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第六章 三剣士編第十話「神理と代行体」

「…ここに、何かあるの?」

「―――始源の時、セカイは生まれ、セカイより任されたモノ。
セカイはこれを『神理』と称し、『神理』は己の身から世界を『創り』、『壊し』、『維持、模倣する』三柱の半神を生み出した」

「…………!?」

 おかしい。
 レプキアはアーシャの独白に途方もない違和感を抱いていた。それは自分の行った行為と『違いが生じていた』のである。
 確かに、レプキアは最初の存在として生まれ、セカイを任され、二柱の創造と破壊を産み、世界を創り、壊しの繰り返しを行ってきた。アーシャはその二柱の叛乱に遭う前に産みだした『権能のない半神』のはずだ。
 なら、アーシャが打ち明けた『維持』と『模倣』を権能とした半神は誰だ。『神理』とは、何のことだ。

「だ、誰なのよ―――――『維持、模倣する半神』は………!?」

「――――」

 未だに彼女に背を向けていたアーシャが静かに振り向き、素顔を隠した黒布を脱ぎ捨てた。
 とある事情から人と真正面で会話すると赤面する奇妙な病にわずらっている筈の面貌に赤みは無く、血の気すら引いている冷血かつ無表情の彼女はしれっと、口火を切った。

「私ですよ、レプキア。
 私こそ始源の時より『神理』より産みだされた『維持』と『模倣』の半神――――真の名はヴェリシャナと申します」

「なっ…!?」

 言葉を失い、愕然とするレプキアにアーシャ――ヴェリシャナは当然の反応だろうと思っていた様子で失笑を浮かべた。しかし、その笑みはすぐに消え、再び歩き出す。
 レプキアも慌てて追いかけ、再び玉座へと続く階段の前で立ち止まる。

「此処―――聖域レプセキアに浮かぶ5つの神殿は……半神ベルフェゴル、ラムリテの二柱に作らせた事は覚えてますよね?」

「え……ええ。神殿を造る以前は『何もなかった』わ」

「――いえ、『在った』のです」

 ヴェリシャナの断固とした言葉に、呼応するかのように玉座へと続く階段が音を立てて、開かれていく。レプキアは隣へと駆け寄り、覗き込んだ。
 分かたれた階段の下、深い闇へと続く階段が続いており、その奥に白い扉があった。その深淵に扉がある事などレプキアの記憶にはないことだった。

「この先は神殿が出来上がる前までは不可視、不可侵の薄い膜を張り巡らせ、神殿の建設の折に覆い隠すように仕向けたのですよ。―――さあ、来てください」

 ヴェリシャナは躊躇なく深淵へと続く階段へと踏み込み、降りていく。レプキアもいつの間にか必死に彼女を追うように降りて行き、もう後戻りが出来ない事を悟った。
 知らなくてはならない。自分が何であるのかを。識らなければならない。『神理』が何者であるかを。階段を降り、白い扉は二人を迎えるように開かれた。
 彼女の足取りは迷い無く、歩調を変えずに進みだす。離れずに、慌てて彼女もついていった。


「アー―ー…ヴェリシャナ、貴女に一つ聞きたいわ」

 扉の向こうの世界は虚空に染まった銀河。立っているのか、浮いているのか、感覚が狂う中もヴェリシャナの歩は変わらず、苦戦していたレプキアも慣れた歩調で問いただす。
 一方の尋ねられた彼女は歩を止めず、振り返りもせず、無言のままに肯定した気配があった。

「私は…………貴女の言う『神理』なの…?」

 確信が持てない。今までの言動を総じてしまうと、自分は彼女の母では無いのではないか。
 『神理』ではないのではないか。では、自分は何者なのだろうか。
 セカイから生まれた『自分は神理ではないのか』。

「――――」

 すると、唐突に彼女の歩は止まり、漸く振り向いたのであった。
 見せた表情は一層鋭く、彼女は言葉を淡々と紡ぐ。

「ええ、でも『神理』という位置にはありますよ。ただ、『それだけ』です。
 この先に行けば解りますよ。―――『神理(あのヒト)』というものが、何であるか」

 ヴェリシャナの言葉と共に歩を再開した二人。虚空の道を進みながら、彼女の言うとおり『果て』が見えてきた。
 虚空から純白の領域へ、不可思議な空間に入ったレプキアは空間の中心にあるモノに愕然とした。一方のヴェリシャナは歩をやめず、中心のモノの手前で立ち止まる。
 レプキアは愕然としながらも、その歩調が再び本人の意思に関係なく動き出す。体が『あれ』の元へと向かわなければならないと叫んでいるように思えたから。




「ッ―――何なのよ―――これ……!?」

 中心へと踏み込み、眼前に在るそれは巨大な水晶のような青い空色の球体。
 その中に一人、長い黒髪をした絶美の女性がいた。深い眠りについているように二人の気配も気づかず、身を丸くしたまま眠りに耽っていた。

「あぁ……久しゅうございます……我が母よ……!」

「!?」

 冷淡な表情しか浮かんでいなかったヴェリシャナ
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