少しでも心の痛みを癒す為に、この城の何処かにいるクウを探すレイア、キサラ、紗那、ヴァイ。
これまで夫婦であるディアウスとプリティマ、親友であるレギオンとサーヴァンに出会い話を聞くが、目撃談は得られなかった。
それでも気を取り直して通路を歩いていると、奥の方でゼツ、シェルリア、ラクラ、アナザ、フィフェル、フェンデルがチェルと何かを話していた。
「あれ? 皆どうしたの?」
「おう、お前ら。ん? その子は?」
紗那の声にすぐにゼツが振り返ると、レイアを見て首を傾げる。
他の人も注目するので、レイアは一歩前に出てお辞儀をした。
「は、初めまして…レイアと言います」
誰かと会う度に必ずする自己紹介をし終えると、シェルリアはキサラを見た。
「もしかして、この子が別の世界から来たって人?」
「ええ。ねえ、あなた達は黒い髪と黒い服を着た男の人見てない?」
キサラは頷くなり、ゼツ達に質問をぶつける。
すると、ラクラは困ったように頭を掻いた。
「俺達は城門から来たが、見かけてないな」
「そうね。チェルは見かけた?」
同意するようにフェンデルも頷くと、隣にいるチェルを見る。
しかし、チェルは険しい表情を浮かべてレイアを睨んでいた。更に言えば、ゼツの隣にいるアナザもレイアを不審な目で見ている。
「チェルさん?」
「母様、どうかされました?」
「あの、何か…?」
様子のおかしい二人にヴァイとフィフェルが声をかけるが、反応を返さない。
この反応にレイアも不安げになっていると、アナザが口を開いた。
「あなた…《ノーバディ》ね?」
『『『っ!?』』』
アナザから放たれた言葉に、チェル以外の全員が息を呑みレイアに注目する。
一方のレイアも、身体を強張らせて固まってしまう。
何処か緊迫した状況の中、チェルが探るような目で見ながら腕を組む。
「気配を隠せるのは、その服のおかげか。見た所、お前からは敵意は感じられないが…あまり信用は出来ないな」
「それで、あなたは一体何をしているのかしら?」
チェルに続く様にアナザからも厳しい言葉を投げつけられる。
この二人に、レイアは顔を青くして思わず一歩後ずさる。
それでも拳を握り締めて湧き上がる恐怖を抑えつけ、ゆっくりと口を開いた。
「ある人を探しているんです…私の大事な人で、誰よりも傷ついて、自分を見失っていますから…私は少しでも傍にいて助けたいんです」
自分の中にある偽りの無い言葉をレイアは伝えるが、二人は納得せず逆に訝しげに見られてしまう。
「【その人の傍にいて助けたい】か…ノーバディならばその思い、お前自身が作り出したまやかしじゃないのか?」
「それでも、あなたはその人の所に行くの? 《心なんて無い》って理由で拒まれるかもしれないわよ?」
「チェルさん!?」
「アナザ…お前…!」
幾らノーバディでも傷つくのではないかと思われる言葉を投げつける二人に、さすがのヴァイとゼツも口を挟もうとする。
しかし、レイアはあえて二人の言葉を受け止めて胸に手を当てる。
《心が無い》。それはノーバディである彼女自身が、誰よりも痛感している事だから。
「確かに、私はノーバディです。私が作る感情に心が篭ってないと言われても仕方ありません。それに…あの人には、恋人がいます。今は仮面を付けられて捕らわれてますけど…」
ここで言葉を切ると、顔を上げてチェルとアナザを見つめ返す。
その青い目に宿るのは、確かな強い意思。
「でも、クウさんが私にくれた優しさは紛れもなく本物ですから…――クウさんから貰った優しさをそのまま返します。その優しさで、私は私でいられましたから…」
ノーバディとして生まれ、共に旅をしてきたクウとの記憶。その中でも鮮明に残るのは彼の優しさに触れた瞬間。
この空っぽの胸にあるのは、彼がくれた本物の優しさ。そして、彼に触れて生まれた淡くて小さな恋心。これらは全て心を持つクウがくれた感情だから…誰が何と言おうと、信じられる。
そうして真っ直ぐに意見を述べたレイアに、意外にも二人はあっさりと引いた。
「…そこまで意思が固いのなら、もう私は何も言わないわ。後悔の無いよう、行動しなさい」
「少なくとも、敵ではないのは分かった。それが分かれば俺は満足だ」
「ありがとうございます…アナザさん、チェルさん」
いろいろあったが自分を信頼してくれたアナザとチェルに一礼してお礼を言うと、レイアはキサラと共に先に進む。
この一部始終に、紗那は何処か感心したようにレイアの背中を見ながら呟いた。
「…何か、分かった気がする」
「紗那さん?」
「周りから言われて決めたんじゃ、何時かきっと自分の中で揺らいで歩みを止める。でも、自分の
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