「……皆、いる?」
紗那は呼びかけたが、周囲は混沌とした闇色の空間。視界も暗く、傍に何かあるのかも分からない。
声を大にして言うと、
「私はいるわよ」
「暗いわねえ……『星空』でも作りましょっと!」
イヴ、続いてセイグリットの声が帰ってくると暗闇の世界に星が鏤められて行く。
小さな輝きが無数、無限に出現し、明るさを取り戻した。
そうして、明るくなった世界で紗那の傍にほか二人がいた。だが、アーファ、ヴァイロンはいなかった。
「…凄いね、『星空』作るって」
闇色に包まれた世界を一瞬のうちに、星が輝かせた業をなしたセイグリットに驚きのままに呟く。
「―――さて、そこにいるのは解ってるよ!」
セイグリットが鋭く一喝すると彼女らの前に赤黒い影が広がり、中から先ほどの暗色装束を見に包んだ少女が現れる。その手には鮮やかな赤色の刀身をした短刀を逆手に握っている。
見破られた彼女は周囲の星空を忌々しげに見て、セイグリットを睨み据える。
「……」
「危なかったようだねえ。暗がりの中ならあの子、何処からでも『斬りかかって来た』わけだ」
「そうねえ。真っ先に声を上げた紗那も危なかったわね」
「うう」
からかう様にイヴに言われ、ゾッと背筋がひやりとした紗那は若干、青ざめた。
だが、そんな事構わずに少女が動いた。
「!」
「はやっ!」
間合いを一気につめられ、最初に赤黒く染まった左足の蹴りでイヴへと大きく飛ばされた。続いて、紗那が一対の心剣『干将・莫耶』を抜き取る。
彼女の繰り出した一閃を軽々と異様に発達した身のこなしでかわされ、紗那へすかさず返しの一閃を与えた。切りつけた箇所を先読み、羽衣で防ぐ。だが、瞬時に空いた片手が赤黒いオーラを纏い、彼女の腹部へと打ち込んだ。
「かはッ――!?」
打ち込まれた赤黒い光が弾け、紗那は激しい痛みと共にバランスを崩す。うつむきかかった所で、首元へ短刀を突き刺そうとする。
「させないよっ!」
脇から大きく跳び蹴りを喰らった少女は闇色の大地に飛び込むように姿を消した。
セイグリットは噎せ苦しむ紗那の背を擦りながら、呼びかける。
「大丈夫かい!?」
「…は、はい……助かりました」
「気にしない、ほら! しゃきっとする」
バンっと強く背中を叩かれ、紗那は構えを治した。
傍にはセイグリットが身構え、少し先にはイヴが周囲を警戒しながらこっちへ駆け寄ってきた。
「あの子、中々の動きをするわね」
「……体術には体術ね――ぅ、ふぅ……」
イヴが関心めいていうと、紗那は『干将・莫耶』を解き、拳をぐっとうならせる。
しかし、腹部に受けたダメージに呼吸が荒くなっていた。
それを見かねて、セイグリットが紗那の前に立つ。怪訝に思い、尋ねようとした瞬間、
「――はぁっ!!」
「っあ!?」
「ちょ?」
セイグリットの繰り出した右手の一指し指が紗那の腹部へ突き刺した。驚く二人、特に紗那は言葉を失っていた。
だが、刺された痛みも無く、次第に腹部の痛みも引いて行った事を理解した。
「……えーっと、何したの?」
「――後で」
セイグリットが言うや否や、電光石火のごとく駆けだした。彼女がいた場所へ巨大で赤黒い刃が振り下ろされた。
イヴが刃を手袋に仕込んだ糸で絡めとり、一気に千切った。赤黒い刃が粉々になり、再び、少女が姿を現した。
赤黒い欠片はまるで血のように禍々しさを帯びている。その中から出現した少女に3人は恐怖をかみ締める。
少女との戦闘、彼女一人に対して三人で挑んだこの戦いは未だ終端には至っていなかった。
「尋常じゃない動きさね」
「『人間』とは違うわ……まあ、『何』なのかは解らないけど」
久しく感じた恐怖にセイグリットは半笑みを浮かべ、イヴは冷静に少女の異常さを口にした。
赤黒い気は剣、槍や時に獣すら形を変えて襲いかかる。少女が身に纏うことで防御にもなるようだ。
「……異常な、身体能力か」
心剣で強化された体術による肉弾戦は熾烈を極めた。少女の異常な身体能力は果たして彼女の持っていた剣の影響だけなのか。
疑問に抱く合間に、少女は疲弊の色一つも無く新たな攻撃を仕掛けた。
「紅血に沈め」
少女の一声と共に、その背後から噴出した赤黒い血で固めたような門が出現する。
ゆっくりと音を立てて開く門を唖然と見つめるイヴとと紗那。セイグリットはハッとなり、
「二人とも全力で『逃げるんだよ』!!」
「っ!?」
彼女の一喝に反応した二人が動こうとしたその時、共に門が完全に開く。
門の奥には黒さのあまりに中を見ることが出来ない。だが、内側から静かに、加速するように大きく鳴動してきている。
「―――」
3人は見た
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME