「!!」
気楽に、しかし、確実に言い放った炎産霊神の言葉に、凛那を初めに神無らも言葉を失い、驚愕の表情を見せる。
その様子を見て、炎産霊神は陽気に笑い、無轟はいたって平静に彼の笑いを諌めるように言う。
「だったらどうした。こちら側の凛那は壮健で何よりな話だ」
『あ、そう。じゃあ、そっちも自己紹介してよ」
「あ……ああ」
彼の言葉に、言葉を詰まらせる神無。直ぐに凛那を見抜いた洞察力を想って、神無は名乗る勇気を要した、が自身が言った言葉を思い返す。
確りと受け止める。臆せずしっかりと目の前の無轟を見据えると。目の前に居る男は、父(むごう)ではない、無轟だ。
「――俺は、神無」
「かんな……?」
神無の名乗り、呆気のような声を零す無轟に続けてツヴァイらの自己紹介を交えた。
結果、無轟は呆気から苦笑をつくり、しかし、安堵にも似た微笑を最後に浮かべる。
「なるほど、こちらのお前はそこまで大きく成長していたか」
我が息子もいづれはこうなるのだろうか、と内心想いつつ、話を続ける。
「……しかし、残念だ。こちらの俺はもう居ないのだ…と」
「っ」
何かを言い返そうとした凛那は言葉を詰まらせ、直ぐに身を翻す。
小さく俯いて、彼女はか細く言ったと同時に素早く歩き出した。
「…失礼する」
「あ、待って凛那」
その様子に不安を懐いたツヴァイが慌てて連れ添うように出て行った。
神無も神月も心配そうに目で追い、無轟も失言したと想って頭を下げた。
そんな中、炎産霊神が出て行った凛那を不思議そうに見つめながら、無轟らに言う。
『あの凛那が居るって事は、こちらの側にも彼がいるのかな』
「彼……ああ、もしかすると奴か」
「奴?」
妙に得心する無轟に対し、神月が怪訝に問うた。
「器師、伽藍……ですよね」
だが、その問いかけを二人ではなく王羅が答えたのだった。
その答えに二人は頷いた。
理由は簡単だった。こちらに『無轟』という存在がいた、更には同じ過程を経て作られたであろう『明王・凛那』が在る。
これらの要素から、こちらの世界にも『伽藍』という男が存在し、こちらの無轟らと接触している筈であった。
神無はその男についてうろ覚えに覚えていた。父の葬式、特に誰にも報せずに執り行っていた時に何人もの男女が父の死を知り、駆けつけてきた。
その中に、包帯で素顔を隠した異様な風体をした男性――伽藍と名乗っていた事を。そして、確かに『凛那は俺が作ったものだ』と教えてくれたのだった。
「……つまり、伽藍がいるならそれが直せるってことか」
『そういう事。でも、あの人ってさー……もしかすると』
「あちこちの世界を渡り歩く気ままな人ですよ」
ある種の被害者であった彼女、苦笑紛れに王羅が言った。それを聞いた炎産霊神はショボンと落ち込んだ。
数少ない希望が限りなく果たせなくなったものだと、落胆する。
『もう駄目だ、凛那がないと無轟がー』
「一々嘆くな。そうなるならそうと戦えば――」
「問題ないですよ」
無轟の言葉を王羅が今度は喜色を込めて言う。神無らの視線が彼女へ向く中、彼女は話を続ける。
「こちら側の伽藍さんの連絡は取れます。今からなら明日かそれくらいにでも来ますよ」
「おいおい、話を聞く限りじゃあろくな住居を構えない放浪癖がありそうな奴の連絡がとれるってのか」
「実は…以前にあの人と再会して、『個人的な用事』を済ました折に……」
そういうと、彼女は何処からか、ベルのついた小さなオブジェを取り出し、ベルを指で弾いた。
透明に済んだ音色が響き、そして静まる。その動作を終えて、王羅は再びオブジェをコートの中に納める。
説明求めるといった様子の彼らに王羅が応じて、返答する。
「さっきのは彼を此処に呼びつける為の発信音だよ。後はあちらが此処にやってきて貰えばいいだけ」
『…ほんとに来るの?』
「これは自分が気に入った人とかにまたご利用してもらう為に渡しているんだって。…まあ、つい最近だけど。
一度鳴らせばこれがビーコンみたいになってやって来れるわけです」
「なら気長に待つか。……何から何まですまないな」
「いえ、お気になさらず」
王羅は笑顔で返し、安心した無轟はベッドに横になる。休眠の様子を察してか神無らも一旦、部屋を出ることにした。
出る前に、念のため、ビラコチャに確認の問いかけをする。
「ビラコチャ、そっちは大丈夫か?」
「問題はない。また何かあればすぐ呼ぶ」
相変わらず短く返した彼に神無は苦笑で頷き、神無は息子と王羅と共に出て行った。
彼らが部屋を出て行くのをわざと瞼と閉じ、休眠の様子でいた無轟が瞼を閉じたまま口だけを動かす。
「炎産霊神」
『ん、
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME