目の前で、冷たく光る刃が迫る。
そんな中、今の自分はボロボロで地面に倒れている。これではもはや、避ける事さえも出来ない。
そうこう考えている内に刃が近づいて、切り裂かれる―――直前、小さな人影が入り込んだ。
「――止めてぇ!!!」
必死な叫びと共に、目を覚ましたのかレイアが両手を広げてクウの前に立つ。
予想もしない乱入にエンも目を見開き、刃はレイアの髪に触れるか触れないかの所で辛うじて止まる。
刃が止まったのを見て、レイアは顔を強張らせてエンを睨む。そんなレイアに、エンは氷のように冷たい眼差しを向けた。
「…どきなさい。あなたも消えたいのですか?」
「…嫌です」
レイアが否定の声を出すと、エンの瞳が淀む。
だが、それを押し殺すように先程よりもきつく言い放つ。
「どけ」
「嫌です…」
「レイア…!! 早く、にげ――!!」
「嫌ですっ!!! 逃げるぐらいなら、最後までクウさんを守りますっ!!!」
クウの声を無視して大声で叫ぶなり、レイアは目に涙を浮かべて顔を俯かせた。
「クウさんは、ずっと守ってくれたんです…!! だから、今度は私が守りますっ!!!」
この決意と共に顔を上げると、今にも泣きそうな表情でエンを睨む。
目の前のレイアを見て、何故か武器を握るエンの手が震える。だが、何処か憎しげに歯を食い縛ると一旦武器を横に引いて怒鳴りつけた。
「だったら、そいつ諸共――っ!!?」
レイアに向かってダブルセイバーを振り上げるが、突然エンが苦しげに胸を押さえてその場に崩れ込んだ。
「ぐっ…こんな、時に…!!」
「え…?」
何が起こったのか分からずレイアが目を丸くしていると、エンは『テレポ』の魔法を唱えその場から消え去った。
「引いた、だと…?」
「一体、どうして…?」
エンの行動に、クウと同じように倒れている無轟とテラも疑問を浮かべる。
その時、立っていたレイアが膝を付いて砂浜に倒れる。
どうにかクウが起き上ってレイアを抱きかかえると、顔色が悪く肩で息をしていた。
「レイア…!!」
「す、すみま…」
「バカ…謝るな…!!」
どうやら相当無理をして助けに入ってくれたようで、クウはそう言ってレイアを抱きしめる。
そんな二人に、テラも身体に鞭を打って起き上るとキーブレードを持った。
「二人、とも…すぐに、回復を…!!」
テラが回復の魔法を唱えようとしていると、急に身体の痛みが引いていく。
同じようにクウも傷が治り、レイアも顔色が少しだけ良くなる。思わず三人が無轟を見ると、こちらに空になった『メガポーション』の瓶を見せて苦笑していた。
「貴重な物だが…こういう時にこそ、使うべきだろうな」
「サンキュ…オッサン」
クウがお礼を述べると、無轟は『ハイエーテル』を取り出して軽く投げる。
するとレイアに魔法の光が宿り、枯渇した魔力が回復したのかゆっくりとクウの服を掴みながら起き上がる。
こうして回復薬を使って最低限の治療をすると、無轟は一息吐いて次の指示を出した。
「先に二人から回復してくれ。俺とクウはその後でいい」
「「分かった(分かりました)…」」
回復魔法を使えるテラとレイアが頷くと、それぞれ傷を癒したり無轟の炎で削られた体力や魔力を持っているアイテムで回復させる。
その間に、無轟は未だに座り込むクウを無理やり立たせると二人から離れる様に海岸へと歩いて行き、まるで押し付ける様に座らせる。
突然の行動にクウが訝しんでいると、無轟が屈み込む。次の瞬間、何とコートを脱がせてその下の黒いシャツを捲り出した。
「な…!? オッサン、何す――!?」
「いいから見せろ。その為にあの二人から遠ざけたんだ」
「…お見通しかよ…」
無轟の放った言葉に、クウは足を組んで横目になって呟く。
こうしてクウが大人しくなると、無轟は思いっきりシャツを捲り上げて背中を覗き込む。
そこにはレイアの回復魔法、そして今しがた使った薬でも完全に治っていないのか、赤黒く切られた痣が残っている。出来るだけ軽く触るが、痛みが走ったのかクウが表情を歪めた。
「いっつ!?」
「身体を張って守ったとは言え、無茶をしたものだな…よく最後まで戦えたものだ」
「…あの攻撃当たってたら、レイアはまず助かってなかっただろ? それなのに弱音吐いたら、絶対泣いて叩かれて説教される」
何処か居心地が悪そうに答えるクウに、無轟も苦笑を浮かべてしまう。
無轟は後ろに移動すると手に癒しの光を宿し、背中に怪我をしている部分に当てた。
「オッサン、『ケアル』使えるのか…!?」
「応急処置用に覚えたものだ。故に治癒力は弱いが、二人が終わる頃には十分だろう」
「回復魔法使えないのは俺だ
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