「あの男に身体を奪われた私を、あなた達は救おうとした。だが、奴はχブレードを手にして強大な力を手に入れた。そして…――次々とあなた達を闇に消した」
淡々と言いつつも、悲しみを隠しきれてないエンを見て全員は何も言えなくなる。
「消えゆく意識の中でその光景を眺める事しか出来なかった…そして最後の一人であるソラを消そうとした時…命がけで、スピカが捨て身覚悟で助けた。その一瞬の隙を使って、あいつはχブレードを胸に刺した…――χブレードは均衡な光と闇で生まれたものだから、自らの心を使って打ち崩そうとしたんです」
「ソラって、どの世界でも無茶するんだね?」
「ご、ごめん…」
カイリが不満そうに睨むと、ソラは身を縮こませて謝る。
前にソラの中に入っていたカイリの心を解き放つ為、人の心のキーブレードを何の迷いもなく自分の胸に刺した事があるのだ。
「そうして均衡を崩されたχブレードは、たちまち暴走を始めた。抑え切れない強大な力が鍵を中心に自分達のいた世界だけでなく、他の世界にも広がり…全てが無に消え去った。その時の力に巻き込まれた私は、別の異世界に飛ばされ『キーブレード墓場』と同じ世界で目覚めた」
「まさか、その力に巻き込まれたから…あなたはノーバディに?」
ゼロボロスが聞くと、エンは自傷するように笑い出した。
「不思議な物ですよ。目覚めた瞬間、《何かが足りない》って感じるんですから。怒りも悲しみも感じず、ただ茫然となって…」
「私と同じです…」
同じノーバディであるレイアも頷くと、その時の事が過る。
記憶にはない別の世界で目覚めたのに、不安も恐れも感じなかった。まるで人形のように、意識が茫然としていた。
「…あんたの過去は分かった。けど、何でスピカを敵にした? てめえも俺と同じなら――」
直後、クウの顔の横を光の弾がスレスレに通り抜ける。
即座に『ルイン』の魔法を使ってクウの口を塞ぐと、エンは思いっきり睨みつけた。
「――確かに、客観的に見れば同じですよ。でも…貴様みたいな奴と一緒にされるくらいなら、この場で消えた方がずっとマシだっ!!!」
クウに対して拒絶の姿勢を取るエンに、堪らずヴェンが反論をする。
「異世界の人間でも、クウと一緒なんだろ!? 何でそんな事言うんだよ!?」
「憎くもなるでしょうね…何も出来ないまま全てを失ってしまったら」
その答えは、エンではなく意外な人物の口から出て来た。
「ゼロさん…」
そう呟きながら、今の言葉を述べた人物をレイアが見る。
ゼロボロスは、何処か遠くの目をしつつもエンを見ていた。
「僕もあなたと似た経験したから、分かりますよ。倒すべき敵との戦いの果てに戦友を、大事な人の命をそいつに奪われ…何も出来なかった自分を憎む気持ちは」
「ゼロ、お前…」
過去を思い出しながら話すゼロボロスに、クウは顔を俯かせる。
周りもエンの語った壮絶な過去に口を開けずにいた。
ただ一人を除いて。
「話を戻す…――お前の目的は何だ?」
そう言って、今まで黙っていた無轟がエンを見る。
すると、エンも気を取り直したのか無轟を見つめ返した。
「『χブレード』を作り出し、全てを取り戻す。その為に――」
そこで武器を持ち直すと、一直線に倒れたままのウィドに駆け込む。
突然の事に他の人達は反応が遅れてしまう。その間に、エンはウィドに向かってダブルセイバーを振り下ろした。
「つぅ!?」
だが、即座にクウが割り込み、エンの振り下ろした刃を両手で握って受け止める。
特殊な手袋のおかげで手は傷つかずに済む中、エンはクウを無視してウィドの持つ剣を見た。
「お前の持つ“シルビア”を手に入れる」
「「「「「シルビア!?」」」」」
エンが放った単語に、ソラ達メンバー五人は目を見開く。
あまりの驚き様に、アクアはヴェンに聞いた。
「ヴェン、知ってるの!?」
「ああ、大昔に作られたキーブレードだって!!」
「でも何でウィドが!?」
「そんなのどうでもいい!! てめえ、χブレードで世界を滅ぼしたんだろ!! だったらどうしてそんなの求めるんだ!?」
カイリも混乱してると、クウは刃を持ったままエンを睨みつける。
「χブレードの力に干渉して手に入れた異世界を巡る回廊を使って、分かったんですよ。χブレードが司るのは、終焉と再生。だから、再生を使って滅んだ世界を取り戻す!! 例えどんな犠牲を払おうとなぁ!!」
そうしてクウごと斬ろうと武器に体重をかけるエンに、オパールが叫んだ。
「ちょ、犠牲って何よ!?」
「前にセヴィルから聞いた事がある!! この世界は一度闇に呑まれて再生した…――要はこの世界滅ぼして、お前の世界に作り変えるって事かぁ!!」
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