地平線に沈む夕日に照らされた、オレンジ色に輝く海。
その景色を、ある人物が横に伸びるように生えた大木の幹に凭れかかって眺めていた。
「本当に、ここは変わりませんね…」
しみじみと呟くと、風が吹いて顔を隠すように巻いた布や白いコートが靡く。
やがて、夕日から目を逸らすように顔を下に動かし、片手を広げじっと見つめる。
「もう少し…もう少しで、全てを取り戻せる…」
カミでさえも叶えられなかった願い。それが、果たされようとする所まで来ている。
かつて犯した罪を背負いながら世界を巡り、一つの希望を信じ世界の敵となった。
彼女に荷担した事は無駄ではなかった。それでも、彼の脳裏に一つの言葉が浮かぶ。
「絶対、言うのでしょうね……『こんな事は止めろ!!』って…」
何処か自傷気味に呟くと、再び前を見て海に沈む夕日を見る。
「――そうでしょう…“ソラ”」
そうして言葉を紡いでいると、こちらに近づく様に後ろから足音がする。
ゆっくりと振り向くと、丁度近づいていたレイアと目が合う。すると、肩を震わせて足を止めた。
「あ、あの…! す、すみませんっ!」
「どうして謝るんですか?」
「え、えっと…その…!」
しどろもどろにするレイアの様子に、思わず男性は苦笑してしまう。
突然笑った所為か更に困ったように動揺するレイアを見ていられなくなり、苦笑したまま手招きした。
「落ち着いて。さ、ここにでも座ってください」
「は、はい…」
男性に言われるままに、レイアは木の幹に上って座り込もうとする。
それを男性も手伝って上手く登らせると、木の上に座ったレイアが夕日を見て顔を綻ばせた。
「綺麗…!」
「そうですね…いつ見ても、変わらない」
レイアに同意するように男性も身体を幹に寄り掛って頷く。
すると、レイアが不思議そうにこちらに振り向いた。
「えっと…ここに、ずっと住んでいるんですか?」
「違いますよ。ここにはちょっと野暮用でね」
「野暮用?」
さらにレイアが聞くので、男性は夕日を眺めながら話を始めた。
「この景色は、ある人に教えて貰ったんです。そこに生っている木の実の伝説と一緒にね」
「どんな伝説ですか?」
「その実を食べさせ合った二人は、必ず結ばれる。どんなに離れていても、何時か必ず――…繋がりの契りとしての伝説です」
「素敵な伝説ですね…――もしかして、あなたも大事な人と食べさせ合ったんですか!?」
パオプの実の伝承を教えるなり、レイアはこれでもかと目を輝かせる。
それに感化してか、男性は若干苦笑しつつも何処か照れながら話を続けた。
「ええ、まあ…ある人と付き合っていたんですが、どうにも関係が恋人以上にいかなくて…――見ていれなくなったのか、あるお節介がこの実を押し付けて食べさせたんですよ」
「はうぁ…本当に素敵です! それで、その人と結婚したんですか!?」
「はい。結婚して、子供も出来て……本当に、幸せだったのに…っ!! あいつの所為でぇ!!!」
嬉しそうに語っていたの一変させ、男性は拳を作って木の幹を殴りつける。
そうして怒りを露わにして息を荒げていたが、ハッと我に返ってレイアを見る。
レイアはこちらを見ながら青い顔をして震えている。この怯えた表情に男性はすぐに頭を下げた。
「す…すみません、取り乱してしまって…」
「い、いえ…私こそ、すみません…」
お互いに謝ったおかげか、二人の間で張り詰めた空気が解けていく。
その空気の中、レイアはゆっくりと顔を上げて目を合わせた。
「あ、あの…不躾な質問ですが…――もしかして、その…」
レイアが全てを言う前に、男性は顔を逸らすように背を向けた。
「あなたも覚えておくといいですよ。例え、契りを交わして結ばれても…何時かは別れが訪れる。必ず、ね」
「別れ…」
何を思ったのか、レイアは表情を歪めて胸を押さえる。
不安で一杯になったのか今にも泣きそうにするレイアに、男性は布越しに小さく笑いかけた。
「不思議なものですね。あなたとは初めて出会ったのに…――こんな事を話してしまうなんて」
「そうなんですか?」
「もしかしたら…――あなたと私は、『同じ』だからですかね?」
何気なく呟いた言葉に、レイアが大きく反応を示した。
「あ、あの…!! それって――!?」
「ただの独り言ですよ。では、私はこれで」
「ハ、ハイ! 私も、クウさんやテラさんの所に戻らないと…」
パオプの木から降りながら呟いたレイアの言葉に、小島の中央に向かっていた男性の足が止まる。
その状態で、低い声でレイアに問いかける。
「…今、何と言った?」
「え?」
思わずレイアが聞き返すが、その声を無視して振り返
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