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第五章 三剣士編第四話「先魁」

 戦いの火蓋は切って落とされた。
 聖域レプセキア奪還戦の始まりだった。

 第四島へと向かう紗那たちは他の島攻略のメンバーよりいち早く神殿の元までたどり着いていた。
 その理由は、半神イリシアのおかげだった。

「凄いわね、その姿」

 紗那が彼女の方へと振り向いて、気さくに笑う。
 イリシアは今、その身を水の中に包まれている状態だった。水はまるで不定形ながらも人らしい形をとどめながら、彼女を守っている。
 紗那たちはこの『水』の中に入って、一気にハートレスの中を突き破ってきたのだった(ヴァイロンは白龍となってハートレスを蹴散らして前進して来た)。

「ううん。この子が強いから」

「はは、どっちもさ。流石はイリシアね」

 『水』―――イリシアを守る鉄壁或いはなぎ払う剣ともなるその名前は『ヴァッサー』をほめるように微笑み返した。
 セイグリットは気さくに笑って、彼女の頭を撫でる。撫でられた彼女は嬉しそうに顔を淡く赤色に染めた。

「さあ、先に行きましょう…! まだ、この先が本番ですから」

「って、また来たぞ!!」

 入るもつかの間、ハートレスがまた一斉に攻め入ってくる。人海戦術、と称するも憚る程。
 イリシアが若干、表情を強張らせ、身を翻る。

「この神殿の奥に結界の操作室があります。真っ直ぐ突き進んでください!」

「え…?」

「……そう言うことよ。さっさと行くわよ」

 戸惑う紗那の手を無理やり、イヴは引っ張りながら駆けだしていった。
 制止する者は誰も居なかった。紗那も直ぐに彼女の意を理解し、自分の足で走り出す。

「恩に着る」

 最後にヴァイロンが頭を下げて、礼を言った。彼女一人だけでは第四島にはたどり着けなかった。お互いにサポートしあって、ここまで来たのだった。
 イリシアは小さく振り返って笑みを浮かべ、同じく礼を返した。それを見て、彼女も神殿の奥へと駆けだして行った。
 ゆっくりと神殿の入り口に阻む彼女の元に潜んで来るハートレスを睥睨し、口を開いた

「……この聖域、レプセキアの美しさは闇に落ちたお前たちには理解できない……。
 ……この聖域の尊さを踏み躙った無知をッ……我々の、怒りを………ッッ!!」

 次第に巨大化する『ヴァッサー』は所々、鋭利な剣や槍、牙だらけの口を生やした蛇、巨大な足、腕と異形へと変貌する。その心臓にいるイリシアの表情は激しい殺意に満ちた怒りの表情で吼えた。

「死をもって、知れ!!!!!!!」


「――やれやれ、イリシアったら」

 第四神殿に侵入した紗那たち。構造的にまっすぐな道ながらも敵襲の気配も無い。
 そんな中、半神セイグリットが呆れたように口を開いた。

「……相当、怒っていたよね。みんな」

 故郷がハートレスに蝕んだ風景を見た殆どの半神は愕然とし、怒りに爆発するものもいた。
 セイグリットも少し息を付いて、その言葉を返した。

「そりゃあ、此処ほど自分たちの『居場所』と呼べる世界は無いからねえ……あたしだって結構、頭に来てるんだよ―――っと、この先の広間を抜けたらに結界の操作する部屋に通じてるわ」

 彼女らの前に聳える扉を、セイグリットは見目に反した強烈かつ俊足な蹴りで蹴破った。
 おお、と紗那やアーファは感嘆の声をあげ、蹴破った彼女は照れ臭そうにはにかんだ笑みを浮かべ返す。
 しかし、直ぐにイヴやヴァイロンに諫められ、広間へと入る。

「―――侵入者ね」

「……そのようね」

 奥への扉の前に立ち阻む二人の女性。
 一人は白と赤の衣装を着た成人した女性、もう一人は暗色の服で身を包んだ声音の低い少女。
 女性の方は仮面を付けていたが、もう一人の少女は仮面を付けていない。褐色の素顔を暗色のローブで隠している。

(仮面をつけていない…? 操られていないっていうの?)

(『協議』での話を聞く限り、仮面を付けていない者はアバタールっていう半神だけなはず。……用心しないとね)

(先に進んで第一島を包む結界を解きたいけど……うまくいかないねえ)

 3人がそれぞれ心の中で疑問などを呟きつつも、奥にいる二人以外に何かあるか確認する。

「悪いけど、此処から先は通さない」

「! なにっ」

 そう言うと、出入り口にある扉に半透明な結界が展開された。
 逃げることも出来ない、前進するにも二人が阻んでいる。

「……向こうは二人、こちらは5人……ね」

「なんだ、数の差で勝って嬉しいの?」

 白服の女がやや毒の含んだ物言いでせせら笑う。むっと紗那は表情をきつくすると、イヴが肩を叩いて、宥めた。代わりに彼女が言い返してやった。

「勿論、数と実力も兼ねているもの」

「……なら、望みどおり『分けて』あげましょう」

「!?」

 白服の女性の一声と共に、広間の空間が揺ら
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