「――ろ…――起きろ…」
何処か優しげな声と共に、身体が揺さぶられる。
誰かが現実に戻そうとするので、シャオは振り払うように寝返りを打った。
「ううん…あと、五分…」
布団を頭まで被って拒絶すると、その状態で眠りの闇に意識を戻す。
すると、起こそうとする誰かは無理やりシャオの顔の部分を覆った布団を剥がす。
そして、シャオの耳を思いっきり引っ張るように持ち上げた。
「いたたたたっ!? 起きる、起きるよー!!」
思いがけない反撃にシャオは叫びながら布団を剥がし、ようやく気づいた。
自分は何もない真っ白な場所で寝ていた。なのに、いつの間にかベットで眠っているではないか。
周りを見回すと、床に散らばった服に整頓してない勉強机。そして、あちこちに遊び道具のある部屋にシャオは首を傾げた。
「え? あれ? ここ、ボクの部屋…?」
「何寝惚けているんだ?」
茫然としていると、ベットの隣に誰かが立っている。
ゆっくりと顔を向けると、シャオは目を見開いて息を呑んだ。
「父、さん…?」
少し長めの銀髪に緑の混じった水色の瞳。そして、年を取っても尚も整った顔立ち。
それは、紛れもなく自分の世界にいる筈の父の姿だった。
唖然とするシャオに、父親は腕を組むと呆れた目で口を開いた。
「早く支度しろ、朝ご飯食べたら家族会議なんだからな」
そう言葉をかけられ、シャオは我に返って父親に聞き返した。
「家族会議? 何で?」
「お前は家出して家族に心配かけているんだ。それについてとことん話し合わないとな」
「えー!? いいじゃないか、こうして戻って来たんだから!!」
シャオが文句を言うと、父親が溜息を吐く。
次の瞬間、シャオの頭に拳が勢いよくゴォンと振り下ろされた。
「うぐぅ…!! 師匠よりも痛い…!!」
「バカな事言うな。ほら、目が覚めただろ」
「あ、あれ…?」
師匠の拳骨よりも響き、頭を押さえるシャオに父親は呆れながら言う。
その言葉に、シャオが涙目で前を見ると、一つの異変に気付く。
自分の部屋の扉には、枠の中に光の渦のような物がある。
ここは忘却の城が見せる部屋だと理解し、シャオは恐る恐る父親を見た。
「父さん…父さんって、幻なの?」
「幻だ。正確に言えば、俺はお前の記憶から作られた父親だ」
「そうなの…?」
幻だと信じられず、目の前の父親に聞き返すシャオ。
そんなシャオに、父親は何処か真剣な目で話を続けた。
「お前の中にある記憶が、こうして俺と言う存在を作った。だから、俺はある程度の事を理解すると同時にお前の父親としてこうして存在出来るんだ」
「うーん…何か、難しすぎてよく分かんないや…」
父親の説明について行けず、頭がごちゃごちゃになるシャオ。
だが、やがてシャオは暗い表情を作って顔を俯かせた。
「ねえ、父さん…――ボクは、今心配させているの?」
「記憶通りの俺なら、心配している。家族会議させるぐらいにな」
「今の父さんは幻なんだよね……じゃあ、ボクは何なの?」
この父親は記憶で作られた幻の存在。では、自分は何なのだろうか。
レプリカ、人形、化け物…――フェンやアウルムに言われた言葉を思い浮かべていると、頭に何かが乗せられる。
顔を上げると、先程の師匠と同じように父親は優しく頭を撫でて笑っていた。
「お前はお前だ。それ以外の何でもない…――俺達の大事な子供であり、家族だ」
「うん…それを聞けて良かったよ。偶然、ボクの記憶の父さんに会えなかったら、ボク…」
「偶然じゃないさ」
「え?」
弱音を吐いていると、突然そんな事を言われてシャオは首を傾げた。
「全ての運命に偶然は無い。あるのは必然だ」
「必然…」
真剣に語る父親の言葉に、シャオは噛み締める様に呟く。
それは今まで、いろんな人達から何度も聞いた言葉だから。
「じゃあ…ボクが今異世界にいる事も必然なの?」
「ああ。全ては繋がっている…――これからの出来事も、お前の旅で出会う人達とも、全ては必然によって紡ぎ出されているんだ」
何処か切なく、それでいて優しい声でシャオに言い聞かせると、父親は掛かんでシャオと同じ目線になる。
自分とは違う瞳に見つめられながら、父親は更に頭を撫でて視線を逸さずに語った。
「だけど、忘れるな。この先何が起きようとも、未来は選べる。今この時も、どんなに絶望的な状況でも…自分の望む未来を信じて、進むんだ」
「まだ、よく分からないけど…でも、何となく分かったかも」
そう言うと、シャオも目の前の父親と同じように見つめ返す。
そのシャオの様子に、父親は笑うとゆっくりと手を離して立ち上がる。
シャオもベットから立ち上がると、隣にいる父
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