神月が動く。虹に色めく三対六翼を広げながら。
黒塊から触手のようなものを生やし、彼の突撃に迎え撃つ。だが、彼はその迎撃に怯みもせず、抜き取った虹の刀『ユミル』でたやすく切り裂く。
「俺たちも行くぜ!」
遅れてゼツたちも駆け出していた。それに気づいたのか黒い塊の攻勢は神月以外にも向けられた。鋭く伸びた触手は枝分かれし、一斉にゼツたちへと襲いかかる。
「おっと」
「ふん」
「はああっ!」
「とうっ!!」
迫ってきた触手の矢玉はゼツが繰り出した黒炎の手により薙ぎ払われ、水晶を掲げたビラコチャ、王羅は妖刀ムラマサを構えて駆けつけ、アビスはレイピアに青い炎を纏う。それぞれ黒い塊へと攻撃した。
水晶が形を変え、ハンマーに似た武器となり、ビラコチャは渾身のひと振りを叩きつけ、ムラマサによって走った斬撃が黒い壁一面に走る。
二人が身を下がると同時に、追撃にゼツが放った黒炎の鉄拳、アビスの蒼炎の礫、神月の虹色の破壊光が直に走り、黒い壁に激突する。
「無駄ですよ。この力、『黒世の物質(ノワール・ユニヴェール)』の前では……ね」
5人の攻撃はダメージは発生していた。だが、塊は抉られた箇所を埋め尽くし、傷を覆い尽くす。
レギオンの言葉と共に黒い塊が蠢動をはじめる。
「マジかよ…」
黒い壁一面から異形の体が抜け出てくる。『上半身』と認識できたが、誰もが唖然と異形の具現を見届けた。
頭部、両腕は無貌、牙だらけの口が開き、胸の中心に一つ目が神月たちを睨めつける。そして、誕生した産声ともとれる咆哮が天地を轟かす。
「……こうなると、どう倒すか」
咆哮をもろともせずハンマーから元の水晶へと戻し、ビラコチャは平坦な声で他の4人へ問いかける。緊張の色で満ちていた4人は落ち着いた表情となった。
「なら、この黒いの『全部』消し飛ばせばいいんじゃね?」
そして、一言ゼツが気楽そうに言うと、ビラコチャはうんと頷き返す。
「では、そうしよう。私が出る」
そう言って、ビラコチャは水晶を中天へ放り投げる。水晶はその場で静止した。すると、水晶は次第に光を放ちながら、分解していく。
「何をするつもりですか!?」
黒い異形が両腕で叩きつけようとする。狙いは水晶、ビラコチャだ。
だが、振り下ろされた巨腕は青い炎の燐光が突如、眩しく光、爆発を伴って両腕を焼き焦がす。
「ぐっ!?」
「今よ!」
「覚悟は出来たか、レギオンとやら」
水晶が丸々分解され、新たな姿へと変形していた。
一面を覆う黒い塊同じくビラコチャの背後に権限した水晶が一面に、無数の砲台、銃口を剥き出した。
「す、すごい…!」
「……マジ?」
王羅は驚きに満ちた顔で具現化した銃、砲台を見つめ、ゼツは自身の発言に応じたビラコチャに唖然としていた。
そして、彼の無慈悲な眼光がより細くなり、砲火を打ち上げた。
大轟音。圧倒的な銃声、砲撃の爆音と共に黒い壁を、異形の化け物すら容赦なく打ち抜き、爆裂した。
「なっ――――おのれえええええ!!」
「……吠えるな、汚物」
レギオンの叫びを砲撃はレーザーのように強烈な光線となって黒い塊を霧散、消滅させる。
そして、激しい銃撃砲火の末、一面を被っていた黒い塊は悉く消滅し、レギオンは床に倒れ込んでいた。
「――『黒世の物質』か。強みとしては再生力、防御力…攻撃力というよりは攻撃の種類が豊富といったところか」
ビラコチャはぶつぶつと呟きながら、先に続く扉へと足を踏み出した。その瞬間、倒れ込んでいたレギオンの体が黒く染まって弾ける。
そして、ビラコチャの背後から黒い液体が収束する。その中から先ほど倒されたはずのレギオンが現れる。
「危ないッ!」
神月が咄嗟にヴァラクトゥラでビラコチャの背後を突き刺そうとしたレギオンの一撃を防いだ。彼が握っていたのは薄い青色に染められた短剣。
ビラコチャはやや驚いた様子でゆったりと振り返る。だが、既に水晶が宙を浮きつつ、穂先とは別に刃のついた槍となった。
「――なるほど」
そう言うと槍は鋭くレギオンへと飛んだ。だが、刃は届かない。
寸前で、叩きつけられるように斬り伏せられた。レギオンとは別にもう一人の男が姿を現す。
濃紺の髪をした、大振りな直剣を手に持った仮面の男性。その背にはレギオンと同じ形質の翼に似た何かが生えており、蠢き続けている。
「もう一人いた…!?」
男性は剣を強く握って、大きく振り払った。剣風による風圧が神月、ビラコチャを吹き飛ばす。
二人はすぐに受身をとり、体勢を整える。すぐにアビスたちも二人に駆け寄った。
「……サーヴァン、存外押されました」
剣を下ろした彼の傍で膝をついていたレギオンが立ち上がる。
サーヴァンは
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