外からの月明かりに照らされ、壁が薄く煌めく薄暗い道。
そんな道を、リクは一人歩いていた。
「おかしいな、確かこっちの方に…」
一本道だと言うのに、目当ての人物は見当たらない。
やがて道が途切れると、その先に広い朽ち果てた鍾乳洞のドームが広がっている。
その真ん中で、月明かりに照らされるようにリリィが背を向けて立っていた。
「ここにいたのか」
「リク!?」
近づきながら声をかけると、リリィが驚きながら振り向く。
両手を胸に当て、握りしめるようにブローチのお守りを持っている。この様子を見ると、リクは優しく話しかけた。
「あんまり離れるな。まだハートレスが潜んでるかもしれないだろ?」
「うん、ごめんね…」
リリィが頷きながら謝ると、前の方に顔を逸らす。
改めて見ると、リリィのいる場所は切り取った崖になっており、その下には月明かりに照らされた入り江が広がっている。
この風景を視界に収めつつ、リクも隣に立つと少しして話題を出した。
「そう言えば、何か思い出したか?」
そう聞くと、リリィは顔を俯かせたまま口を開いた。
「白い羽根…かな?」
「白い羽根?」
「う、うん。ここで彷徨ってた時に、白い羽根が辺りに一面に散らばってた……思い出せたのは、これだけ」
「そうか…」
思い出した記憶を聞いてリクが頷くと、今度はリリィから質問してきた。
「そう言うリクは、夢は思いついた?」
この質問にリクも顔を逸らすと、何処か困った表情で口を開いた。
「――夢、かは分からない。でも、リリィと居て思い出した事がある」
そう言うと、一つの記憶を巡らせる。
彼女から感じる懐かしさを思い浮かべながら、ゆっくりと語り出した。
「俺が、まだ小さい頃に…誰かと約束した事があるんだ。大切な人を守る力の事」
それは、ある人と交わした島での秘密の約束。
約束を交わした人は確かにそう言っていた。だけど自分が幼かったからか、長い年月の所為か、それ以上は思い出せない。
「その秘密の約束は、本当にかすかな記憶で…どんな人だったのか、どんな事をしたのか、よく思い出せない…」
他の世界から来た人なのは、覚えている。その為に何かをしていた気がするが…それ以上は記憶が朧げで上手く引き出せない。
思い出せない記憶にリクが顔を顰めていると、それを感じ取ったのかリリィが優しく笑いかけた。
「でも、思い出せた。小さな記憶でも、思い出した事には変わりない…違う?」
「…そうだな。その約束が、何時かは俺の夢になるのかな?」
優しく語るリリィに、リクも微笑み返すと朽ちた鍾乳洞の間から見える夜空を見上げる。
「オパールのように、大空を自由に飛び回る事。リリィのように、夢の中の人物に会う事。それと同じ夢、俺も持てるかな…?」
心に思った事を呟くと、リクは不安げに胸を押さえる。
『外の世界に行きたい』と願った夢。それを叶えたと同時に、沢山の人や心を傷付けた。そんな自分が、再び夢を持って大丈夫なのだろうか。
そんなリクに、リリィは胸を押さえていない方の手を両手で包み込むように握った。
「大丈夫だよ。私やオパールと同じ叶えたい気持ち…リクなら、きっと持てる」
「…ありがとう」
静かにリクが顔を上げてお礼を述べると、リリィの顔が赤くなる。
リリィはそれを隠す様に顔を逸らすと、握っていたリクの手を離して一歩前に出ると思いっきり両手を広げた。
「き、綺麗でしょ、この入り江! ここ、私が一番好きな場所なの!」
「へぇ…本当に好きなんだな、この場所」
声が上擦っているが、何処か嬉しそうに話すリリィにリクも笑いかける。
すると、リリィはこちらを振り向いて満面の笑みを浮かべた。
「うん! 全てを包み込んで、癒してくれる…――私ね、そんな海が大好きだから!!」
「そうか」
それだけ言うと、リクは全体を見回す。
崖の下にある入り江は水が透き通っており、月明かりが鍾乳洞全体を照らし辺りを光らせているので神秘さをより引き立たせている。
何処か神聖ささえも思わせていると、急にリリィが覗き込むように首を傾げた。
「――ねえ、少し泳がない?」
「え? まぁ、少しぐらいなら構わないが…」
「良かった…じゃあ、来て」
安心したように表情を綻ばせるなり、リクの手を取る。
すると、そのまま入り江に向かって身を投げた。
「へっ…?」
突然の事にリクは理解が追いつかないまま、引っ張られるように崖から落ちる。
「うわあぁ!?」
思わず悲鳴が上がると、リリィと共に入り江に飛び込んだ。
二人は知らなかった。この一連の様子を、オパールが物陰から寂しそうに見ていたのを…。
何の準備も無しに水の中に飛
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