三剣の切っ先が業へと揃う
カミの聖域レプセキアの第一島、神殿にある部屋にて仮面の女カルマが夜空の風景を部屋の窓から眺める。そうして一人、口火を切った。
「そう、どうやら役者は揃ったのね……此処も用済みね」
そう呟いて、仮面をはずした。白と黒の髪に青の瞳をした彼女は思考を巡らせるように表情を曇らせる。
既に彼女の目的の一つ三剣の顕現と命令の下に作らせていた贋物キーブレードと鎧の騎士の軍団『KR』は揃え、もう、此処での必要な下準備は完了した。
レプキアを葬るのは最後の最後だ。もし、彼らが此処で全滅すればよし、最後まで自分の下まで足掻いて来るなら叩き潰してやるだけだった。
「――アバタール」
カルマは仮面をつけて、彼の名を呼ぶ。彼女の傍にある机の上には勾玉が置かれており、それが明滅と共に反応する。
同時に部屋の扉からノックの音がなる。
「どうぞ」
「失礼する」
彼女の許可の声で扉を開けた少年アバタール。少年の風体をしているが、漂わせる雰囲気は異質さを際立たせる。
そんな彼の冷たい双眸が仮面の女をなまじ険しく、何処か悔いる声で尋ねた。
「…いよいよか」
「ええ。此処に貴方の兄弟と私を追ってきた者たちがやって来るわ。……必要なKRは「例の場所」にほとんど置いてあるし、余分にあまったKRを使ってもいいわ。後は、此処にいる操っている彼らと『これ』で応戦して。別に殲滅してもいい」
彼女がアバタールに渡したのは黒い小さな玉だった。受け取った彼はその小さな玉に「蠢動する何か」を感じ取り、忌々しく握り締めた。
だが、返す言葉は従順だった。
「――解った。此処も決戦場になるわけだな」
「ええ。かりそめの決戦場よ。真の決戦場にはふさわしくないわ…」
顔を上げて、どこかを見据えるカルマに、彼は小さく鼻で笑う。
「ふん……そうか。なら、もう行くがいい。此処は、朕の力で何とかするとしよう」
アバタールは戻る事は出来なかった。
カルマを恐れ、成すがままに従順し、兄弟とも言える半神たちに、何より母であるレプキアに背いた自分が許される事は―――無い。
もはや後戻りする場所は無く、自分の死地は此処だけだった。それがせめてもの、カルマの情けかとアバタールは内心、苦笑をこぼす。
「…それじゃあね、アバタール。貴方のおかげで此処まで成ったの同然」
彼女がそういいながら、アバタールの眼前まで歩み寄った。流石の彼も、動揺を隠し切れずにいる。
一歩下がり、自ずと何をされるかわからないからか、蛇ににらまれた蛙のごとく、
すぐ身動きをとれずに彼女の顔を見つめながら引きつった頬を吊り上げながら言い返した。
「今更、礼の言葉か? ……どうした、珍しいな」
「ふふふ」
カルマは笑みと共に、仮面を取り外した。彼はカルマの素顔を見せる事はまるで無かったため、驚きの表情を露呈した。
しかも、すかさず至近に顔を近づけて、微笑にも嘲笑にも似た笑みを浮かべた。
「―――ッ」
笑みを向けられたその瞬間、何かされるのではないか、底なしの恐怖心から身を竦んだアバタールにカルマは笑みを閉ざして仮面を付けた。
そうして、彼を通り過ぎると、
「じゃあ精々頑張りなさいな――――」
その言葉と共に部屋の扉が開かれた音、彼女の靴音が直ぐに消えた。
残されたアバタールはゆっくりと息を整えて、部屋を出た。
「……いよいよ、か」
廊下を進んでいく中、アバタールは小さく呟くもすぐに表情をしっかりとして、母の居る広間にやってきた。
玉座に座ったまま眠り続ける母を仰ぐと、石突を叩く音が床に響く。
「ベルフェゴル……」
「なんじゃ、母に侘びに来たのかの?」
老獪な声と共に仮面を付けた老人ベルフェゴルが姿を現した。
半神としての位なら彼の方が上だったが、アバタールはかまわず堂々と返した。
「無いな。もう侘びる事も遅すぎた」
「そうじゃな、遅すぎたの」
「……」
アバタールはベルフェゴルの言葉に口を閉ざした。
半神の関わりなど高が知れているのだ。自分だけじゃない。
「おぬし、此処を死地とするかね」
アバタールは答えず、彼の懐から勾玉を取り出す。それはこのレプセキアに居る操られた心剣士、反剣士、永遠剣士、半神の各メンバーに渡されており、通信としての機能を持つ。
「……カルマから命令だ―――」
操られた彼らもまた、自分と同じであった。逆らうことも出来ない、抗えない。
最後の最後まで駒として死ぬ羽目になるであろう。
「……」
通達を終えた彼は勾玉を懐に戻して、神殿の外に出た。
変わらぬ星空輝く夜空、控えめに光を帯びた名前の無い無数の花々の中、アバタールはカルマから受け取った小さ
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