町のある入り組んだ地下の通路を、少女は息を切らして走っていた。
やがて、住宅街の外れにあるトンネルの中へと出る。だが、そのトンネルの広い場所で銀髪の少女は何かを感じて足を止めた。
「くっ!?」
「もう逃げられないぞ」
悔しそうに足を止める少女に、何と金髪の男が目の前に現れる。
完全に追い詰められたと感じたのか、少女は静かに男を睨みつけた。
「…まさか、こんな所まで追ってくるとは」
「それはこちらのセリフだ。よくこんな異世界にまで逃げれたものだ」
男は何処か呆れながら言うと、目を細めて少女を睨む。
「そして、この世界にもお前が選んだあの女達がいる。これも計算しての行動だろうが…その為に、あの女はこの世界にとって重大な《禁忌》を犯した」
その言葉に、少女が反応して男に反論するように叫んだ。
「スピカは悪くない!! 禁忌と言うのならば…悪いのは、我らだろうっ!!?」
「選ばれた者を庇うのは当然の行為だな。だが、それをお前を助ける者達に言っても通るのか?」
「それは…!!」
男が聞くと、少女が顔を俯かせる。
この世界の過去と現在の勇者達。世界を、友を救うと言う正義感や絆が強い彼らが、果たして自分達が犯した行為を知ったらどうなるのか。
何も言えなくなった少女に、男はさらに話を続ける。
「キーブレードは主に強い心の持ち主が手に入れる。そんな奴らがお前達が作った『歪み』を知ったら、只では済まないぞ?」
「…だから、一つになれ。お主はそれを言いたいのか?」
少女は静かにそう言うと、顔を上げて再び男を睨んだ。
「一つだけ、言っておく。我はクウ達を信じておる」
そう。それが、彼女がこの異世界に逃がしてくれた理由だ。
彼女だけでは、エンに太刀打ち出来なかった。だから、異世界の彼女と自分に関わる人達に託す事にしたのだ。
何の接点もないこの世界の人達を、彼女は信じた。ならば、自分も信じなければ。
「例え、『歪み』が悲劇を生んだとしても……あの者達ならば、受け入れてくれる。傲慢だとも思うが、我はそう信じている」
この少女の言葉に、男はただ鼻で笑った。
「そうか。ならば…確認するといい。私と共に、お前の信じる者達の選択を――」
そう言いながら、男は少女に近づき手を伸ばした。
だが、少女の足元から紅蓮の炎が壁となって阻止した。
「何だっ!?」
突然の事に男が後退りしていると、後ろで風を切る音が響く。
気づいた時には、男は灼熱の炎に呑まれていた。
「うぐおおおおおおっ!!?」
何が起きたか分からず、少女は茫然と燃える男を見る。
そうしていると、こちらを守るように無轟と炎産霊神が目の前に立った。
「それは、こちらのセリフだ」
『怯える女の子に近付くなんて、意外と悪質だね』
「くっ…!!」
この二人の登場に、男は炎に呑まれながらも舌打ちする。
しかし、男は手を振って一瞬の内に炎を霧散させると、身体を押さえながら睨みつけた。
「ここは引こう…――だが、覚えていろ」
何処か辛そうに少女を睨むと、歯を食い縛りながら声を出した。
「例え全てを望む通りに終えても…――過去と未来が混じるこの世界を存続させる術はない事をな…」
まるで呪詛のように少女に言うと、男はその場から消え去った。
「消えた…?」
まるで幻の消えてしまった男に、無轟だけでなく炎産霊神も訝しむ。
そんな中、少女は顔を俯かせ誰にも聞こえない声で小さく呟いた。
「お主に言われなくとも…分かりきっている、そんな事」
噛み締める様に吐き出すと、少女は再び顔を上げる。
それを見て、炎産霊神が心配そうに顔を覗き込んでた。
『危ない所だったね、大丈夫?』
「どうにか、の…」
何処か弱々しく笑いかける少女を、無轟はじっと見つめる。
この少女には覚えがある。テラと共に未来に送られる際に目にした事がある。
その事を思い出しながら、無轟は口を開いた。
「お前が、俺やテラ……そして、彼らの友人をこの未来に送ったそうだな」
「…そうじゃ。我がお主等をこの世界へと連れてきた」
一つ頷くと、無轟に真剣な目で話し出した。
「彼らとの戦いには、今現在に存在する勇者達では太刀打ち出来ない。その為にも、お主達が生きる時代での戦力、そして絆を持った者達が必要なのだ」
『だから、無轟だけでなくテラ達も連れてきたんだね』
炎産霊神が納得したように頷くが、それでも無轟は分からない事があった。
「しかし、何故過去からなのだ? 俺は歳の問題があるが、この世界のテラ達はクウと同じように成長して強くなっているのでは――」
そうして疑問をぶつけていると、不意に言葉を止める。
少しだけ口を閉ざすと
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