欠かさず綺麗にしているのか汚れの無い大きな窓から日の光が差し込み、長い回廊を隅々まで明るく照らしている。
そんな廊下を、シャオは無我夢中で走っていた。
「師匠…!!」
どれだけ走ってもクウに追いつかず、顔に焦りが浮かぶ。
元々体の傷は軽傷で済んでいるし、クラクラしていた頭も今は落ち着いている。これだけの運動は苦にならないほど、回復はしていたようだ。
やがて右に曲がり角が見え、シャオはスピードを落とす事無く角を曲がる。
直後、何かに思いっきりぶつかった。
「うぎゅ!?」
「うおっ!?」
予想もしなかった事で妙な声を上げるシャオと同時に、ぶつかった箇所からも声が上がる。
だが、それを見る暇もなくシャオは倒れるようにその場で尻餅をついた。
「いったぁ…!?」
「ちょ、大丈夫!?」
思いっきり腰を打って座り込むシャオに、誰かが慌てて近づく。
そうして肩を掴むので、シャオが腰を押さえながら顔を上げた。
「イオン…先輩?」
目の前で心配そうに見ている茶色が混じった黒い髪に青目の少年は、紛れもなく自分の世界に居る筈のイオンだった。よく見れば、後ろには淡い水色の髪に赤い目をした少女―――ペルセフォネまでいる。
シャオは今自分が見ている光景が信じられず、すぐさま立ち上がりイオンを指差した。
「何でここにイオン先輩がいるのさ!? それにペルセさんも!? ここって過去の世界の筈じゃ――!?」
「ちょ、まずは落ち着け!」
混乱気味に話すシャオを、さっきぶつかったライトブラックの髪に金色の目をした少年―――オルガが腕を掴む。
ここで、シャオはようやく二人以外にも人がいる事に気付いた。
「え? あの…誰?」
「俺はオルガ。で、こっちはアーファ」
「よろしく! ね、君の名前は?」
青い髪に緑目の少女―――アーファが元気よく挨拶すると、興味津々でシャオに詰め寄る。
このアーファの様子に、シャオは困惑気味に口を開いた。
「シャ、シャオ…」
こうして互いの自己紹介を終えると、落ち着いたと判断したのかオルガが質問した。
「なあ、シャオ。お前、この世界がどう言う所か分かるか?」
「え? えーと…?」
改めて聞かされる質問に、シャオはようやく今自分が置かれている状況を思い知る。
何も分かっていない事をオルガも知ったのか、何処か気くさに笑った。
「俺達もイリアづてに聞かされた話だからな…とりあえず、落ち着いた場所で話さないか?」
「で、でも…!」
オルガの誘いに、シャオは思わず戸惑いを見せる。
だが、落ち着いて考えればあのクウは自分の世界の師匠ではない。今目の前にいるイオンのように。
それに、ここが何処かも分かっていない。それならば、彼らから話を聞いて情報を集めて置いた方がいいだろう。
ここまで考えると、シャオはクウを追いかけるのを諦めてオルガ達に頷いた。
「うん…分かった」
場所は変わり、女性陣達が治療している部屋。
そこで、セイグリット、毘羯羅、そしてキサラと入れ替わりで交代したミュロスがオパールの書いたレポートを読み終えていた。
セイグリットはすぐにレポートの内容を別室にいるアイネアスに伝え、その間に毘羯羅はレポートをオパールに返した。
「――お前の書いたレポートは全て確認した。そちらでの世界に異変が起きていたのか…」
「うん、まあ…で、ここがあたし達のいる世界とは別次元の世界も、とりあえず頭に入れたわ」
「俄かに、信じられないけど…」
まだ弱々しいが笑みを浮かべるオパールに、カイリもどうにか言葉を返す。
そんな中、ミュロスはレポートの内容を思い出す。彼女の書いたレポートは、ある世界から他のメンバー達と合流する為に、故郷である【レイディアントガーデン】に戻ると言う所で終わっている。
ここから先に何かがあってこの世界に来た筈だ。この空白を埋める為に、ミュロスは改めてオパールに質問をぶつけた。
「それで、あなた達はどうやって私達の世界に来たのかしら?」
「それは…」
「――シルビア。彼女が私達を逃がしたんです、“エン”と言う男から」
オパールが口籠っていると、意外な所から答えが返って来る。
全員が目を向けると、何とアクアが目を覚ましていた。
「アクア!? 今はそんな話…!!」
「何時かは話さなければいけない事。なら、ここで話しておいた方がいい…違う?」
「それは、そうだけど…」
アクアの言葉は正論だが、オパールの中で不安が芽生える。
仲間を失って自分達と同じように傷ついている筈なのに、その目は一点の曇りもなく真っ直ぐに見ている。いや、やけに真っ直ぐ過ぎる。
横目でカイリを見ると、顔を俯かせてシーツを握り締めている。もは
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