そんなこんなで、とうとう与えられた一時間が残り僅かに迫る。
いよいよ料理人にとっては緊張する、審査員にとっては滅亡の時間が訪れた。
「はい、ここで終了ですっ!!」
「皆さん、料理は出来ましたか?」
紫苑とローレライが声をかけると、いち早く出来ていたのかシオンが皿を持って近づいた。
「ハーイ! あたしはチョコケーキ作って見たよー」
((((もはや石炭じゃねえか))))
シオンの持ってる皿に乗った両手で持てるぐらいの黒い塊に、思わず四人は率直な感想を心の中で入れる。
「私はちょっと捻って、フルーツケーキにしてみたわ」
((((何このゲテモノ料理?))))
続いてアナザが持ってきたさまざまな濁った色の楕円系の固体形状物に、四人は引いてしまう。
「アタシはシフォンケーキ! 美味しそうでしょ!?」
((((何か突き出ているんですけどっ!?))))
アーファが持っているふわふわのスポンジケーキには、何やらスイカやアボカド、更には魚や肉の骨だけでなく鉄の棒やら壁の破片やらが埋め込まれている。
「私はシンプル差を強調してチーズケーキよ」
((((形は一番いい…けど、どうしてこんな色になるぅ!!?))))
最後にスピカが見せたのは、見た目は美味しそうな…毒々しい七色のチーズケーキだった。
こうして完成したケーキを審査員達の前に置くと、笑顔で言った。
「「「「さっ、みんな食べて?」」」」
死の宣告とも言える言葉に、ゼツはゆっくりとクウに目を向けた。
「こ、ここは年の高い順で…!!」
「先に俺から食べろと!? 普通は低い順だろ!?」
「なら、公平にじゃんけんで…!!」
「いや、それだと――!!」
どうにかオルガが別の案を出そうとするが、リクに止められてしまう。
こうして犠牲の押し付け合いが始まる中、黙って見ていたスピカが手を上げた。
「――『バハムート零式』」
その言葉と共に、彼女達の背後に何かが落ちる。
男四人が目を向けると、そこには通常よりも巨大で神々しい竜が雄叫びを上げていた。
「ス、スピカさん…!!? 確か、そんな【召喚】使えない筈では…!!?」
「そんな事はどうでもいいわ。それよりも…――誰でもいいから、早く食べて頂戴? 全員『テラフレア』受けたい?」
ガタガタと震えるクウに言い付けるなり、攻撃開始の合図を放とうとするスピカ。
もはや考える時間など与えられないと悟り、クウは即座にゼツを見た。
(だ、誰でもいい!! この状況をどうにか打破するんだっ!!)
(でもどうやって!? 料理を攻撃したら、確実にあの竜の餌食になるぞ!?)
(だからと言って、このままでも餌食は確実だ…!? 誰か一人、犠牲になって食べるしかないんじゃないのか…!?)
(そうだな…誰か一人を、犠牲に…――待て、まだ手は残ってる!!)
(((本当かっ!!?)))
オルガに同意するように言っていたが、途中でリクは何かを思いつく。
三人がすぐに目で問うと、リクは一つ頷いて目を閉じる。
すると、リクの周りでさまざまなスピリット達が現れた。
「きゃあ!?」
「何、この動物!?」
突然登場したワンダニャンやコウモリバットなどに驚くアナザとアーファ。
それを見て、リクは若干卑屈った笑顔を見せた。
「わ、悪いな! 駄目だろー? 食べたいからって勝手に出てきたら…!!」
「キュ!?」
「キー!?」
リクの言葉に批判するように、それぞれ首を振ったり嫌そうな鳴き声を上げるスピリット達。
そんな光景に、やりたい事が分かったのかオルガとゼツは即座に作ったケーキを持った。
「か、可愛いなぁこいつら! そうだ、アーファのケーキ食べるか!? いいよな、アーファ!?」
「アナザ、一緒にこいつらに食べさせないか!? どう見てもお腹空いてそうだしさ!!」
「でも、本当に可愛いわね…さあ、遠慮なくお食べ?」
「あたし、一度でいいからドリームイーターにエサやりしたかったんだー!! はい、美味しいよー?」
オルガとゼツの言葉に共感したのか、スピカとシオンもケーキを持ってスピリットに餌付けする。
だが、スピリットもバカではない。危険な物質だと見抜き、すぐさま逃げ出そうとするのだが…。
「逃げるなよ、お前ら?」
「そうそう。主人の言う事はちゃーんと聞けよ?」
いち早く、クウとリクが先回りしてそれぞれ輝かしい笑顔で武器を見せつける。
まるでどこぞのラスボスのような姿に、スピリット達も怯んでしまう。
「ゼツ、回復アイテムの用意は?」
「ああ、スタンバイは出来てる」
逃げられないスピリット達に、追い打ちをかける様にオルガとゼツが用意された回復アイテムを持ちだす。
じりじり
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