トワイライトタウンの商店街から離れた場所にある、とある建物の中。
少々狭いがキチンと整理された部屋の中で、ゼロボロスは一人机の上で数枚の紙にペンを走らせていた。
「――ふぅ…」
ペンを止めると、椅子の背に凭れかかり大きく背伸びをする。
ある程度身体を解すと、ゼロボロスは机の上に乱雑になったレポートを纏め始めた。
「趣味で書くレポートも、ここ最近は量が多いですね…」
トントンとレポートを叩いて綺麗に纏めながら、ふと思い出す様に呟く。
今までは、気ままに世界を巡る旅をしては光と闇のバランスを取るために差当りのない干渉で世界を均衡に保ってきた。しかし、アクア達と出会ってからはどうも自分が表舞台に立ってきているようにも感じられる。
しかし、今書いたレポートは重要な事項だけでなく、彼女達の旅の内容を客観的に見て書いているし、敵対する人物も纏めている。線引きはそれとなくしているつもりだ。
別に彼女達が嫌いな訳ではない、寧ろ旅は純粋に楽しい。だが、自分は世界を見守る【管理者】でもあるし、何より自分の中には未だに“奴”が潜んで――。
―――コンコン
物思いに更けていると、ドアがノックされる。
同時に、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「ゼロボロス、入るわよ?」
「はい、どうぞ!」
持っていたレポートを机に置いて声をかけると、アクアが部屋の中に入ってきた。
「アクア、どうしたの?」
「食事の時間だから、呼びに来たわ」
「ありがとう。もうそんな時間か…」
窓の外を見るが、相変わらず夕日によって空が赤く照らされている。
夜も朝も訪れない風景を眺めていると、ある事を思い出した。
「そう言えば、ルキルは?」
ゼロボロスの問いに、アクアは表情を曇らせそのまま首を横に振る。
この意味に、ゼロボロスもまた心配そうに顔を俯かせた。
「そっか…まだ…」
二人のいる部屋から、二つ分離れた所にある部屋。
そこで、ウィドは窓から外の景色を眺めていた。
「今日でもう三日…」
疲れたように呟くと、そっとカーテンを閉めて夕日の光を遮る。
そうして振り返ると、部屋の真ん中にあるベットに近づき横になって眠るルキルを見た。
呼吸さえも静かで、まるで固まったように微動だにしない身体。もう目覚めないのではと思う程、ルキルは深い眠りについている。
「ルキル…何時になったら、目覚めてくれるんですか…?」
眠るルキルの頭を優しく撫でながら、ウィドは彼を見つけた時の事を思い出し始めた。
テラ達と別れ、一人苛立ちながら駅前通りの坂を下りるウィド。
やがて路地裏に差し掛かった所で、後ろから追いついたアクアが声をかけた。
「ウィド、待って!」
「…ほおって置いてください」
「そう言う訳にはいかないよ。とにかく、少し落ち着いて――」
「あなた達に何が分かるんですかっ!!?」
ゼロボロスも一緒に宥めようとするが、ウィドは振り向くと大声で怒鳴りつける。
これに二人が怯んでいると、我に返ったのか居心地が悪そうに頭を下げた。
「す、すみません…」
「いえ…私も、少し口煩かったですし…」
思わずアクアも謝っていると、ウィドがポツリと呟いた。
「折角…」
そこで一旦言葉を切ると、何処か悔しそうに拳を握りしめた。
「折角、姉さんの手がかり見つけたのに……すぐ近くにあるのに、手を伸ばしてもまったく届かない…――これでは、何の為に旅に出たのか分かりませんよ…」
「ウィド…」
ゼロボロスが声をかけるが、すぐに口を閉じてしまい三人に沈黙が過る。
何年も前に行方不明になった姉―――スピカについて知る人物が現れた。なのに、一人は敵で、もう一人は味方であるにも関わらず何も教えてくれない。
何故、彼らはそうまでして教えてくれないのか…。
「ん…? 何か騒がしくない?」
その時、ゼロボロスが顔を上げて奥の方に目を向ける。
すぐに二人も耳を澄ませると、空き地方面の方が何やら騒がしい。
興味が湧いたのか三人が足を進めると、階段を下りた所で何やら空き地の一角に人だかりが出来ていた。
「サイファー。お前が何かした訳ではないんだな?」
「当たり前だ!! さすがの俺でも初対面の奴を気絶させたりはしない!!」
「そうだもんよ!! 屋敷の前まで見回りに行ったら、こいつが勝手に倒れてたもんよ!!」
「免罪御免」
その人だかりの中央で、一人の大人が三人の子供に確認を取る様に聞いている。
それにサイファーと呼ばれた少年を中心に反論していると、人だかりの中にいる金髪の少年が訝しげに腕を組んだ。
「どうかなぁ?」
「何だと、ハイネ!? 俺を疑うのか!?」
「サイファーは悪くないもんよ!!」
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