操作室では重々しい空気が満たされていた。誰もが複雑な色の視線を一人の少女へと向けていた。
永きに渡って自分たちをだまし続けていた正真正銘、最初の半神の一柱――――アーシャ事ヴェリシャナへと。
一同の視線を受けているヴェリシャナ既に顔をとある事情から素顔を隠し続けてきたが、今は一切の赤色は無い冷厳さすら伺える厳かさを崩さない表情と口ぶりでアルカナたち半神たちへレプキアを作り出した過程、イリアドゥスのことを打ち明けた。
「……これが私が話しえる、全ての真実です」
「………聞きたい事がある……ヴェリ、シャナ」
歯がゆく彼女の名を唱えたのは半神たちのまとめ役だったアルカナだ。
「何でしょう、アルカナ?」
冷厳な表情は崩さずにヴェリシャナはアルカナへと視線を向ける。
向けられたアルカナは己を抑えるように声を荒げぬように落ち着いた声音で問いかける。
「かつてのイリアドゥスの精神体を模倣し、空の肉体に収める。それにより『レプキア(代行体)』がなされたのは解った。だが、反逆をあった上で、お前の改ざんをした上で――――なぜ、我々を生み出した……!?」
「確かに。ヴェリシャナが「模倣した」のであらば、改竄した上での半神創造は大いに不可思議な疑問だ」
「この問い、答え次第でレプキアの為に命を賭したディザイアが報われない……」
アルカナの問いに賛同の意を示したのは半神キルレスト。レプキアという母を越える存在を『作りだす』と決意し、永い月日の末に完成したとある少年の作り手としてその真実はあまりにも虚しいことだった。
だが、キルレストは至極冷静に、自分の意見よりアルカナの疑問を優先して言葉を発した。続けて、抑えたような悲しく呟いたのはブレイズだった。
半神の中で高い戦闘力を持つ4人『四属半神』の一人として、先の戦いではまともに戦えず、地に伏したまま決着を見届け、ディザイアの死をその眼に刻み付けた彼女の表情は悔しさを噛み殺した険しいものであった。
冷厳な表情は僅かに苦い色を見せる。その表情に半神キサラが見逃さなかったが、口にはしなかった。
(今思えば、船内で見せたあの非情な態度―――あれがある意味、『本当のアーシャ』……いや、『ヴェリシャナ』でしたわね)
先の戦闘で、戦う事への恐怖に震える自分へ放った冷徹な態度と言葉。
それは母を想うがあまりに暴言を吐いたものではなく『真実』を知るが故に、浮かび上がった本性だったのだとキサラは感じ取っていた。
だが、それでも真実を聞いた今は彼女への、怨嗟も不快も怒りもなかなかどうして、無いのだ。そうである事を事実として受け入れてしまったのだとキサラは口をつぐんだ。
そして、問いかけに表情を苦くしていたヴェリシャナが口を開いた。
「……私も、最初はあの反逆以降は半神は生み出すはず無いと想っていたわ。でもある日、突然、『半神を創るわ』といってアルカナ(運命)を、次にキサラ(光)とダークネス(闇)―――こうして多くの半神を作り出された。
アルカナを生み出す直前に聞いたわ。『なぜ、生み出すのか?もしかするとかつての反逆がまた起きてしまうかもしれないのに』と」
確かにそう。でも、今想えばあの子達と居た時間は幸せだったわ。
……本当に、ね。これからは、無闇に世界を壊さない……いいえ、身勝手な振る舞いはしないって誓えるもの。同じ轍は踏まないようにするわ……こんな私は『愚かな神』かしらね
「―――信じてもらえないだろうけど、これまでの日々は私にとっても幸せな日々だった。貴方たちを結果的に騙し続けたけれど……」
「もういい」
そう短く断じたのは厳格な表情を崩さない半神ビラコチャであった。捉え難い無骨な表情は怒りでも、軽蔑でもない物悲しげな色があった。
「我々の慕う母は結論、同じだ。レプキアであり、ユニテ・イリアドゥスだ。
寧ろ、ヴェリシャナ――貴女の方こそよく此処まで話してくれた。欺いてきたのは我々、何よりも――貴女が何よりも想い続けた母であったことだろう」
「……」
レプキアに対して懐いていた感情は複雑だった。しかし、徐々に本当に想い、信じていた、愛していた。いつの日か、イリアドゥスを目覚めさせる事になっても。
ヴェリシャナは静かに頷き返して、顔を俯ける。不意に湧き上がる涙を見せたくなかった。
「―――話すべきことは話した。私はもう何も言わない」
ビラコチャはそう言って、口を閉じる。その様子を見たほかの半神たちも遅れて声を上げた。
赦しを得たヴェリシャナは立つ気力を失ったのかその場に座り込んで泣き崩れる。傍に居た半神セイグリットが優しく寄り添う。
「あたしゃあ驚いたけど、怒ってないわよ。立てる?」
「……返す言葉が無いわ」
赦しを
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