そうしてデータ・リクが全てを話し終えると、再び前を見る。
彼の前に立っているオパールの目には、動揺が浮かんでいた。
「…そうだ、思い出した…!! あたし、あんたに約束した…!!」
あの頃の記憶がオパールにも甦ったのが分かり、データ・リクは微かに笑みを浮かべて腕を組んだ。
「その約束を信じ、俺はユーザーの世界を侵略しようとするMCPに反論した。そして、プログラムを吸収されてデータ化されても辛うじて意識を保ち続けた」
そこで言葉を切ると、真剣な目でオパールを見た。
「どんなに辛くとも、お前との約束を信じて」
「あ、あたし…!! あたしは…!!」
データ・リクの言葉に、オパールの動揺が激しくなる。
子供の頃に交わした約束。あの時は本当に純粋な思いで言ってしまったのに、成長した今ではその約束に心が締め付けられる。
彼の感じた異変は、器材が壊れてる訳でもバグやウイルスによる物でもない。ソラ達がトロンに心を齎したように、自分もまた彼に心を齎していたのだ。
そう。約束を果たすとは、言わば彼に宿った“心”を消す事。忘れていたとはいえ、昔交わした残酷な約束に顔を俯かせる。
その時、自分達の周りからあの黒服の男達が武器を持って降り立った。
「な、何!?」
「マズイ…!! 来い!!」
「あ、ちょ…!?」
突然データ・リクに腕を掴まれて、引っ張られる様にその場から逃げるオパール。
それを黒服の男達も武器を持って追いかける。この様子に、オパールは前を走るデータ・リクに叫んだ。
「あんた、もしかして追われてるの!?」
「ああ、君の伯父が作った【特殊消去プログラム】にな」
「はぁ!? あれが【特殊消去プログラム】!?」
予想しなかった単語がデータ・リクから飛び出て、オパールは逃げながらも後ろにいる黒服の男達を見る。
すると、データ・リクは一つ頷いて話を続けた。
「あれは、元々ここのセキュリティプログラムでもある『トロン』を元に作られたものだからな。害をなすデータやはぐれプログラム、住民登録されてないユーザーを敵と認識して襲い掛かる」
「だから、あたし達を…――ちょっと待って、じゃああんたは!?」
ここで一つの疑問が湧き上がり、データ・リクに問い質す。
自分は最近帰ってきたばっかりでまだ登録は済んでないし、ソラ達に至っては別の世界の住人だ。彼はずっとこの世界にいたのに、どうして追われる身なのか。
データ・リクは少しだけ黙ると、ポツリと呟いた。
「…バグの残ったデータがあると、他のデータがどうなるか分かるか?」
「え!? そりゃあ、バグが他のデータに転移する可能性もあるから――…っ!!?」
質問に答えていると、言いたい事に気づきハッと口を閉ざすオパール。
この様子に、データ・リクは逃げながら頷いた。
「そうだ…今の俺はバグを持つデータ。他のデータに危害を加える前に排除しようと、あのプログラム達は俺を消す為に動いているんだ」
「それなのに…あたしに会う為に、ずっと逃げてたの…?」
「――ああ」
静かに答えていると、少し先に通路が見えてくる。
二人がそこに逃げ込もうとしていると、突然上からハートレスが現れてエネルギー弾を放ってきた。
「危ないっ!?」
「きゃあ!?」
すぐに足を止めるなり、オパールを庇うように抱きかかえる。
それと同時に、エネルギー弾がデータ・リクにぶつかって二人して大きく吹き飛ばされた。
「いっつ…!?」
データ・リクがある程度庇ってくれたおかげで、オパールはどうにかデータ・リクを押しのけて上半身を起こす。
そうして前を見ると、例のプログラムは自分達よりハートレスの方が危険と判断したのかそっちの方へ攻撃をしていた。
「こんな事言うのも何だけど…今はあんた達もこんなプログラム必要ないわよっ!!! 『サンダーボルト』!!!」
両者が戦ってるのを良い事に、オパールはあらじかめ作っていた魔石を取り出して投げつける。
石が光り辺り一帯に激しい電撃が発生し、電撃に巻き込まれる形でプログラム諸共ハートレスも消し去った。
「大丈夫――ッ…!?」
それから助けてくれたデータ・リクを見た瞬間、オパールは息を呑んだ。
「消え、てる…!?」
データ・リクの身体にはあちこちにノイズが走り、一部はデータ化されて透明な画面のような物が何重にも重なっている。
もはや人の姿を保っていられないデータ・リクをオパールが仰向けにして楽に寝かせていた時だった。
「俺を…持っていけ…」
「え…?」
ポツリと呟いた言葉にオパールが聞き返すなり、データ・リクは黒コートから一枚のディスクを取り出した。
「これは…俺の元である、データ……それは、この世界だけ
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