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第六章 三剣士編第七話「戦闘 アバタール」


 薄暗い広間でもないのに、そこだけが深遠の闇と同じくらい暗い影が起き上がるとともに口を開いた。傲岸な少年の声、紛れも無く裏切りの半神アバタールのものだった。
 振り向いて半神たちへと晒したその姿を、半神たちは言葉を失った。驚愕、愕然と満ちた顔をアバタールへ向け、その視線を壊れたような半笑いを零した。
 今の彼の半身は黒い異形に侵蝕され、実体を持つ異質な不定形となっている。辛うじて残された半身たる生身でその手に神器『クサナギ』を、周囲に漂う無数の勾玉――神器『八尺瓊勾玉』――がアバタールであることを証明していた。

「アバタール。母は無事なのか……?」

 アルカナの問いかけに、アバタールは笑みを作った。此処まで狼狽とした兄弟たちの姿は愉快極まる。
 ゆっくりと異形の片手で指差すほうに、最奥にある玉座へと上るようにある階段の果ての玉座に腰掛けたまま、Sinの呪縛による眠りについているレプキアがいた。

「……!!」

 最奥の広間へ辿り着いた半神たちの気配がただならぬ殺意が篭った憤怒へと変異する。しかし、憤怒に満ちた眼光は血走らず、冷静に、静寂とした眼差しで武器あるものは武器を手に握り締める。
 アーシャは非戦闘ゆえに後ろへと数歩、アバタールから背を向けずに下がる。例え、攻撃の対象となった場合は『仕込んでいる術式』が作動し、不備は無い。

「さあて……朕を退いて、母を救いああああああああっ!!?」

 不敵に笑うアバタールの言葉を遮るように蒼い爆炎の礫が飛来し、爆ぜた。そう、四属半神の炎――ブレイズが不意討ちの一撃をぶつけたのだ。
 いまや、彼らの思考に『せめて同属の手による死こそ有情慈悲』と、攻勢を仕掛けた。
 その身を蒼炎に焼かれながら悲鳴をあげ、身悶える彼にアルカナ、アルビノーレ、ディザイアが不可視の刃、紫光の雷槍、鋼鉄の鉄拳を打ち込んだ。

「っ―――!」

 迫る3人の一撃を不定形の左腕が防壁のように広がり薄れ、囲いこんだ。そして、攻撃を全て防ぎきった――が、頭上から輝きが強まる。
 仰ぐと頭上には蒼炎を纏ったブレイズの放った蒼い膨大な炎熱の奔流がなだれ込む。彼を飲み込もうとした瞬間、巨大な鏡が突如、現れて、炎を受け止めるた。
 否、鏡の内側へと呑まれて行く――アバタールの持つ神器『八咫鏡』であった。

「くそがあ!!」

 鏡の内側へと吸収された蒼炎は無数の礫となって放出される。中空へ舞っていた彼女へと迫るが、剣風を纏い振り払うことで被弾を全て防ぐ。
 異形の腕は不定形から剣の形をなして、アルカナたちへと枝分かれて斬りかかった。

「そこまで堕ちたか……アバタール!!」

 剣の攻撃をいなしながら、アルカナの失望に似た怒声と不可視の一閃が放たれる。
 体を引き裂く斬撃、彼の言葉に、アバタールは微かに表情が揺らぎ、後ろへと下がった。斬られた箇所から血が止め処なく流れる。

「っ」
 
 それを見つめるにつれ、思考を耽る。
 ―――母へと刃向うことになり、兄弟たちと敵になって、彼女の同胞として身を落とした。
 朕はカルマに従属し、深き罪人であろうか? 朕は死するべき存在へと堕落したのか?
 い、…なァ……否、朕は………朕は―――――

「はぁ―――ハハハハハァッ!!!」

 魂が軋み上げる凶悪な叫びにも似た狂い嗤いを上げ、左半身の異形がその身を呑み込む。尚も声は絶えず消えず、黒い異形は蠢動を繰り返し、
 異形は確固たる人型へと変貌を遂げたのであった。かつての少年の面貌も姿も無く、禍々しく黒い魔人は3つの神器もその身に『沈め』、新たな得物が彼の躰より具象化した。
 それは黒い太陽を髣髴した魔剣。3つの神器を一つとなして魔神の武具へと変異した。

「……」

 異形に息を飲むも、臆する事はしない。半神たちは挑みかかった。
 しかし、それよりも圧倒的な速さでアバタールは間合いを詰め、魔剣の一振りが奔る。

「っな――………!!」

 血色の眼光が最初に捉え、魔剣の狙いが定まった。
 瞬速の一閃がアルカナに走り、鮮血を噴き上げる。さらに、アルカナは痛みだけではなく途方もない虚無感が全身を這いずり回る感覚を感じた。
 困惑し、思考する間もなく崩れる。次なる兇刃の獲物は、ブレイズであった。獣の咆哮を上げながら、彼女へと魔剣を振り下ろす。だが、ブレイズはその殺意を直感し、アルカナのように受け止め、流す余裕があった。

「くっ……!」

「ブレイズ!」

 アバタールの魔剣の攻撃は斬りつけるというよりは叩き潰すような雑な斬撃であった。しかし、その一撃一撃が壮絶なのは変わりない。
 魔剣の剣圧を耐え凌ぎ、反撃の一撃とアバタールへと迫るアルビノーレの挟撃が逼る。が、魔剣手繰るアバタールはまず背後から突き刺そうとした彼を無数に枝別れた異形の
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