ほんの数分前。
エレボスの塔にて。
「はぁ……はぁ……っ!!」
「おのれ……!」
睦月、アバタールは両者ともども激しい剣戟とのぶつかり合い、鬩ぎ合いで困憊の兆しがあった。
「しぶてえなあ、本当に…」
「八咫鏡!!」
睦月の放つ力の塊を砲撃にして放つ技『オメガドレイン』を巨大な鏡がそれを阻んだ。
「ちっ」
「そろそろ、締めだ」
無数の勾玉が睦月の周囲を飛び交う。
「!」
「お前が疲弊するのを待った甲斐がある」
抵抗する睦月に、アバタールは勝利を確信した笑みを浮かべた。
「くそ……!」
彼のいう事は癪だが事実だった。
両者疲労困憊と想ったが、奴はまだ余裕の笑みを浮かべている。睦月は悔しさを噛み締めたが、安堵しているところもあった。
(皐月は来ていないな)
ならいい。
最悪、『助けに来た』なんて正直、生温い手段は今回に限っては最悪の手段に過ぎない。
(ジェミニはどうなったかは気になるな)
「さて、戻るか」
アバタールと睦月の足元に闇色が広がり、沈んでいく。沈みゆく中、睦月は永遠城を見据えていた。
(すまねえな、みんな)
タルタロス、中央広場。襲撃者が退き、戦いが終わって、各々が集った。その中にはアビスも居た。
「……睦月とカナリアはどうしたんだ」
フェイトは普段と低い声音でチェルを睨んだ。彼にはカナリアの力の残滓がこびり付いていた。
「カナリアは、敵に斬られた……今、治療している。死んではいない」
「そう……場所はペスキスで捉えるとして―――睦月は?」
「敵が言っていた。『捕縛した』と」
「皐月は睦月に促されて永遠城で僕と居た、その間か」
各々、どうしようもないほどに消沈な顔色だった。すまない、申し訳ないと無念に満ちている。
フェイトはそんな表情を一瞥して、ため息一つで切り捨てた。
「僕たちの仲間の一人が操られて、襲撃者として加わっていた。
彼が言うには襲撃者の目的は『永遠剣士の捕縛』と『タルタロスの破壊』―――いや、『戦力の分断』だったわけ」
永遠剣士を効率よく捕らえる為に、この町を破壊の名目での攻撃で、各地に洗脳した心剣士、反剣士を配備する。
永遠剣士を捕らえる担当はアバタール。彼の勾玉『八尺瓊勾玉』には様々な能力を宿しており、捕縛の力も相当なものらしい。
「アバタールは彼が言うには『性格の難はあるが、実力は本物。長期戦で挑まれれば永遠剣士は疲弊し、捕縛される』と言うことだ。
だから、彼は一人で挑んだ。睦月は見抜いていたかは知らないけど、最悪の事態を恐れて、皐月だけでも逃したんだ。現に睦月だけしかつれ攫われていない」
「……」
「洗脳された心剣士・反剣士の奴らは仮に僕たちに敗れて、「洗脳が解かれた」場合は捨て置き、「使える」のであれば潜伏していた仲間が救出するという作戦で動いていた」
リヒターを救出したリュウカ、ディアウスも既に救出された跡だった。
「―――この戦いは正直言えば僕たちの文字通りの『大敗』だ。僕達は大切な仲間を護れず、君たちは大切な町と人々を護れなかった。
まあ、戦いなんて犠牲がつきものだ。……そっちで、死者はいるのかい」
フェイトの容赦ない事実の評価に否定できない皐月たち、チェルたち。
彼はアガレスに死傷者の数を問うた。問うたのは彼の使い魔たる蝙蝠が報告へときていたからだった。
「……奇跡的に、0です」
「そうか。良かった―――じゃあ、僕は『可愛い従属官』の見舞いに行くよ。何処で落ち合う?」
「そうだな……あそこが見えるか」
チェルが指差した場所はニュクスの塔だ。
「あそこで1時間後に落ち合おう。みんな、『悔いる』事は在るみたいだからな」
フェイトはその言葉に笑みで返した。
「僕は悔いてませんよ? むしろ、腹立たしいほどに『むかつく』だけです」
その言葉を言い切って、響転でカナリアの元へと向かって行った。その言葉に皆は沈黙でしか返せなかった。
誰も口を開かないまま、各々の行きたい場所へと歩き去る。皐月はその場に蹲った。
「兄さんっ……!!」
「……」
蹲る彼の傍、アビスも哀しい表情で黙した。滴る涙を必死に堪えて。
タルタロス病院一室。
フェイトはカナリアが休んでいる病室へと入り、彼女の傍に座る。カナリアは彼に視線を向けた。
だが、カーテンが僅かにしか開いていないからか、彼の顔が、久しく不気味に感じた。
「……戦闘は」
「終わった。結果は惨敗。睦月は奪われたし、君は重傷だし、町も結構被害を受けたし―――救いなのは『誰一人死んでいない』ことかな」
「……ごめん」
「誰も責められないさ。『お互い様』って事で」
「なんで、そんな楽観し
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