その後、ツヴァイたちが食事を確りといただいた後に菜月は神月に頼んで一人で黄泉の家に向かっていった。
黄泉は神無の幼馴染である月華の娘。神月たちも馴染みがあり、特に菜月は彼氏でもあった。
「すまねえな、呼び込んで」
菜月は直接、彼女の家から近場の公園で待ち合わせた。
駆けつけてきた少女――黄泉は小さく微笑みを浮かべて首を振った。
「いいの。母さんからいろいろ聞いたし……菜月、大丈夫?」
心配そうな表情を見せる彼女に、笑顔を浮かべて不安さを隠す。
「ああ、この通り!
―――といっても、すぐに此処から出ないといけないけどな」
「また…戦いに行くの?」
「俺みたいな奴をこれ以上作らせないためにも、それに……アイツには借りが在る。大きな、借りが」
黄泉は表情を落としかけたが、すぐに微笑みのまま彼に向けた。
自分が止めることは許されない。だから、
「ぜったいに……戻ってきてね」
「任せろ! 約束として、コイツを渡しておくぜ」
菜月がいつも首に巻いている青色のマフラーをはずし、黄泉の首に優しく巻いた。
「ちゃんときれいにしているからそんなに匂わないはずだけど……いやか?」
「ううん。――嬉しい」
「そ、そうか……戦いが終わったら戻るから待っていてくれ」
そういって彼は黄泉に赤らめた笑顔を見せ、彼女を家の玄関前まで同行して別れた。
無轟宅へと戻る道中、毘羯羅につけられていたことに驚く。
彼女いわく。
「勝手に家を出たので、ついていっただけさ。話は聞いていないから安心しろ」
「……」
菜月は若干、項垂れた気分で無轟宅に毘羯羅と共に帰還。
何人かは出立の深夜まで仮眠を取っているものがいたので、菜月も同じく横になった。
深夜。
手紙の通りなら、もうすぐである。
「―――よし」
一人、空き部屋でツヴァイは私服から勝負服に着替えを終えて、鞘に収まった細剣を手に取る。
久しく戦いに加わってはいないが、足手まといにはなりたくない。
自分だけ待つという精神は持たない気がする。
「私の我侭、ね」
ツヴァイは自嘲気味に笑みを浮かべ、部屋を出る。
すでに殆どが家の外で待っている、自分はおそらく最後のほうであろう。
家を出て、周囲を見渡した。全員、此処にいる。確認を終え、ツヴァイは鍵を掛けて、手紙の内容どおり、待つことにした。
すると、彼らの前に大きく空間がゆがんだ。
『!!』
眼前に歪みに近い神月、クェーサー、オルガが静かに構えを作る。
空間の歪みはやがて人が通り抜けるくらいに大きくなると、拡大をとめる。その歪みの中から一人の男性が姿を現した。
此処にいる誰もが顔を知っている黒髪の男性――神無であった。
「待たせたな!」
深夜にも関わらず元気に笑顔を浮かべるその姿に、皆を押しのけてツヴァイが前に来た。
突然、目の前に迫ってきた妻に驚く神無。無言で彼の目の前で立ち止まる。
「ど、どうした? その格好……」
怪訝にたずねると、視線を彼に向ける。
自分と違い、老いの色が薄い彼女の戦装束を見て驚いていた。
「私…」
「親父、此処にいる全員がビフロンスへ向かう」
「はぁ!?」
「……駄目?」
神無は返す言葉を考えるように「うー」と呻いていたが、すぐに凛然とした顔色になった。
「解った! とっとと行くぞ」
「きゃっ」
そう言って彼は、ビフロンスへと通じているであろう歪みの中へツヴァイの手をとって、駆け出していった。
二人の姿がゆがみの中へと消え、神月らも続いて入っていった。最後の一人である菜月が中へと入ると、歪みは消えていった。
チェルたち、皐月たちがタルタロスから出て数日。
町の復興作業が各所で執り行われる中、フェイトは一人、タルタロスにそびえるニュクスの塔の屋上、月で日光浴の様に、彼は仰向けになっていた。
すると、彼の下に蝙蝠にも似た翼を羽ばたかせて舞い降りた軍服の男性―――アガレスが不思議そうに彼のほうへ歩み寄った。
「―――何かな」
「ああ、起きていたのか」
口火を切ってフェイトがやってきたアガレスに尋ねる。
アガレスは特に驚かずに幼児を伝えた。
「先ほど知らせが来た。アダムからだ」
彼が懐から取り出したのは黒い羽。その羽の形状は覚えていた。
フェイトは体を起き上がらせてその羽を受け取る。すると、羽から力が解除されるのを感じると、自分の脳裏に響くような声が聞こえてきた。
(―――今日の深夜より、ニュクスの塔の入り口前広場へそちらへと赴き……―――)
残りメンバーをビフロンスへと連れて、神の聖域『レプセキア』への奪還戦の協議・実行へ移る。
「……いよいよって所かな」
「ああ。そちら
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