駅前通りの坂の下にある一つの店。
その店で、ルキルはアクア達の為にジュースを買っていた。
「はい、ジュース4本ね。全部で200マニーだよ」
「すみません、これで」
そう言うと、ポケットから少し大きめのマニー硬貨を店員に渡す。
「500マニーだね。はい、お釣りの300マニー」
「どうも」
お礼を言いながら、少し小さめのマニー硬貨を三つ受け取る。
渡されたお釣りを再びポケットに入れると、カウンターに置かれたジュースを入れた袋を持って三人の待つ空地へと歩き出した。
「ああ、君! ちょっといいかい?」
「え?」
急に店員に引き留められるので、ルキルは足を止めて振り返る。
すると、店員はルキルを見ながら首を傾げていた。
「うーん…やっぱり少し似ているなぁ」
「似てる?」
「少し前に、ここでパフォーマンスを見せてくれた子がいてさ。どことなく君に似てる気がして…」
「そうですか。じゃあ、これで」
店員が説明していると、ルキルは何処か冷めた声でその場を去って行く。
そうして先程いた路地裏に足を踏み入れると、軽く舌打ちする。
「…この町にも来てたのか、ホンモノは」
自分に似ている人物とくれば、おのずとホンモノ―――リクと言う事になる。
一年経って再会しても、姿が一緒だったのだ。ニセモノとして生まれた自分が間違われるのは当たり前だ。
その時、何処からか鐘の音が響く。見上げると、そこには時計塔の鐘が鳴っていた。
思わず立ち止まって時計台を眺めていると、不意に昔の記憶がよぎる。
「時計台、か…そう言えば、あの城の部屋にはなかったな」
小さく呟きながら、忘却の城で作られた『トワイライトタウン』を思い出す。
アクセルによって連れて貰った、ホンモノと戦った場所。あそこは記憶で作られた部屋だったが、こうして見ると何も変わらない。
何処か懐かしく鐘の鳴る時計台を見ていると、周りで空間が揺らいだ。
「っ!? 今の、何だ…?」
揺らぎを感じ、警戒しながら辺りを見回すルキル。
そうしていると、後ろの方で何らかの気配が過る。
振り向くと、黒コートを着た人影が自分を背に駅前通りに歩いていた。
「あの黒コート…!?」
見覚えのある黒いコートに驚いていると、その人物は角を曲がって物陰に消えていく。
「待てっ!!」
見失わないと、ルキルはすぐさま黒コートの人物の後を追った。
「鐘の音…?」
空き地のベンチに座っていたアクアが顔を上げ、時計台に目を向ける。
同じく、隣に座っていたゼロボロスとウィドも時計台を見ると取り付けられた鐘が鳴っている。
だが、ここで二つの時計の針が合っていない事に気づいた。
「でも、時計の針が合ってませんね…故障しているんですかね?」
「さあ…しかし、この世界ではこの時間帯に鐘を鳴らすと言う考えもありますが」
ウィドが合ってない時計台の針を見ながら推測していると、不意にアクアが顔を俯かせた。
「アクア、どうしたの? さっきから考え事?」
「ええ、まあ…」
「どうしたんです? 良ければ聞かせてくれませんか?」
ウィドも心配そうに聞くので、アクアは俯きながら重い口を開いた。
「――あの子達の、事なんです」
そう述べながら、ソラとリクを思い浮かべる。
二人の持つキーブレード、光と闇の力。そして、彼らと一緒にいるヴェンとカイリを思い出しながら、アクアは二人に話をした。
「私は過去でソラとリクに出会った事があるんです。その時に、私は今後の事を考えて二人の内のどちらかにキーブレードの継承をさせようと考えました…ですが、テラがリクに継承を行っているのを知って、思ったんです。私達と同じ道を歩ませてはいけない、と」
だからこそ、ソラには継承を行わせずに大事な事を教えたつもりだった。
闇の所為で、自分達のように離れ離れにならないように。しかし…。
「だけど、あの戦いで二人はキーブレードを持っていました。しかも、リクは闇を使っていた…まるで、私とテラみたいに…」
「――不安、なんですね? あの子達が道を踏み外さないかが?」
ゼロボロスが結論を述べると、アクアは黙って頷く。
自分達が干渉した所為で、ソラとリクが仲違いをしてしまう事。守るべき光を持つカイリまで巻き込んでしまう事。何より、純粋なヴェンまでもが彼らの中にいる事が…とても不安でたまらない。
「私は、どうすればいいんでしょうか? あの子達まで、私達と同じ道を歩ませてはいけないのに……やっぱり今からでも戻って、ヴェン達には何処か安全な世界に戻した方が――」
「アクア、一つ聞いていいですか?」
決意を固めようとするアクアの言葉を、突然ウィドが遮る。
思わず口を閉ざして
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