アルカナたちは会議の後、モノマキアから降りた二人を捜索することになった。幸い、二人が神殿へと向かった様子をゼロボロスが見ていた為、何人かで神殿へと捜索していた。
そうして、最奥の広間でも居ないと想い、諦めて戻ろうとした時だ。突如、中心から扉が出現し、中から絶美の女性とアーシャことヴェリシャナが姿を現した。
そして、彼女が半神たちの母であった『レプキア』の本来の母『ユニテ・イリアドゥス』であることを打ち明けられ、詳しい話をモノマキアで話す事となった。
「……」
再び、会議として利用していた操作室では半神たちは愕然とした表情のまま、言葉を失っていた。
ヴェリシャナと、イリアドゥスの話を全て聞いた半神たちは自分たちも「偽物」という事に戸惑い、ざわざわと騒ぎ出す。
その事態を予め理解していたイリアドゥスは凛とした声で彼らと話を続ける。
「―――貴方たちはヴェリシャナと同じ『半神』よ。レプキアの肉体は私の体だったから……本物、よ」
諭すように説得し、彼らのざわめきは鎮まっていった。
ひとまず、無用の混乱を避け、安堵の一息を吐いてからイリアドゥスは話を続けた。
「私が目覚めたのは、カルマを倒す手段の一つということでいいわ」
「一つ、伺いたい」
動揺隠しきれない半神たちの中から挙手したのは彫りの深い長身の男性――ビラコチャであった。彼は普段から表情を崩すことが少ない人物だ。
そんな彼が最初に質問する事に誰も阻む者は居ない。妥当といった様子で落ち着いていた。
「仮にカルマを倒し、事件を終息させた場合―――貴女はどうなさるので?」
厳格な問いかけに落ち着きの在る表情のまま、彼女は答えた。
「消えて失せるとでも? 本来の体に本来の心と魂が戻っただけ―――さあて、この船の中でも歩き回ろうかしら」
既にこの部屋での記憶回収は終わらせていた。船内にいる者たちの情報も得ようと彼女は話を切り上げて、部屋を出て行った。
取り残された半神たちであったが、向く視線は一人へと注ぐ。そう、今の今まで自分たちを欺き続けた半神アーシャ、否、『ヴェリシャナ』へと。
一人、モノマキアの廊下を歩く女性――ユニテ・イリアドゥスは部屋にいるであろう彼らの記憶を求め、進んでいく。突然、部屋に女性が入ってきて頭に手を置かれ、何をするわけでもなく適当な挨拶で部屋を出る。
あるいは青色の影の手が頭を掴んで、すぐに何事も無いように適当な挨拶で済ますかのやり方で船内を歩き回っていった。
そんな彼女の行為をとめる者は居なかった。というより、呼び止める前に失せてしまうのだ。交流を深めるのは至難であろうと彼らは思った。
「おい、貴様」
船内巡りを終え、いよいよ上甲へと上がりこんだイリアドゥスへ声をかける凛然とした声の女性が居る。赤と黒の着物に似た装束を身に纏った茜色の瞳と髪をした容貌、人の気風を感じられない。
だが、イリアドゥスは動じる起因はなかった。既に船内には人間を初めとした何百年も生きている旅人や人の姿を化生した龍、悪魔などの記憶を手に入れていることもあった。
声をかけた女性へと歩み寄り、呼び掛けた理由を問うた。
「何かしら」
話しかけられたイリアドゥスは小さく首をかしげて聞き返す。だが、そんな態度とは裏腹に既に影から蒼い手を潜ませていた。
「貴様が神というものか」
「神、ねえ」
凛那の言葉にイリアドゥスは眼を細める。自分という存在は神として能うものの、レプキアの記憶、アーシャの記憶から「もはや神として座す」意味は無用の長物と受け入れていた。
もはや、己はただの「原型」、あるいは「全なる一」。ユニテ・イリアドゥスでしかなかった。
「―――私は私よ。ユニテ・イリアドゥスという一つの生命体、存在だから」
「覚醒した理由も聞いている。……一合、見えたい」
言うや否や、火炎が舞うと共に茜色の魔刀が彼女の手にあり、構えを作ってはいないが隙のない威圧と姿勢をとる。最初からこれが目的だったらしいと、思いつつイリアドゥスもそれに応じた。
「そう…………」
凛那は鋭い視線を彼女へと向ける。様子、動向を伺う目星で、好戦的な表情、嫌がる拒絶も一切含んでいない無表情を理解した。
更に片手を伸ばし、虚空より蒼き輝きと共に己に相応しい剣を抜き取る。それは一切を澄んだ蒼に精錬させた直剣。直剣の柄を掴んで、切っ先は下ろしているのであった。
「いいわ。かかってきなさい」
「………」
凛那は息を殺し、構えた。相手の憮然の態度、挑発は気にも留めない。
狙いを一点に力を込め、上甲板の床を蹴飛ばす。同時に刀身に炎渦巻き、斬りこんだ。
至近を赦し、振り放った一刀をイリアドゥスも応じるように剣を抜き放った。
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