スピカの作り出した歪みを抜けた先は、白い靄がかかったさまざまな色が混じりあった薄暗い空間だった。
「狭間の回廊か…確かに、逃げるのに打って付けの道だな」
クウは辺りを見回しながら場所を確認するなり、後ろで入口となった歪みを見る。
自分が来たのを最後に、歪みは消えていく。最後まで見送っていると、カイリの声が響いた。
「レイア、しっかりして!!」
目を向けると、レイアを寝かせた状態でアクアが回復魔法をかけている。
だが、どんなに癒しても身体から溢れる闇は止まらない。限界を感じたのか、アクアは力なくキーブレードを下ろした。
「アクア!? どうして回復しないんだ!!」
「ヴェン、駄目。これはもう私の力で治せるものではないわ…」
「そんな…!?」
今にも泣きそうなヴェンと同じ気持ちなのか、ソラもアクアに詰め寄った。
「じゃあ、レイアはこのまま消えちゃうのか!? スピカみたいに助けられないのかよ!?」
「それは…!!」
ソラの言葉に、アクアが悔しそうにキーブレードを握り締める。
他の人達も顔を曇らせる中、クウは動いた。
「――どけ、お前ら」
「クウ?」
すぐにソラが振り返ると、クウはこちらに近づいてくる。
そうして周りにいた人達を掻き分け、レイアの傍にしゃがみ込んだ。
「何をする気なんだ!?」
「助けるに決まってんだろ」
そうテラに言うと、クウは手をレイアに翳す。
すると、彼女を中心に黒い魔法陣が現れる。
「闇の陣よ、かの者を包みこめ」
一つの呟きと共に、魔方陣から放たれた黒い光がレイアを包み込む。
「――『ダークサークル』」
やがて黒い光が収まると、レイアの身体から溢れていた闇が消える。
どうにか一命を取り留めてクウが安堵の息を吐くと、ソラが驚きながら呟いた。
「すごい…」
「すごくない…致命傷負ってたら、さすがの俺でも治せなかった」
「そうね…これを持っていなかったら、危なかったわ」
クウに同意するようにアクアも頷くなり、小さな袋を取り出す。
袋はウィドが貫いた所為で破れているが、よく見ると何かに当たったのか貫通した穴が少しずれている。
そうして空いた穴から、何かの破片が見えた。
「貝殻?」
その破片の正体に気づき、思わずリクが訝しる。
袋の中には不思議な色をした貝殻が幾つか入っていたようで、今となっては身代わりのように割れてしまっている。
割れてしまった貝殻を見て、カイリはある事に気が付いた。
「これ、サラサ貝!?」
「サラサ貝?」
「私達の島にある貝殻なの。海に出る船乗り達が無事に帰ってこられるように、お守りとしてその貝殻で作ったアクセサリーを渡すの」
「それって、前にカイリが見せてくれた奴?」
カイリがヴェンに教えると、オパールも休憩中での会話の記憶を引き出す。
そんな中、ソラはアクアの持つ貝殻を見て笑みを浮かべた。
「サラサ貝が、レイアを守ってくれたんだな…」
故郷の物がレイアを守ってくれた事に、ソラは何処か嬉しさを感じる。
レイアはゆっくりと目を開けると、肩を震わせながらクウを見た。
「クウ…さん…」
「今は、眠ってろ。俺がある程度説明してやるから」
「…ハイ…」
クウが優しく頭を撫でると、安心したのかレイアはまた目を閉じる。
そうして眠ったレイアを見て、テラは座り込むクウに聞いた。
「クウ、説明って――」
「今はここから出る事が先決だ…説明は歩きながらする」
そう言ってレイアを背中に担ぐと、クウは先の見えない道を歩き出した。
レイアを抱えたクウを先頭に、全員は出口のない道を歩く。
その状態で、クウは背中を向けながらレイアの事を話し出した。
「今から半年ぐらい前の話だ。旅の途中である世界の路地裏を彷徨っていたら、俺はノーバディとして生まれたレイアに出会った。だが、その時にはある男に勧誘をされていた」
「勧誘?」
同じくルキルを背中に担いでいる無轟が聞くと、クウは一つ頷いて話を進めた。
「俺も詳しくは分からないが…――特別なノーバディの集団の仲間にならないかって話だった。確か、その男の名前は…ザルディンって言ってたな」
「ザルディン!?」
「知ってるのか、ソラ?」
大きく反応するソラに、ヴェンが不思議そうに問う。
すると、リクが顔を歪めてヴェンに叫んだ。
「知ってるも何も、そいつは世界に脅威を齎した]V機関の一人だ!!」
「俺の嫌な予感は当たってた訳かよ…」
リクの答えに、クウは嫌そうな表情を浮かべて天を見上げる。
まるで何かを見通してたような言葉に、思わずリクがクウを訝しげに見た。
「どう言う事だ?」
「そのままの意味だ。遠くで話を聞いて、俺はす
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