目の前に広がる光景に、誰もが息を呑んでいた。
茜色の火の粉に混じるように、黒と白の羽根が舞っている。
その中央には、傷を負ったシャオを抱えたクウが黒と白の双翼を携えて立っている。
肩で息をする彼の手には―――キーブレードが握られている。
「キーブレード!? なんでクウが!?」
選ばれた者しか手に出来ない筈の武器に、カイリが叫ぶ。
尚、形状は白と黒の翼が合わさり、キーホルダーも白と黒の羽根で出来ている。
「師匠…」
そんな中、シャオがゆっくりと顔を上げてクウを見る。
すると、クウは先程までの様子と違って優しく微笑んだ。
「シャオ、休んでろ」
「でも…!」
「大丈夫だ」
そう言うと、強気の笑みを浮かべる。
「――こうしてお前を守れたんだからな」
「師匠…!」
クウの目に自信に満ちた輝きが宿った事に、シャオの顔が綻ぶ。
だが、この一時はすぐに打ち破られる。
「話すのはいいが、現状を分かっているか?」
「凛那の言う通りだ。今はまだ…戦いの最中だぁ!!」
無轟の雄叫びと共に、再び刀に炎熱を纏って斬りかかる。
繰り出される『炎産霊神』の攻撃に、クウは翼を羽ばたかせ上空に回避した。
「くそ!! ちょっとぐらい休憩させろぉ!!」
「うわぁ!?」
シャオを抱えながら炎を避けていると、手に握るキーブレードが目に入る。
数年ぶりに握った武器に懐かしさを感じると、昔の記憶が過った…。
とある特殊な世界にある森の中のちょっとした広場。
夕日が沈み夜になろうとする時刻で、まだ子供である自分が傷だらけの状態で仰向けに倒れている。
傍らには、自分を鍛えてくれる師匠が呆れた顔で立っている。
『うぁ、はっ…!!』
『まあ、今日はここまでにするか…ほら、さっさと立て』
『こんだけ、ボコボコにされてるのに…立てる、かよ…!』
『ったく、甘えるな。そん位は唾付けて治せ』
そっけなく言いながら指示を飛ばすが、そんな余裕も力も残っていない。
何も出来ないまま横になっていると、師匠は軽く肩を竦めその場に座り込んだ。
『ま、立ち上がる気力が回復するまでは待ってやる。どうせ今日の食事当番はセヴィルだしな』
今日の飯は何だろなー、などと呟きながら夕暮れの空を眺めるので、同じように眺める。
師匠に闇の世界からこの世界連れて来られ、もう一ヶ月以上になる。最初はそれなりにこなしてた修行も、今では厳しさを増している。
不意に心に不安が芽生え、隣にいる師匠に口を開く。
『…師匠』
『あん?』
『師匠は…世界を救ったりした事あるのか?』
『世界を救う、ねぇ…『組織』にいる時点で守る部類には入るが、どうなんだろうな。急にどうした?』
師匠が話を聞く体制に入るのを見て、横になったまま手に力を込める。
そうして自身の手にキーブレードを出現させると、それを見つめながら心の中の不安を口にした。
『キーブレードってのは、世界を救ったり守ったりする為の武器何だろ? 俺、本当にこいつを使えるのか不安で…』
『普通、お前みたいな年頃のガキだったら喜んで勢いづくもんだろ? なのに、なーに情けない事言ってんだよ?』
『さ、最初は俺だって特別なんだって思ったさ!! でも、セヴィルからいろいろ話聞いたり修行したりしてたら、なんか不安が湧き上がって…』
『ハハ、あいつは頭固いし真面目だからな』
話を聞いて師匠が苦笑を浮かべるが、すぐに穏やかに笑いこちらを見つめた。
『バカ弟子。もし、お前の知ってる人達が悲しんでたり怖がってたりしてたら、どう思う?』
『…そりゃあ、嫌な気持ちになる』
『じゃあ、楽しそうに笑っていたり嬉しそうにしていたら?』
『まあ…こっちも嬉しくはなるかな』
『要はそれでいいんだよ。世界救うとか守るとか、大層な事よりはこっちの方が実行しやすいだろ?』
そう言うと、師匠は徐に立ち上がる。
ズボンのポケットに両手を入れ、遥か遠くに目を向けて空を見上げる。
『この魂と心で出来た世界もそうだが、俺達の知らない所で可愛い女子が笑っていたり、美女達が幸せに過ごしたり、高齢のマダムが世界の平穏を感じていられる。そう考えたら、何かやる気出るだろ?』
師匠は言い聞かせるように語ると、こちらに顔を向けてニッと笑いかける。
この世界は闇の世界ではないが、光の世界でもない。肉体を失った魂が集う、死の牢獄の世界。それでも誰かが生き、守るべき世界である事に変わりない。
だが、そんな事よりも一つ思う事があった。
『つーか、見事に女ばっかだな…』
『当たり前だ。野郎の笑う顔なんざ、一文の得にもならん』
何の躊躇もなく宣言すると、鼻で笑う師匠。
何があってもぶれないその性格に
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