ビフロンス。半神アイネアスとサイキが作り出した異空間が今やの残存の半神たち、そして、神無たちの拠点であった。
協議の後、それぞれが休息などをしている時であった。決戦の間近となると、変な緊張感が身体を支配する。支配されると呑気に休む事もまま成らない。アイネアスにより外出は城外の近くまでしか許されなかった。
「――此処は凄い場所だな」
「そうね」
神月と紗那の二人は城の中に聳えたつ塔の頂の広場に居た。高さも相まって吹き抜ける風がとてつもなく寒いが二人とも厚めのコートを(使用人から渡された)羽織っている。
彼らから見ればこのビフロンスはまさに自分たちが住んでいる異世界『秘密の花園』と同じだが、何もかもがこちらが上だった。
「……俺もまだまだだ」
「大丈夫よ、神月ならもっと上達していくわ」
紗那は屈託の無い笑顔をみせ、彼を励ます。神月は何処か顔を赤くして、うん、と頷き返した。
そして、一息はいて真っ直ぐな双眸で彼女を見つめた。
「――紗那、俺はお前を信じて居る。『無理はするな』とか余計な心配の言葉は掛けない」
「それでいいよ。変な気遣いはお互いにしない方がいいもの」
「……とはいえ、ヴァイや母さんに関しては少し心配になる。親父も了承しているけど、内心、心配だろうな」
「この戦いは一人ひとりで戦うわけじゃない。皆で戦う……皆を信じることね」
「ああ…信じるって決めたんだ。―――さ、もう降りよう。この風景、しかと刻み込んだ」
紗那は頷き返し、二人は広場を後に塔を降りていった。
*
「オルガはいいのかー? アーファと一緒じゃなくて」
使用人たちに案内された部屋で一緒になった菜月とオルガの二人は部屋から出ずにそれぞれベッドで横になって雑談に浸っていた。そんな中、菜月が意地悪そうな口調で彼に尋ねた。
彼にとっては何もかも手厳しい女性だけれども、何よりも愛おしい人である。同じく愛する人を持つ菜月だからこそからかった。
雑談で笑みを浮かべていた彼の顔は言われると、さも気にしていない様子で返した。
「んー…今、アイツに会ったら変に怒ってぶん殴られそうだからいいわ。って、菜月こそ、首のマフラーはどうした? 置き忘れたのか?」
「いや、出立する前に黄泉に預けている」
「かああーっ」
尋ねた自分が馬鹿になったとオルガはあきれ果てた声を出した。だが、お互いに心配をかける必要が無い事を理解しあっている事に気づいた。
「……他の皆は、きっと心配で不安なんだろうなー」
「ああ。でも、それが「らしい」ったら「らしい」だろ。皆、緊張してんだよ」
オルガは用意された自分のベッドに仰向けに寝転んだ。
その顔は険しくも不安さ、緊張しているようすではなかった。神月たち、皆を案じている表情だった。
「そうだな。オイラたちだけでも、しっかりやるか!」
「ふふ」
菜月の笑顔につられて、オルガも小さく微笑みを浮かべた。
そうして、再び雑談を再開した。
*
時に人に噂にされているとくしゃみを引き起こす事が在る。
「――っくしゅん!!」
アーファの突然のくしゃみに仮眠を取っていたペルセフォネが起き、ヴァイはビクンとはね上がった。
3人も使用人に案内された部屋から出ず、ペルセフォネは横になってアーファとヴァイは静かに雑談をしていたところであった。
「……」
起きた彼女は無言のまま、半目でアーファを睨んだ。
「ご、ごめんね」
睨み据えられたアーファは直ぐに彼女に謝罪の言葉を言った。ペルセフォネは何も言い返さないまま、再び眠りについた。
すぐに寝付いたのか、すうすうと静かに寝息を立てていた。確認したヴァイは微笑を浮かべて、もと居た席に戻る。
「どうしたの? 急に」
声のボリュームを下げ、静かに口火を切ったヴァイにアーファは恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。
「なんでかしら……」
「ねえ……アーファはやっぱり緊張してる?」
「当たり前よ。でも、アイツはやってこないし……はあ」
アーファは頬杖をついて深いため息をこぼし、そんな彼女の愚痴をヴァイは苦笑いで流した。
自分も兄の神月や両親にでも会って、緊張感を解したかったがきっと手はいっぱいだろう。それを見通して、ヴァイはアーファと静かな雑談を楽しんでいた。
「じゃ、他のヒトと仲良くなった?」
オルガに恋しがるアーファの気を紛らわせようと、別の話題に取り入った。
此処にたどり着き、直ぐに多くのヒトたちと出会った。
「え? ……うーん、半神って奴らは気に入らないわ」
「バサッと言うね…」
お互いに最低限の自己紹介をしたアーファは、半神たちの独特の雰囲気に何処か不信に思っていたようだ。確かに、全員が心優
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