セヴィルが鳥籠を斬った部分は、まるで幻影のように一瞬だけ掻き消えて元に戻る。
だが、攻撃が当たっていないにも関わらず中にいたスピカは苦しむ様に顔を抑えて蹲った。
「っ…!?」
「姉さん!? 貴様ぁ!!」
「セヴィル!! てめえ、何を――!?」
苦しむスピカを見て、ウィドとクウがセヴィルに向かって武器を構える。
そんな中、アクアはスピカに起きた異変に気付いた。
「何、あの破片みたいなの…!?」
よく見ると、スピカが顔を抑えた部分に白い破片のような物が現れている。
他の人も破片に注目していると、セヴィルが説明した。
「仮面の一部だ、『Sin化』のな」
「『Sin化』?」
聞いた事もない単語に、ゼロボロスが目を細める。
「『Sin化』した者は服従として仮面が付けられると共に洗脳され…ある人物の操り人形と化す」
「なっ…!?」
淡々と説明するセヴィルに、ウィドが顔を青ざめる。
この説明が本当ならば、スピカは操り人形になったと言う事に他ならない。
だが、セヴィルは軽く首を振ると巨大な機械を指した。
「と言っても、今はこの檻を構成している封印の魔法でスピカの能力と共に『Sin化』の効力も抑えている。そして、その効力であるエネルギーは…このハートレス製造装置と繋がっている。言いたい事、分かるか?」
「あなた…まさか…!?」
「なあ、どう言う事だよ!?」
アクアが声を震わせると、意味が分かってないのかソラが叫ぶ。
すると、セヴィルは今度は機械の後方にある壁の扉を指した。
「この装置を止めたかったら、この先に行って動力を止めてくればいい。その代わり、スピカは完全に自我を無くし、お前達の敵となる」
『『『っ!?』』』
この宣告に、全員に緊迫が張り詰める。
もし装置を止めれば、ハートレスはいなくなるがスピカは操られ敵になる。装置を止めなければスピカは自我を保てるが、この世界は闇に包まれる。
どうしようもない状況に立たせられていると、セヴィルは更に話を続けた。
「一つだけ忠告しておく。今は『Sin化』と一緒に能力を封じられているが、スピカは強い。簡単に勝てない事は…クウ、お前なら嫌と言う程分かってるだろう?」
「てめ…んで…!!」
どこまでも冷酷なセヴィルに、とうとうクウは怒りを爆発させた。
「何でそんな事出来るんだよっ!!? そんなに裏切った俺が憎いなら、俺だけ傷付ければいいだろ!!? スピカも、この世界の奴らも関係ないのに何でっ!!?」
胸に手を当て、今にも泣きそうな表情で心の底から叫ぶクウ。
そんなクウに、セヴィルは呆れたように溜息を吐くと顔を逸らして呟いた。
「――やはり、お前は子供だな。“あっち”の方が、まだ共感が持てる」
「さっきから何言ってんだぁ!!?」
拳を握り込み、怒りに任せて殴りかかる。
だが、クウの攻撃をセヴィルはキーブレードで受け止めた。
「一つだけ言っておく。俺は、今のお前を見て本当に失望した」
そう言って凍てつくような目で鋭く睨まれ、すぐ傍にいたクウは思わず身体を強張らせる。
「今お前が感じてる気持ちは…かつて、俺達が味わったものだ。クロの弟子として、お前はその全てを背負っていると思ったが…――とんだ勘違いをしたものだっ!!!」
大声で怒鳴ると共に、軽く打ち付けていた拳を弾き返す。
体制を崩されてよろめくクウを、セヴィルはキーブレードで思いっきり吹き飛ばした。
「ぐあっ!?」
「クウさん!?」
そのまま地面に叩きつけられるクウに、すぐにレイアが駆け付ける。
クウに『ケアル』をかける様子を一瞥すると、セヴィルはソラ達を見て言い放った。
「彼女か、世界か…――お前達がどちらを選ぶのか、見せて貰うぞ。キーブレードの勇者達」
それだけ言うと、セヴィルは足元から『闇の回廊』を使ってその場から消え去る。
未だに閉じ込められているスピカを見ると、すでに仮面の破片は消えていて顔を俯かせている。
そんなスピカに、戸惑いつつもカイリが声をかけた。
「スピカさん…」
「――何をしてるの、行きなさい」
「え?」
突然言われた言葉に、ヴェンが聞き返す。
顔を上げたスピカの表情は、真剣そのものだった。
「聞いたでしょ? ハートレスを止める為には、この動力を止めないといけないって。分かったら早く行きなさい」
「だけど!! そんな事をしたらあなたは!?」
「私の事より、この世界の事を考えて。このままだと、ハートレスによって世界は消えてしまうわ」
「それは…あなたが犠牲になると言う事か?」
心配するカイリに、尚もスピカは先を促す。
この様子にテラが思った事を聞くと、スピカは何かを堪える様に顔を逸らした。
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME