとその2枚の資料を手に取り、グラフと詳細情報の横に添付された当時の写真に視線を移す。そうして改めてその写真を見詰めて思うことは、あどけなさの奥にはっきりと見付けることの出来る彼らの憎悪、そして決意の固さを象徴するかのような暗く光の射していない瞳。こんな目をした子供など、今の世界のどこを探したって恐らくは見つからない。これは年端も行かない子供たちのする目ではない、という事。
資料横に積み上げてある様々な本やファイルの上に置かれたコーヒーからはまだ湯気が立ち込めており、この乾いた重い空気に差し出がましくもよき香りを付け足してくれる。しかしラザードは腰かけていた椅子から立ち上がると、その匂いを消してしまうように部屋の窓を全開にした。取りつけてある淡いグリーンのカーテンが吹き抜ける風に靡き、部屋内に充満していた重苦しい空気を外の青空のもとへと運び出してくれる。そうして外を見詰めていたラザードはふとコーヒーの存在に気が付くと、再び笑ってティーカップに手をかけた。
「―――――クロウ、黙祷は終わったかい?」
言葉に少年は閉じていた瞼をゆっくりと開くと、合わせていた手を彼の横に突き刺していた白い大剣に掛け、立ち上がる。
「―――――兄さんは・・・短い・・。」
クロウと呼ばれた金色の髪の少年はその大剣を掌から消失させると横で困ったように笑う自身の兄―――――白銀の髪の青年、ロゼに対して淡々とした態度で言葉を返した。
「俺はイマイチみんなに報告する事とかないからね。」
「―――――ここ、来るの5年ぶりなのにか?」
「ハハ・・・厳しいなぁ。」
手を頭の後ろにして本当に困ったようにしてみせるロゼを通り過ぎ、クロウは少し先の丘へと足を運ぶと、そこから見渡せる古代都市―――――ユニゾンレイヴの白く、まだ美しい城とその城下町を見渡した。白い大理石で造られた城下町の建造物や石壁にはところどころに血痕が見られる。それが象徴しているものはここで過去にあった一族の大虐殺事件。
「・・・フン。世間からは『神の都市』やら何やら言われているが、真実を知れば驚愕ものだな。」
そう言って少年が振り返った先にあるもの―――――彼が先程まで黙祷と合掌を捧げていたもの―――――彼ら兄弟が神羅からわざわざここへ来た理由。
「―――――父さん、母さん・・・。」
城の方から吹き抜ける風が少年の髪を、そして周辺の木々や彼らの手によって添えられた花を撫でていく。
少年の見つめる先に広がる、500を超える墓石。惨殺された一族の墓の中央にある、他より立派に建てられた2つの墓は、そびえたつ城の先代城主であり、兄弟の実の父母のものである。
そう、彼らこそがこの古代都市に住まっていた一族のただ2人の生き残り。廃れてしまった城の王子達―――――復讐から力を得ることを望んだ幼き子供達―――――誰よりも早くに絶望と不幸を背負ってしまった、哀れな存在。
彼らはボルフィード兄弟―――――。
わが社神羅の、有望なソルジャークラス1st。
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