「――そして、私達は再び次の世界に旅立ちました…と」
サラサラとペンを動かし、膝の上に乗せた分厚い日記帳に綺麗に文字を書き込む。
やがてペンを止めると、本を閉じてペンと一緒に傍に置いてある道具袋の中にしまい込む。
それから立ち上がって砂を払い、前を見る。そこには、夕日が海に沈んでいるのか光が反射してオレンジ色に染め上げている。
この景色を砂浜から眺めていると、後ろからテラが近づいて声をかけられた。
「レイア、終わったのか?」
「ハイ! …すみません。私の我が侭の為に、旅を一時中断してしまって」
「いいさ。俺も久々に、この世界に来たかったからな」
謝るレイアに優しく言うと、テラも目の前の海を見る。
回廊での移動の途中、レイアが少し休憩しないかと提案してきた。そこで、テラはこの世界―――『ディスティニーアイランド』を思い出し、ここで休息を取る事にしたのだ。
そうして辿り着くと全員は自由行動を取り、レイアは日課だった日記をここで纏めて付けていた。
そして今、する事もなくなったレイアはおずおずとテラに話しかけた。
「あ、あの…テラさんっ! もう少しこの世界に居ても大丈夫…ですか?」
「俺は別に構わないが…」
「いいだろ、それぐらい。ほれ、言って来い」
聞きなれた声に、レイアは嬉しそうに後ろに目を向ける。
そこでは、クウが笑ってこちらを見ていた。
「ありがとうございます、クウさんっ!!」
お礼を言うと、すぐさま砂浜を駆け出して行くレイア。
二人は姿が見えなくなるまで見送ると、テラがある事に気づいた。
「クウ、無轟は?」
「オッサンなら、あっちで寝てる。この世界に留まるなら、少し休眠するって言ってよ」
後ろに指を差して教えると、クウは前を見て黄昏に光る海を眺める。
同じようにテラも隣で見ていると、クウがコートのポケットに手を入れて口を開いた。
「…静かな所だな、この世界は」
「ああ…ここは、初めてあの子達に会った場所なんだ」
「あのガキの事か? 確か…リクって言ったっけ?」
「ソラともな…ただ、接触したのはリクだ」
そう言うと、クウに説明するようにテラはこの世界での事を思い出した。
「クウや無轟と会う少し前だ……俺は自分の道で迷って回廊を移動していると、あの子の持つ光がこの地へと導いた」
さまざまな世界を巡り、闇と向き合う方法を探している途中でこの世界に辿り着いた。
まるで運命のように出会い、純粋な彼の思いに心を打たれた。
「あの子のおかげで、俺は本来の道を思い出した。だから、キーブレードの継承を行なったんだ」
『大切な人を守る』―――純粋なこの言葉のおかげで、大事な事を思い出せた。
そんな彼に可能性を感じ、キーブレードを継承した。何時か外の世界に出て、大事な事を教えられるようにと。
そこまで思い出すと、不意にテラが顔を歪ませる。
「だが、あの子は俺と同じように闇を宿している。結局、俺は光を闇で染めてしまうのか…?」
この未来で再会した彼は、自分と同じく闇を宿していた。あの時は暇が無かったが、こうしてゆとりを持って思い浮かべると不安が過ってしまう。
自分の所為で、リクが彼らと離れる事になるかもしれない。もしかしたら、道を外してしまう事になるかもしれない…今の自分のように。
そんな考えと共に掌を見て顔に絶望を浮かべるテラに、クウはゆっくりと前を見ながら口を開いた。
「――純粋が故に、何色にでも染まる。光と闇、善と悪にも」
「え?」
「…セヴィルに言われた言葉だ。一応、教えて貰った身だからな」
何処か居心地が悪そうに顔を歪めるが、すぐに真剣な表情に戻して話を続けた。
「純粋な思いは、とても眩い光―――言わば、白。そして白は何色にでも染まり、色同士が混ざる事は無い。だからこそ、何にでも染まってしまう。光が闇に染まるように」
淡々と話すクウに、テラは顔を俯かせてしまう。
そんなテラに、クウは一旦言葉を止めると何処か穏やかに笑いかけた。
「だけど、闇に染まったからと言って悪になるとは限らない。周りにいる人が闇でも善を宿すなら……善に染まるんじゃないのか?」
「クウ…」
「お前だって、今は俺達がいる。あいつにも周りの奴らがいる。だから、少しは信じろよ」
「…そう、だな。ありがとう、クウ」
強気の笑みを浮かべて肩を叩くクウに、テラも自信を取りもしてお礼を述べる。
これにクウは恥ずかしそうに顔を逸らすが、黄昏の海を見ると頭の後ろに腕を組んだ。
「ま、実際どうなるかは自分次第ってとこだな。大丈夫って思ってても、いつの間にか道を踏み外してたり、人に騙されたりしてたって事もあるからさ…」
「分かった…気を付けるよ、クウ」
テ
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