「『フォール・テレポ』」
真上から聞こえた声に全員が頭を上げる。
何も無かった筈の虚空から、ダブルセイバーを構える煤汚れたエンの姿が現れる。
その切先が向けるのは、真下にいるレイア。
「レイアァ!!」
考えるよりも先に、クウがレイアを突き飛ばす。
それと同時に、落ちてきたエンの持つ刃に背中を切り裂かれた。
「がはぁ!?」
「クウさん!?」
クウに突き飛ばされて砂浜に倒れ込んだレイアが悲鳴を上げる。
しかし、レイアの心配とは裏腹にクウはどうにか踏み止まると拳を握り込んだ。
「さっきから、少女狙うなんて…男としてなっちゃいねーなぁ!!」
その叫びと共に、一気に拳を目の前にいるエンに突き出す。
しかし、エンはダブルセイバーを盾にして刃の腹の部分で拳を防御した。
「カウンターで攻撃。妥当な判断でしょうが――」
ここで言葉を止めるなり、武器を振って思いっきりクウを弾き返した。
「爪が甘い。『ファイガ』」
素早くエンが手を振るうと、クウの足元に炎が集約して巨大な火柱となって噴き上がる。
巨大な炎によってクウは宙に舞うように吹き飛ばされると、やがて砂浜に激突するように落ちた。
「ぐぅ…!?」
「いやぁ!! クウさんっ!!」
「レイア、駄目だ!!」
思わずレイアが駆け寄ると、すぐにテラが止めようとする。
しかし、その時にはエンはレイアの前に躍り出てダブルセイバーを上に構えていた。
そうしてエンが振り下ろすが、間一髪で無轟が割り込んで互いの刃をぶつけて防御した。
「無轟、さん…」
「呆けるな!! 二人ともクウを回復しろ!!」
「ハ、ハイっ!!」
無轟の指示に、レイアだけでなくテラも倒れるクウに駆け寄って癒しの光で包み込む。
二人が『ケアルガ』を使うのを無轟が確認していると、鍔迫り合いの状態でエンが笑いかけた。
「…先程よりも、随分と立ち回りが乱れていますね? 人と共に戦った経験が少ないようで」
「今まで一人だったものでな…だが」
柄を握り込んでエンを弾き飛ばすと、刀を振るい燈した劫火を振り払う。
辺りに出来あがった舞い散る火の粉を確認すると、無轟は呟いた。
「爆ぜろ」
その呟きと共に、火の粉が拡散するように爆発する。
無轟すら飲み込む紅蓮の波濤に、エンも防御が間に合わずに巻き込まれる。
やがて炎が消えると、ダメージを負ったのかエンはよろめきながら無傷の無轟を見た。
「今のは…?」
「『烈火・緋の花』。あいつらが離れたからこそ、使える技だ。さあ、続きと行こうか」
再び刀に炎を纏う無轟に、エンは武器を握りながらも目を細くした。
「その強さ故、仲間が周りにいないから戦える――…一見すれば、彼らを足手纏いと認識させる行動。だけど、それはあなたなりに彼らを大切に思っている証拠でもある」
何処か冷静に分析するエンに、無轟は顔を訝しる。
そんな事を知ってか知らずか、エンはゆっくりとダブルセイバーの切先を向け、言った。
「なら、彼らを狙えばどうなります?」
「何っ!?」
思わず後ろを振り返ると、三人のいる場所からエンまで丁度直線状になっている。
この事実に無轟が気づいた時には、エンは刃の切先に闇の力を溜めていた。
「『カラミティブリンガー』」
人を軽く呑み込めるほどの巨大な闇の球体を作り出し、無轟に向けて放つ。
ここで避ければ三人に当たる。そんな思考が過り、無轟は瞬時にさっきよりも炎を纏わせると闇の球体に斬り込んだ。
だが、闇の球体はまるで付着するように炎を纏う刀にくっついてしまい弾き返す事が出来ない。しかも、その状態で徐々に無轟に接近してくる。
「ぬ、ぐぅお…!!」
「っ! レイア、クウを頼む!!」
無轟の状態にいち早く気づいたテラは、回復を中断してキーブレードに魔力を溜めて上に掲げた。
「『クエイク』!!」
無轟が止めている闇の球体の下から、岩が勢いよく隆起して貫く。
だが、貫いた箇所は闇が蠢きながら塞がれていく。しかも、威力も落ちていないのか未だに弾き返せない。
「まだ威力が弱まらないだと…!?」
「こうなったら、俺も一緒に――!!」
「来るな!! ここは俺一人でやる!!」
「だけど!?」
「テラさん、無轟さん…!!」
この二人の様子に、レイアも歯を食い縛りながら顔を俯かせる。
そうして視界に映ったのは、苦しそうに癒しの光に包まれているクウの姿。
(私に…私にもっと、力があったら…!!)
彼を怒らせなければ、説得が出来たら、あの攻撃に気づけたら。そう考えれば、こうなったのは全て自分の所為だ。
なのに、さっきから守られてばっかりで攻撃さえも出来ない…いや、したくないとさえ思っている。だが、
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