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第五章 三剣士編第十八話「第一島へ」

幕間2


―――我らの母は偉大な存在です

 永い月日の中、その傍らで共に生きてきた半神が言った。
 『原初の時』に母により生まれ、生き、付き従っている。
 しかし、彼女だけが知っている。
 『原初の時』に起きてしまった事件を、真実を。

―――もうすぐ打ち明けなければなりません。それがこのセカイを守る一つの鍵もう一つの鍵も、救い出さないと…






「――もうすぐだな」

 モノマキアにある一室、ディザイアはアーシャと共に出立の用意をしていた。後数分で母を奪還する決戦が行われる。
 アーシャも黒い布の下、覚悟を決めた顔色で頷いた。彼女が見た彼の顔にも覚悟を決め、静かな表情が伺えた。

「……ええ」

「アーシャ、一つ聞きたい事がある」

 視線を向けなおしたディザイアがアーシャへ問い尋ねる。彼女は拒む事も無く、その問いの内容を聞いた。

「何かしら」

「―――最初、俺が生まれた時……なぜ、母は俺を恐れ、俺を隔離した? 真意を知ってるのはお前くらいだろうと思って」

「……時間もないし、さっさと話しましょう―――レプキア様が貴方を生み出して、すぐに恐れてしまったわけを」

 この問いは長くから続いていた。詰まる所、レプキアとディザイアの因縁であった。
 ディザイアの持つ権能は混沌。ほかの力を取り入れ、己のものにし続けることで、レプキアは「彼がいつか反逆する日が来るのかもしれない」と恐れたのだ。恐れる原因は、『原初の時』で、最初に作り出した半神アザートス、ヴァラクトゥラの反逆と重なって見えるからだった。
 アザートスの持つ権能は「破壊」。この破壊はレプキアも予期せぬ事に「理すら破壊する」ことで、刃向かえない筈だった半神の反逆を許した。

「―――レプキア様は貴方をアザートスに『重なって見てしまった』。いつの日か、自分はまた命を奪われてしまうのではないか? そう思って、貴方を遠ざけ、結果『真我の世界』へ追いやった。
 ……それに、貴方の中には半神ダークネスの残滓も存在している」

「……みんな、気づいていたのか」

「ええ。キサラはたぶん我関せずでしょう」

 真我の世界で幽閉された合間、半神であるダークネスが現れた。彼との面識は無いが、名は知っていた。
 その時のダークネスはゼツとの戦いで敗れ、本体はレプセキアへ幽閉、本体が延命に用意した残り滓は真我の世界へ流れ、ディザイアを利用しようとした。だが、ディザイアの『混沌』に吸収され、その力の肉にされた。
 しかし、それでも母のいるレプセキアの道は開かれずに幽閉の時間は続くと思われた。

(アナザ、あいつが俺に嗾けた)

 何百何千のハートレスを狩り、その心を固めたキングダムハーツを利用したアナザが偶然発見した事でディザイアと遭遇した。
 その後は彼女に協力する形でゼツの仲間たちと戦い、敗れた。その時、

「――それでも母は、俺を思っていてくれた」

 自分を縛り付ける竜樹が守るように盾となり散り果てた瞬間、そう思えた。真意が違っていても、今の己の母に対する思いは変わっていた。

「……ディザイア、そろそろ行きましょう。母を取り戻しに」

「ああ。行こう」

 意を決して部屋を出て行った二人。囚われた母と奪われた故郷を取り戻すべく。
 



 *

 上甲板には第一島へと向かうメンバーと数人の人物が居残り、ほかは何人かを除いて操作室の広間で様子を見ていた。
 定刻を見て、アイネアスが口を開く。

「―――第一島への参加するメンバーを改めて発表しよう。
 神無、アダム、チェル、シンク、ヘカテー、次にアーシャ、アルカナ、ブレイズ、ディザイア、アルビノーレのメンバーだ」

 その声は船の全域に聞こえるように伝播され、彼の話は続く。

「これより、第一島まで接近する。まだアバタールを含めた敵戦力は存在する。
 周辺のメンバーも上甲板に待機した。では、モノマキア―――向かえ!!」

 レプセキアへたどり着いて、その場で制止していた箱舟モノマキアが動きだす。
 神無たちは次第に近づいて見える第一島を見据えながら、息を呑んだ。




14/03/03 12:28更新 / NANA&夢旅人
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