それから負傷したウィドたちのいる部屋では徐々に目覚めた者達が出始める。
しかし、同時に先のクウらの件から心苦しい、重たげな空気が漂っていた。
そんな彼らの面倒を見ているのは今はビラコチャから神無らになった。それでもビラコチャは部屋の隅で腕を組み、座ったまま休んでいのだった。
「……先ほどは、失礼しました」
自棄から暴れかけたウィドは王羅の手によって眠らされたが、目覚めて消沈した声と頭を下げ、王羅に謝する。
頭を下げている彼に、王羅は優しく微笑み返す。
「いえ、気になさらないで。さ、もう上げてください」
「……はい。私は、ウィド…」
頭を上げ、会話を切り出そうと思って、まずは自分の名を明かす。
「ええ。はじめまして、私は王羅といいます」
「王羅…さん、色々と尋ねたいのですがす」
「はい。お互いに」
笑顔で話してくれた王羅は真面目な表情となる。ウィドの様子を察し、応じたものだった。
小さく頷いたウィドは様々な状況を尋ねた。まず一つ目は、彼女の胸から現れ、自分に向けた不思議な力を宿した剣だ。
「あの時、自暴自棄な私を不思議な剣を取り出して、抑え込んだ……あれは、いったい…?」
「ああ、『心剣』の事だね。心の剣……心剣だよ」
そう言って、再び胸に手を当て、呼応するように柄が出現する。それを引き抜き、披露した。
綻びの一切ない純白の剣、それは確かに自分に向けて抑え込んだものだった。美しさ、異様さに言葉を失っていたウィドを微笑み、彼女は再び剣を虚空へ消す。
「まあ、この取り出し方は好きだけどやっぱ隙を減らすなら手から出すべきだよね」
そういった、虚空から今度は先の聖剣とは異なる雰囲気をした刀を手に取る。そして、直ぐに虚空へ消す。
まるで手品のような技術に眼を丸くするウィドだが、はっと正気になり、冷静に心剣を思考する。
「……心剣。私たちが居た世界には無いものだ……」
「へえ、意外……はは、ごめん。この世界には心剣以外の特殊な剣があるんだ。それはまた別の機会に」
「次に……此処は、何処でしょうか?」
「ビフロンスという世界、此処はそのお城の一室ですよ」
「異世界に飛ばされてきたという事…か」
「ええ」
ウィドは声を小さく呟き、状況を推し量る。王羅は彼の中にある憎しみがまた爆発してしまうのではないか、そう思って彼の対応を担った。
そして、ウィドは周囲を見た。目覚め始めたリクたちが王羅の仲間であろう男性や青年と会話しているのを。
「王羅さん、二人ほど姿が見えないものがいるようですが…」
「! ……ええ」
「何処に…居るのですか…?」
次第にウィドの声に気力が蘇っている。
それは治療による回復だからではない。あくまでも燻っていた憎しみがまた滾りはじめていたのだ。
王羅は表情を崩さず、冷静に考えて、言葉を選択する。
クウが逃げ出したと言ったなら、恐らく彼はクウを追いかけるだろう。小さく呼吸を整え、口火を切った。
「クウさん、シャオくんは今別室で治療中です。今は面会とかは出来ないし、部屋も教える事は出来ない」
「そう……ですか」
そう言われたウィドは俯き、沈黙する。これ以上のやり取りは不要になったのだろうと王羅は一息ついて、彼を横にさせた。
「それじゃあ僕は失礼します。何かあれば僕や他の方を呼んでください」
「…………ええ」
王羅は微笑み返してウィドのベッドから離れた。
神無は、無轟の面倒を受けていた。その傍には凛那もいた。
そして、無轟も一眠りから醒め、ベッドから立ち上がるほど回復はした。
『無轟、もう立てるの?』
普段の衣装を着直し終えた彼を心配そうに見る炎産霊神に、小さく笑んで、神無らへ振り向いて、言った。
「ああ。神無たちのお陰だ」
「何、アンタの治りが早いんだよ…」
「…………」
陽気に話し合う無轟と神無を凛那は黙して静かに見据えて佇んでいる。
そこに炎産霊神が、声をかけてきた。だが、彼は神無らと話をし合っていた。
『どうかしたの、凛那』
その声は心に話しかけるものだった。無轟らには聞こえていない様子であった。
凛那は瞼を閉じ、視線の先にいる炎産霊神の声に心の声で驚きを隠した応じた。
(……何よ、急に声をかけてきて)
『ああ、良かった。聞こえたみたいで』
『凛那』にとって、炎産霊神は力の核だった。それは人で例えるなら血の様な不可欠な繋がり。
しかし、目の前の炎産霊神はこちら側の凛那とは別の存在。伝わる可能性は低かった。が、問題なく応答する事ができた。
それを喜ぶ声で行った彼は続けて言う。
『でも、ずっと無轟を見てるよね』
(うるさい)
あちらの炎産霊神もきっとこんな性格だったろうと薄々感じ
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