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第六章 三剣士編第一話「沸き立つ心」



 カミの聖域での決戦はいよいよ後半へと移る。
 奪還戦の果てにあるものは何だろうか。それぞれの意思を束ね、箱舟に乗せ、銀河の夜空を進む。
 目指すは第一島――カミが坐す島へと。



 アイネアスの一声と共に箱舟モノマキアは第一島へと向かい始めた。
 しかし、その進行を阻むように第一島の方から無数の黒い砲弾がモノマキアへと襲い掛かってくる。

「!」

 黒い球体―――それらが攻撃と、アイネアスが気づき、言葉を発する前に船から飛び出した者たちがいた。飛び出した男はその身を巨大な黒竜へ、女は白い龍が発動した赤と青に輝く魔法陣が砲撃を防ぎ、散らす。

「――敵は一人のようだな」

 黒い竜―――ゼロボロスは攻撃してきた彼方に居る人物を見据え、判断する。
 攻撃をしてきた者―――黒い鎧を実に包み、身の丈より桁はずれな砲身が左腕と一体化し、右手には白い剣を掴んだ少年。

「あれは、兄さん…!」

 操作室に映し出された映像から捉えた少年を一目で皐月とアビスは理解し、その名を呟いた。
 未だ敵として対峙する苦悩を浮かべる二人に、ハオスは一瞥し、特に気取られぬ事無く操作室から静かに出て行った。

「あれが、睦月」

 「ハオス」として彼を見るのは初めてなのに、何故か覚えている。そう、皐月やアビスのときもそうだった。初めて見た人たちなのに覚えているという事が不可解だった。
 でも、自分は二人である事を思い返すと納得してしまう自分が居た。

「―――よし」

 会ってみたい。ハオス・ネクロノミアとして。
 その思いを抱いたまま、モノマキア上甲板へと駆け出していった。


 時同じく、ゼロボロスとヴァイロンは睦月と応戦している。細かく言うと、彼女はモノマキアで結界を守り、睦月と対峙していた。

『ちっ、邪魔はさせねえよ―――ッ!』

「……」

 竜の姿をしたゼロボロスは牙を生やした口から放った黒い炎弾の礫を睦月が繰り出した砲火で打ち消し、更に撃ちだす。
 瞬時に人の姿で攻撃を潜り抜け、睦月へと殴りかかる。黒く染まった鉄拳の一撃を片手の剣で防いだ。だが、弾かれる前にゼロボロスは打ち込んだ拳を黒炎で渦巻かせ、押し飛ばすように殴りぬける。

「――」

 飛ばされた睦月は虚空で制止し、巨大な砲身を縮小化して、その砲口を向けたまま、果てまで射抜く光の塊を放射する。

「くっ―――!!」

 その勢いはゼロボロスを呑み、貫く勢いで奥にあるモノマキアを襲う。
 幸いにもヴァイロンの展開した魔法陣が青く明滅し、放射された光を防いだ。魔法陣が放射した光を打ち消し、その中には全身を丸々、黒くなった彼がいた。
 彼は咄嗟にその身を黒く染めた能力『黒化』による肉体強化の一種だ。間に合わなければ別の意味で黒く染まっていただろう。

「うおおおおりゃっ!」

 すかさず黒炎を爆風で吹き飛ばし、一気に睦月の懐へもぐりこんだ。細身になった砲身、開いた片手で剣を振るう間も与えず。
 黒炎の鉄拳が腹部へ打ち上げ、銀河の夜空へと舞い上がる。ゼロボロスは次の一手を打ち込もうとしたその時だった。



 少し時間を遡る。ハオスは上甲板へと駆け上がり、ゼロボロスと睦月の戦闘を見ていた。
 心から湧き上がる感情のままに、すぐにでも飛び出そうと思っていたが―――白き竜ヴァイロンがモノマキアを護るべく張り巡らせた結界がそれを奇しくも阻んだ。
 だが、彼は立ち尽くす中も心は、精神は、高ぶり始めている。止められない、とまるわけにはいかないのだ、と。

「ん? ―――ハオスじゃないか。どうしたんだ?」

 立ち尽くす彼へと不思議そうに声をかけたのは上甲板で待っていた神無だった。
 ふと、「操作室に居た彼(ハオス)がなぜ此処にいる?」と怪訝に心の内で思う。声をかけられたハオスはやっと振り向いた。
 気づいていないが、今の彼の表情はかなり焦った色を浮かべていたのだ。それが神無の不信感を加速させる。

「……」

 しかし、彼は何も応えずにいた。神無も歩み、肩に手をかけた。

「おい、大丈夫か?」

「―――っ!!」

 神無の手を振りほどき、突如駆け出す。全力疾走の彼を止めるものはおらず、突然の事態に上甲板から飛び出した。
 その行為に上甲板にいた誰もが驚愕し、言葉を失う。しかし、彼は奈落へ落下せず、空を歩くように走り出していく。阻むように展開している青い結界の眼前まで漸く立ち止まった。

『貴様! 何をしている!?』

 ハオスの突如の行為にヴァイロンが鎌首を彼に向けて、怒号のままに尋ねた。しかし、問いに彼は無情の眼差しで一睨みしてから、自分の手を見つめ返した。
 沸々と高ぶる心を理解し、「手にする」必要がある―――ハオスは深く念ずるようにまぶたを閉じ、瞑想する。刹那、空を掴んだと思われた彼の
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