閉鎖次元
ジェミニは負けた。フェイトの一撃で倒され、彼は力なく天を仰ぎながら倒れている。
一方のフェイトは帰刃を解除し、白服の少年に戻っていた。
「……にしても」
倒れたジェミニの傍に腰を下ろしたフェイトは仮面をとんとんと指で突いた。すでに仮面は全体的な亀裂を走らせ、崩れかかっている。
そして、突いた事で完全に崩れた。いや、消滅したというべきほどに微塵に霧散した。
「……コレで大丈夫なのかな」
仮面が洗脳の証だと読んだフェイトは限りなくダメージを与えて倒す事で洗脳を解く手段と踏んでいた。
もし、洗脳が続いていたら――――。
「その時は全身縛って、仮面の女を引っ張り出すか」
「―――うっ……っ」
「! ジェミニ」
呻き声と共に、意識を回復したジェミニは視界に入ったフェイトの顔を見て、ほっと胸を撫で下ろした。
「……大丈夫、もう操られてはいないよ」
「そう。もしもの時は君を縛っておこうと思っていたところだ」
「ふ……ふふ。その心配はいらない……ありがとう」
自分を救い出してくれて。
ジェミニは心の底から、フェイトへお礼の言葉を言った。彼は首を小さく振り、気にするなという表情を見せた。
「ジェミニ、記憶は憶えているの?」
「……操られていた時の間の、か…………一応は、憶えている。―――『彼女』は、決して自分の名を打ち明けなかった。だが、つれさらわれた場所とこの襲撃の目的はは覚えている…!」
「……教えてくれる?」
フェイトは何故、洗脳を受けたものの記憶を保存させ、尚且つ、その場所の名前まで打ち明けた女に疑問を抱いた。
「神の聖域……レプセキア」
攻撃を受けた市街地にて。
チェルは町を攻撃する敵と対峙していた。
相手は一人。緑の混じった銀髪、戦場には不釣合いなドレスの様な衣装を身に纏った仮面の女性。だが、彼女の攻撃性を示すかのようにその手に握り締められた透き通った青色の刀剣が煌めいている。
チェルは燃え上がっていない市街の屋上から空中に佇む彼女を攻撃を始めた。
「!」
銃撃に、彼女は剣を振り上げると、周囲から赤や青、緑や黄色といった球体が流星のように放たれ、銃撃を打ち消し、残った球体はチェルへと迫った。
「くっ!」
幾ら、弾丸を撃ち込んでもまるで消える気配は無い。そのまま彼と直撃する刹那―――
「―――ッゥスゥウウウ―――ッッバアアアアアアーーーー!!!」
爆音とも言える絶叫が流星を掻き消した。
その咆哮に、チェルは耳を押さえて蹲っていた。
「……誰だ」
仮面の女性は刀剣の切先を咆哮の主に向けて、誰何する。その方向が自分の背後と気付いたチェルは手を下ろして、振り返った。
「お、お前は…!」
「――っはあ。あー、あー、んんっ……アンタ、大丈夫か?」
見覚えのあるその人物は、顔に仮面の名残をつけた白服の衣装をした胸元に孔がある水色の髪をした少女――カナリアだった。
「耳が……ちっ、お前の声はなんだ?! 爆弾か!!」
「ああ? ちょっと『大声』出したくらいでなんだよ……」
「大声ってレベルじゃねえーよ!! 鼓膜破れるかと想ったわ!!」
「―――」
「っと!」
「チッ!」
二人は彼女の攻撃を察して躱す。すかさず追撃の流星を放つと、再びカナリアはチェルの方へと迫ったほうに割り込んだ。
「!!」
「っ…あああ!!」
流星群が全弾、カナリアに衝突し、彼女は激痛の悲鳴を零した。チェルの攻撃では流星は打ち消せない。
だが、彼女の咆哮なら打ち消す事はできたのに。
「なんで、庇った!?」
「……」
負傷したカナリアに構わず、女は流星群をつ。それはチェルとカナリアへと狙いを定めたものだった。
チェルはだんまりな彼女を腰に手を回して、自身の俊敏な足と跳躍のある脚力で屋根を飛び移ったりして、躱す。
「―――大声って、言うから……」
「あ……」
「吼えたら、耳が痛いんだろ? だから……これ以上、此処に迷惑はかけるなってフェイトに言われたし―――」
「―――ッ……お前ってやつは………じゃあ、手を抜かれるのは俺に取っちゃあ迷惑だ。思い切り、吼えていい」
「! いいのか?」
「だったら俺がお前をサポートする。銃は元々遠距離だ。離れていたら耳は問題ないさ」
カナリアは了承の頷きをして、チェルは彼女を放した。空中で受身を取り、彼の前に立ち、女を阻んだ。
「逃げるのはお終い?」
「ええ。こっちも、やっと思い切り吼えれる」
「へえ……」
「覚悟しなさいよ、アンタ。――――月夜を照らせ」
―――『月華歌姫(ディーヴァ)』―――
「―――っと」
「……姿が、変わった……」
「んだよ…あの変身?」
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