さて誰もが希望を失う光景が続くが、ここで紫苑はある人物に目を向けた。
「ところで、アーファは随分と手際がいいですね?」
「ふっふーん、今日のアタシは一味違うわよ! この日の為に、ツヴァイさんや紗那と一緒にいろんなレシピの本を一夜漬けしてきたんだから!」
「言われてみれば、スポンジケーキの材料は全部揃ってる…!!」
「具材は微妙だが、他の三人と比べたらまだマトモだ…!!」
アーファの持ち寄った材料に、ゼツだけでなくリクも目を瞠る。
具材が気になるが、これならば。落ち込んでいた司会者四人に、光が差した。
「さーて、後は生地を掻き混ぜてっと…」
ボウルに小麦粉や卵、砂糖に牛乳にベーキングパウダーを入れると、アーファはあるモノを取り出して…――手に装着した。
「はあぁ!! 『死命悔界』っ!!! オラオラオラオラァァァ!!!」
武器であるグローブを取りつけるなり、ボウルに向かって怒涛の拳を放つアーファ。
やがて見えない拳の猛打が止まると、アーファは誇らしげに罅割れたボウルを持ち上げた。
「よーし、これで…――あれ!? 何で生地がこんなに減ってるの!?」
「そりゃあ、減るだろ…!!」
「俺達の所にまで中途半端な生地が飛んできたんだからな…!!」
まるで地の底から呻くようなクウとオルガの声に、アーファはそっちを見る。
そこには、全身が生地塗れになって震えている審査員四名と、魔法で飛んできた生地を防御した司会者二人がいた。尚、他の三人はそれぞれ避難していて無事だ。
「ご、ごっめーん…」
この光景に、さすがのアーファも謝りを入れる。本編ではオルガを『Sin化』から救った技だか、もはや何の有難みも無い。
「ふふっ、皆甘いわね…私は数日前からアクアの元で泊まり込みで料理を習っていたのよ?」
「「何ですって!?」」
自信ありげなスピカの言葉に、アーファとアナザが目を見開く。
そして、スピカは包丁を握るとスッと前に出して静かに構えた。
「あなた達に見せてあげるわ。『旅立ちの地』で三日三晩の修行を得て、編み出したこの技をっ!!」
そう宣言するなり、スピカは全身に光の魔力を宿らせてその場で飛び上がった。
「『マジックアワー』改め…――『白夜光明斬』っ!!!」
飛び上がると同時に、何と周りから光が幾重にも立ち上る。
そうして一気に振り下ろすと、スピカを中心に大きな光の柱が辺り一帯に降り注ぐ。
やがて光が収まると、目の前の材料だけでなくキッチンすらも粉々に破壊されていた。
「な、何て凄い技…っ!!?」
「さすがはラスボスと一人で戦った人物ね…本当に油断ならないわ」
「それが何よっ!! アタシ達だって仲間と隣に立って、レプセキアを奪還出来る強さを持ってる!! いくらあなたが強くても、アタシ達は負けないんだからっ!!!」
シオンとアナザが唖然とするが、アーファは拳を握ってスピカに指を突きつける。
そんなアーファとは打って変わって、別の場所では何故かどんよりとした空気が流れた。
「あのさー…これ、料理対決だよな? 何時から技の出し合いになったんだっけ…?」
「オルガ、よく考えろ…このメンバーが料理する時点で、もうルールなんて無いようなものだろ…?」
「折角今年のKHは主役で目立ったのに…何で、こうなるんだ…?」
「俺…遺書の準備しとくわ…」
そんな事がありながらも、この後もとにかく酷かった。
一人は格闘技で次々と食材を粉々にするし、一人は不吉な詩を歌いながら料理する所為で何やら人魂が篭るし、一人は料理を進める度に火を使ってもいないのに暗黒物質へと変えていき、最後の一人はアンヴァースだけでなくハートレスまで使い始める始末だ。
それでも、四人の手は止まらず破滅への時間が着々と進んでいく。
「さあ、皆さん。あと15分で終了ですよー?」
「ちゃんと残り時間内に完成してくださいねー?」
「「「「ハーイ♪」」」」
((((いっその事、もう完成しないでくれ…っ!!!))))
司会者二人に笑顔で答える料理人達に対し、四人は心の中でそう願う。
まるで人類滅亡の時を待つような気持ちでいると、急に紫苑が声をかけてきた。
「そうそう、別室に応援部隊の方もいますよ。ちょっと覗いて見ましょうか」
「「「「応援部隊…?」」」」
思わず審査員四人が反応していると、ローレライがリモコンを取り出した。
「まずは、アーファ&オルガの関係者から映しましょうか」
そう言うなり、何処からか大きなスクリーンが現れて別室を映し出す。
そこには、紗那、神月、神無、イオン、ペルセが青い顔で顔を俯かせていた。
『オルガ…ごめんね、私達一生懸命教えたんだけど…』
『お前の墓には、ちゃ
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