刺された部分が熱を持ち、呼吸をするだけでも激痛を感じる。
荒い息で背後にいるウィドを見ていると、顔を俯かせたまま呟いた。
「知って、ますか…満月って、意外と明るいんですよ…?」
まだダメージが残っているようで、同じく肩で息をしながら話すウィド。
だが、今の状況とは何の関係ない話にクウが訝しんでいると、背中越しにウィドが冷たい笑みを浮かべた。
「満月に、照らされた…桜…――淡い光に、照らされて舞い散る花びら。見た事ないなら…見せてあげます…あなたの血を使ってねぇ!!!」
そう叫ぶなり、一気に剣を引き抜く。
より痛みが襲う中、ウィドが背中を思いっきり斬り裂いた。
「――『月光明血桜』っ!!!」
斬られた感触と同時に、盛大に血飛沫が舞う。
それが自分の血だと言うのに、桜の花弁の様に美しく散っていく。
あまりの美しさに痛みすら忘れ、やがて膝を付いて倒れ込んだ。
「うぐ、あ…!?」
「ク、ウ…っ!?」
もはや立っていられない程、全身が痛みで蝕まれていく。
そんな中、スピカが仮面に浸食されながらもこちらに手を伸ばす。
思わず手を伸ばしていると、遮るかのようにウィドが立った。
「…して――」
小さく呟くなり、憎しみを露わにして剣を振り上げた。
「どう、して…お前ばっかりぃ!!!」
そうして、細い刃を突き刺す様にクウに振り下ろした。
「駄目ェェェーーーーーっ!!!!!」
一つの叫びと共に、小さな光がクウの前に現れる。
それが『テレポ』の魔法だと理解した瞬間、光から現れた影はウィドの刃に貫かれた。
「え…?」
突然の事に、剣を振り下ろしたウィドですら動きを止める。
そこにいたのは、両手を広げて胸の部分を貫かれたレイアだった。
「レ、イア…?」
「だめ、ですよ…クウさん、いなくなっちゃったら…みんな、かなしみます…」
瞳が虚ろになりつつも、尚も両手を広げてクウを庇おうとするレイア。
しかし、そう長くは続かずに剣に刺さったままその場に崩れ落ちた。
「レイア!?」
「ウィド、何やってるの!? 早くレイアを――!!」
同じく『テレポ』でこちらに戻ったであろうテラとアクアが叫ぶ中、ウィドは目を鋭くさせた。
「邪魔だ」
そう言うと、何とレイアを剣から引き抜くように横に投げ飛ばす。
あまりにも非情な行動に、オパールとカイリは悲鳴を上げた。
「えっ…!?」
「いやっ…!!」
「ウィド…あなた、何をっ!?」
この行動にゼロボロスすらも咎めるが、ウィドは周りを睨みつけた。
「黙れぇ!!! 私の邪魔をするならば…切り捨てるのみだぁ!!!」
言葉を拒絶するように叫び、再び剣を構えるウィド。
そんな中、クウは倒れたまま動かないレイアをただ茫然と見ていた。
愕然とした何かを感じたまま、何故か意識が遠くなっていく。
全身を蝕む痛みも、景色も、音すらも消えていく。
「クウゥ!?」
誰かの声が聞こえた気がしたが、何も感じない。
もう、自分の全てが、闇に染まっていく…。
―――パァン!!
「――え…? あ、れ…?」
「やっと、正気になったわね…――バカ…!!」
頬に鈍い痛みを感じると共に、震えた声が響く。
ゆっくりとクウが視線を向けると、そこにはスピカが苦しそうに手を振り抜いていた。
その顔には、どう言う訳かあの仮面が無い。
「スピカ…おれ、は…?」
何故か頭がボンヤリとして、思わず聞き返す。
そうして息を荒くするスピカを見ていると、ある事に気づいた。
「ウィド…? なんで、斬られてるんだ…?」
スピカの後ろに、いつの間にかウィドが斬られて倒れようとしている。
驚いていると、不意に手に違和感を感じる。視線を向けると、ウィドが持っている筈の剣を自分が持っている。
目の前で斬られたウィド、手に持つ剣、頬を叩いたスピカ。これらの事柄が一つの結論に居たり、サァっと血の気が引く。
「俺、が…!? 俺が、あいつを…!?」
「落ち着きなさい! 周りをよく見て!」
恐怖で震えていると、スピカが肩を掴んで強く揺さぶる。
言われた通りにクウが辺りを見回すと、妙にぼやけた空間の中で倒れるウィドはもちろん、周りの人達も驚きの表情のまま動かない。
いや、静止している。
「止まってる…!?」
「即座にあなたに『ベール』をかけた後、『ストップガン』でこの空間一帯の時間を止めたの。だから、今は私もパラドックスの“支配”から逃れられてる」
「パラドックス…?」
聞き覚えのない単語にクウは聞き返すが、スピカは無視するように顔を逸らした。
「――この魔法は見様見真似で使ったからそんなに長く続かない。だから、さっ
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