空間に入り目の前に広がったのは、白い大理石で出来た不思議な通路。
その通路を、クウはひたすらに走っていた。
「くそっ…!!」
すでにその背から翼は消え、悪態を吐きながらも走り続ける。
先に進むにつれて、聞こえてくる歌声が少しずつ大きくなってくる。それと共に、心の中で焦燥が広がっていく。
(何で、この歌が…!! まさかこの事件、俺の所為で…!!)
自分にとって嬉しくて懐かしい歌声なのに、比例するように罪悪感が募っていく。
「クウー!!」
そんな時、後ろから大声で名前を呼ばれる。
思わず足を止めて振り返ると、ソラを先頭に全員が駆け付けていた。
「お前ら…何で…?」
「何でって事はないだろ!?」
「そうだって! 一人で勝手に走ったのはそっちだろ?」
「…悪い」
ソラとヴェンが半ば怒りながら言うと、クウは思わず頭を下げる。
反省を見せるクウに、すぐにテラは質問した。
「それより、何で先に行ったんだ?」
「それは、その…」
テラの問いに、答える事が出来ないのかクウは変に口籠る。
そんな時、カイリは通路の先を見て指を差した。
「ねえ、あの先。あれって、扉じゃない?」
白くボンヤリとした通路の先を見ると、確かに扉があり歌声もそこから聞こえる。
これを見て、アクアとゼロボロスも核心を得て頷いた。
「みたいね。あそこに、何かあるのかしら」
「かもしれませんね。同じ世界にある場所なのに、ここは異質な感じですし…何より、歌もあの奥から聞こえる」
「皆、警戒を怠るな」
無轟も周りの人達を見ながら注意を促す。
「――その必要はない」
しかし、ポツリと呟いたクウの言葉に全員は動きを止める。
その間に、クウはしっかりとした足取りで扉へと進んでいく。
「クウさん?」
「どう言う事です?」
レイアとウィドが聞くと、クウは背を向けたまま言い放った。
「行けば分かる…――何もかもが」
そう言うと、扉に手をかけて開け放った。
中には、同じように白い大理石で出来た広い部屋。しかし、その真ん中にはカプセルのような物が幾つも取りつけられた巨大な機械が設置されている。
そのカプセルを見ると、中からハートレスが生み出されて瞬時に闇に紛れて消えていく。この光景にオパールは唖然とした。
「まさか…この巨大な機械が…!?」
「あの人は!?」
ヴェンの視線の先に、まるで機械に繋がったように白い鳥籠がある。
その中で座り込んだ状態で歌っている人物に注目していると、女性は自分達に気づいて歌を止める。
辺りに沈黙が過る中、クウは一歩踏み出すと口を開いた。
「スピカ…」
クウの呟きに、女性―――スピカは目を見開いた。
「ク、ウ…?」
まるで信じられないと言ったように、クウの名を呟くスピカ。
この言葉に、ウィドもまた目を見開いた。
「姉さん…なん、です?」
茫然としながら質問すると、スピカは息を呑んだ。
「ウィド…? 本当に、あなたなの…?」
目の前の女性が正真正銘自分の姉だと分かり、ウィドは満面の笑顔を浮かべる。
「姉さん――!!」
駆け寄ろうとした直後、阻止するようにクウが腕を掴む。
そうしてウィドを押さえつけると、何とスピカに向かって叫んだ。
「スピカ!! 何でこんな所にいるんだよ!? 他の奴らはどうした!?」
「なっ…!? あなた、いきなり何を――!?」
邪魔された事にウィドが睨むが、クウは無視するように更に質問攻めする。
「それに、何でこんな檻に捕らわれたままなんだよ!? スピカの力量なら、こんなのすぐに――!!」
「ごめんなさい…出られないの。この中では、私の力は封じられるから」
「マジ、かよ…」
首を横に振って説明するスピカに、クウは茫然とする。
何とも言えない空気に包まれるが、それを払うようにスピカは微笑みながら口を開いた。
「…本当、成長したわね。最後に会った時は、まだ私の方が背が高かったのに」
「11年も旅してれば…嫌でも鍛えられる」
「そう、よね…11年もあれば、人は変われるわね」
「待ってください、姉さんっ!!!」
二人だけの会話に我慢の限界が訪れたのか、ウィドが大声で割り込んだ。
「姉さん、さっきからクウと親しげに話していますけど一体どう言う関係なんですか!? 折角会えたのに、どうしてクウばっかり――!?」
「俺から説明しようか? 二人の関係…――そして、俺達の繋がりをな」
突然の第三者の声に、全員は機械を見上げる。
機械に取りつけられたカプセルの一つに寄り掛る様に、セヴィルが立ってこちらを見下ろしている。
これを見て、アクアはキーブレードを取り出した。
「あなたは!?」
「
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