楽しいパーティー会場が、水を打ったように静まり返る。
凍りつく彼ら脳裏に浮かぶのは、怪しい笑みで得体のしれない物体を差し出すウィドの姿が。
「ウ、ウィドが料理を作るぅ!!?」
「何で止めなかったんだニセモノォ!!?」
我に返ったのか、ソラとリクは顔を真っ青にしてルキルに詰め寄る。
本編では作る工程から変な材料を使っており、誕生日企画でもマスター・ゼアノートを昇天させ、あとがきでも散々な目にあっているのだ。それが、今ここで登場すれば誰だって焦る。
汗を滝のように掻く二人に掴まれながら、ルキルは視線を逸らして口を開いた。
「一応…数日前に、アクアと一緒に料理を教えていたんだが…」
「何故か、教えても変な物しか出来上がらなくて…」
同じく料理を教えていたアクアも、諦めの目で全員から顔を逸らしている。
「キュー…!!」「ピギー…!!」
この二人の説明に、料理の被害者であるドリームイーター二匹も震え上がる始末だ。
「マズイ…折角のリクの承認パーティーなのに…!!!」
「このままじゃ葬式パーティーになりかねない…!!!」
ある意味『3D』何かとは比べ物にならない危機に、ソラとオパールが顔を見合わせて呟く。
彼が作るのは『料理』と言う名の“殺戮兵器”だ。そんなのが出てきたら最後、闇に落ちるよりも恐ろしい惨状になってしまう。
「ほおぉ…? お前達は私の料理を何だと思っているぅぅぅ…?」
「「ひやぁああああああああああっ!!?」」
突然真横から怒りの篭った低い声が聞こえ、ソラとオパールが飛び退る。
全員が注目すると、そこには最後の一人であるウィドが何時も違う服装で不機嫌そうに腕を組んで立っていた。
「って、先生!? その服と眼鏡はどうしたんだ!?」
よく見れば今のウィドの格好は、肘の部分に緑のボタン止めが付いた白いワイシャツに上から緑のネクタイと赤いブレザーを着ている。更に、普段は着ない青いジーンズの長ズボンと肩止め用の青いマントを着用している。その上で伊達眼鏡もかけているので、まさに学園教師風の衣装だ。
尚、この衣装について知りたいのであれば、夢旅人さんのピクシブの作品を―――
「さりげに他人の宣伝してんじゃねぇ!!!」
ぎゃあああああああああっ!!?
勝手に宣伝を始める地の文にクウが飛び蹴りをかます中、ルキルの問いかけにウィドが怒りを解いて説明していた。
「折角、生徒の一人が試験合格したんですよ? なので、私もそれ相当の服装をと思いまして……それよりも、遅くなってしまい申し訳ありませんね。少々準備に手間取ってしまって」
そう言って皆に笑顔を見せるが、その場にいる全員が笑みの代わりに冷や汗を掻いて震えて出した。
「そ…その、準備って…!!?」
「あの、地獄の料理「『空衝煉獄斬』」ぎゃあああああああっ!!?」
リクに続く様にヴェンが言った直後、7章で習得した技で制裁されてしまう。
ズタボロになって倒れるヴェンにテラ達まで黙祷を送っていると、ウィドが剣を収めながら鼻を鳴らした。
「地獄とは失礼な…とにかく、さっさと入ってきてください」
そう言いながらパーティー会場のドアに目を向ける。
思わず全員も視線を向けると、ドアが開いた。
「失礼するぞ」
「久しぶりだな」
『『『えええぇぇーーーーーーーーーーっ!!!??』』』
そう言って入ってきた人物に、ウィドを除いた全員が悲鳴が入り混じった叫び声を上げる。
理由は至極簡単。会場に入ってきたのは若き頃のゼアノートとアンセムと名乗ったゼアノートの二人なのだから。(ちなみに、今回は区別を付ける為に少年の方をゼアノート。ハートレスの方をアンセムと表記させて貰います)
「ウィド、何でこんな奴らを!?」
ソラが最もな疑問をぶつけると、ウィドが眼鏡を光らせるように笑い出した。
「おやおや? ゲーム本編でも言ってじゃないですか、リクの親友だと」
「俺の親友はソラだけだっ!!! こんな肌黒で髪の毛が後退し始めている奴が親友なんて認めないぞっ!!!」
「そうよ!! 将来禿ジジイ決定の未来を持ってる奴とリクを一緒にしないでっ!!!」
「「うぐぉ…!?」」
リクとオパールの怒りの言葉に、ゼアノートとアンセムの心に棘が突き刺さった。
「二人とも…結構、エグい事言うのね…」
あまりの酷さに、さすがのアクアもゼアノート達に同情してしまう程だ。
そんな中、二人に文句を言われたウィドは怯む事なく笑っていた。
「いやー、すみませんね。でも、これはこれで面白い展開になりそうですねー」
「おい…お前、ワザとこいつら呼んだだろ?」
「何の事です?」
半目で言うクウに、ウィドは笑ってそう言いのけた。
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