目の前でソラが消えた。その事だけで、彼らの心に絶望が染み渡る。
仲間を失ったショックを隠し切れず、誰もが声を出せずにいた。
「俺の…せい、なのか…?」
そんな中で、喉から絞り出すような声でポツリと呟く。
視線を向けると、狂気が走っていた目が虚ろな状態に変わったクウが、ソラが消えた場所を見ている。
逃がす為の攻撃か今の光景かは分からないが、正気に戻ったクウにエンは憎悪の眼差しを向けた。
「やっと正気に戻ったか、この馬鹿が…!!」
「なに…っ!?」
怒りを露わにするエンの言葉に、クウが蹲りつつも反応する。
「結局、貴様は誰も救えない。その身に宿る闇が、貴様の周りをすべてを壊す」
「寝言言ってんじゃねーよっ!!! 元はと言えば、てめえが全部やった事だろうが!!! 自分自身が憎いからって、俺に責任転換してんじゃねーぞ!!! 何が自分の世界を取り戻すだっ!!! てめえの厄介事を俺達の世界におしつけるなぁ!!!」
クウは心にある感情を爆発させるなり、エンに向かって怒鳴り付ける。
大声で叫んだからか肩で呼吸するクウに、ゆっくりとエンが口を開いた。
「――遺言はそれで全部か?」
それと同時に、クウの足元に炎が集約して大きく爆発した。
「がはぁ…!?」
「クウ!?」
エンの放った『ファイガ』を受けるクウに、無轟が駆け寄ろうとする。
だが、鋭い目で睨むと勢いよく手を上げた。
「『ダークパニッシャー』!!」
辺り一帯に黒い魔方陣が不気味に光りながら現れるなり、闇の光線が上空から降り注ぐ。
『『『ぐわああああっ(きゃああああっ)!!?』』』
突然の攻撃に反応出来ず、全員は闇の光線を受けて悲鳴を上げる。
こうして回復した分を一気に削ったエンは、ダブルセイバーを握りながら倒れるクウに近づいた。
「て、めっ…!! ぐあああああっ!!?」
クウが悪態を吐くなり、丁度丹田となる部分を刃で貫かれる。
あまりの激痛に悲鳴を上げていると、背中にあった黒の双翼が解ける様に消えていく。
「お前の闇と精神を結ぶ力を切った。翼の折れた鳥には、もう何も出来はしない。自由になる事も、誰かを守る事も…何もなぁ!!!」
エンは冷たい目で睨みつけながら、貫いた刃を引き抜いてクウを思い切り蹴り飛ばす。
「あ、がぁ…!!」
「このまま消え去れぇ!!!」
抵抗すら出来ずに倒れるクウに向かって、エンはダブルセイバーを両手で握って振り上げる。
しかし、一筋の光の矢がエンの武器に当たって彼の手の内から放した。
「『ウィングアロー』…!?」
エンの攻撃を阻止した光の矢に、彼らの中で唯一の使い手であるアクアが呟く。
その間に、エンの手から放れたダブルセイバーは宙を舞うと少し先に突き刺さる。
矢が飛んできた方向に目を向けると、一人の少年がキャノン砲に変えたキーブレードを構えていた。
「“師匠”から離れろぉ!!!」
灰色の髪に青い目の少年がそう叫ぶなり、エンに向かって巨大な光弾を放つ。
だが、エンは即座に『ホーリースター』を放ち、中間点で光の爆発を起こして相殺させた。
「あれ、テラが使う技…!?」
突然現れた少年が使った『アルテマキャノン』に、ヴェンが唖然とする。
しかし、少年がキャノン砲をガンブレードに変えるとテラ達は驚きで目を見開いた。
「キーブレード…!?」
「あなたは…!?」
少年の持つキーブレードにテラやアクアが息を呑む中、エンは敵意を露わにする少年に向かって微笑んだ。
「シャオ、でしたか? よくあの空間から抜け出せたものですね」
「あんまり舐めないでくれる? ボクだって、キーブレードの使い手なんだから」
「こいつの事を師匠、と言ってましたね……差し詰め、異世界では私の弟子と言う関係になるんでしょうか?」
「あんたはボクの師匠じゃないっ!!!」
エンの言葉を全力で否定するなり、シャオは切先の銃口を向ける。
その様子に、エンは少しばかり驚いた顔をした。
「私が別世界の彼だから、ですか? しかし、そうなるとあなたが助けた彼も同じ事なんですが…」
「ボクの知ってる師匠は!! いい加減で、だらしなくて、奥さんいるのに他の女性に目が無くて、仕事もサボる大人として最低な奴さっ!!!」
『『『…………』』』
「そんな…目で、見ないでくれ…っ!!!」
あの無轟すらからも送られる冷たい仲間達の視線に、今すぐにでも死にたい衝動に駆られるクウ。
そんな事知ってか知らずか、シャオは尚もエンに叫ぶ。
「だけどっ!! 師匠はボクにいろんな事を教えてくれた!! 戦い方、仲間の大切さ、大事なモノを守る強さ、くだらない事までそれこそいろんな事を!!」
今も鮮明に残る
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